<新型コロナ感染症を軽視し続けたトランプ政権で、保健福祉省の元顧問が「子供や若者をどんどん感染させろ」と主張していたことが明らかになった> トランプ政権で一時期、保健福祉省の顧問を務めていたポール・アレクサンダーが新型コロナウイルス対策として集団免疫の確立を繰り返し提言していたことが、政治ニュースサイト・ポリティコが公開した電子メールで明らかになった。 メールには、重症化リスクの低いアメリカ人をどんどん感染させて、集団免疫を獲得すべきだと書かれていた。 ポリティコは下院監視・政府改革委員会から問題のメールを入手した。 「ほかに方法はない。集団免疫が唯一の道だ。そのためには、重症化リスクの低い集団をウイルスにさらすこと。それしかない」保健福祉省のナンバー・ツーであるマイケル・カプト次官補(報道担当)の顧問だったアレクサンダーは、カプトをはじめ同省幹部7人に宛てた7月4日付けのメールでそう述べていた。 「乳幼児、子供、10代、若者、若い成人、基礎疾患のない中年などは、リスクがゼロかほとんどない......彼らを利用して集団免疫を獲得すればいい......彼らをどんどん感染させることだ」 その数週間後には、米食品医薬品局のスティーブン・ハーン長官、カプト、そのほか8人の高官にメールを送り、「(ウイルスを)大量に拡散させ、若年層を感染させて......自然免疫......自然曝露」を目指すよう提言していた。 「子供にマスクをさせるな」 カプトはメールを受けて、保健福祉省の科学顧問に集団免疫の理論について詳細に調査するよう命じた。 アレクサンダーは、大学もオンライン授業をやめて、通常どおり講義を行い、若年層の感染率を上げるべきだと主張していた。 「われわれの最強の武器を戦場に送り込むべきだ」と、米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド所長に宛てた7月27日付のメールには書かれている。「比較的若い健康な大人、子供、10代、若者をしっかりと感染させ、周囲に広げさせ、集団免疫を獲得すれば、感染拡大は止まる」 このメールが送られた当時、アレクサンダーはカプトが最も重用する顧問だった。カプトは2016年の大統領選でトランプ陣営の選挙戦略を取り仕切り、トランプの大統領就任後に政治任用で保健福祉省の要職に就いたが、公衆衛生の知識は皆無だったため、カナダ人の専門家アレクサンダーを顧問に迎えたのだ。 だがアレクサンダーは今年9月半ばに顧問の職を解かれた。子供にマスクの着用を推奨しないようアンソニー・ファウチ米国立アレルギー・感染症研究所所長に圧力をかけたことや、子供が感染を広げるリスクを指摘したCDCの報告書にケチをつけたことが明るみに出て、批判が集中したためだ。 ===== それでも、在任中にアレクサンダーが保健当局の幹部に集団免疫の確立を呼びかけたのは、トランプ政権がこの戦略を支持していたからだと、CDCの元幹部はポリティコに述べている。 「アレクサンダーはカプトの考えを代弁しているのであり、カプトは政権の考えを代弁しているのだ、という暗黙の了解があった」と、トランプの政治任用でCDCの要職に就いていたが、既に辞任したカイル・マッゴーワンは言う。「彼らは、われわれがそう受け取るよう望んでいた」 保健福祉省はマッゴーワンの発言を真っ向から否定し、政権の方針として集団免疫の確立を目指すことなど「絶対にあり得ない」と主張。「ポール・アレクサンダー博士は一時期、報道担当次官補の上級顧問を務めていたが、現在は本省に在籍していない」と、ポリティコに声明を寄せた。 トランプ政権は集団免疫の確立を目指す考えはないと、これまでたびたび主張している。 ケイリー・マクナニー大統領報道官は今年9月の記者会見で、「集団免疫理論なるものは、メディアが空想するおとぎ話にすぎず、ここホワイトハウスで真面目に検討されたことは1度もない」と語った。 さらに10月には、保健福祉省のアレックス・アザー長官が下院監視・政府改革委員会の公聴会で、「集団免疫はコロナウイルスに関する米政府の戦略ではない」と断言した。 本誌はアレクサンダーと保健福祉省にコメントを求めたが、現時点では回答を得られていない。