<秋以降、対米強硬派の李善権外相が公の場に姿見せていない。話し合い路線へ転換の兆し?> 対米強硬派として知られる北朝鮮の李善権(リ・ソングォン)外相が公の場に姿を見せなくなって久しい。アメリカの政権交代を前に、朝鮮労働党委員長の金正恩(キム・ジョンウン)はもっと交渉手腕に優れた人物を新たな外相に任命する計画だとも伝えられている。 韓国の朝鮮日報によれば、李外相は8月を最後に公の場で目撃されていない。また、韓国の聯合通信は、これが今後の人事と関係があるのか事態を「注視している」という韓国政府高官の話を伝えている。 李は1月に外相に就任。韓国やアメリカとの関係について保守的な考えを持つ強硬派と言われていた。ちなみに前任者の李容浩(リ・ヨンホ)は英語に堪能なベテラン外交官で長年、アメリカなどとの交渉に携わってきた。 1月の外相交代は、2018年にシンガポールで開かれた米朝首脳会談で結ばれた合意が一向に実現されない中で、北朝鮮政府の対外政策が非協調路線にシフトするシグナルだと受けられていた。 だがトランプ政権が終わりを迎える中、北朝鮮政府(そして他のアメリカとライバル関係にある国々の政府も)の視線は、ジョー・バイデン次期大統領とその陣営が朝鮮半島の核問題や制裁というやっかいな課題にどう取り組むのかに向けられている。 韓国統一省は聯合通信に対し「まだ公式声明は出ていないが、関連する状況を注視していく」との立場を明らかにしている。一方で同省は、李外相は「まだその地位にいて、活動を続けている」との見方も示した。 李は元陸軍大佐で、外相になる前は祖国平和統一委員会の委員長を務めていた。朝鮮日報によれば彼が最後に公の場で目撃されたのは、8月19日の朝鮮労働党中央委員会総会においてだったという。 狂犬呼ばわりは過去の話に? だが李のタカ派的なアプローチは、バイデンから譲歩を引き出す障害になるかも知れない。バイデンは北朝鮮の非核化に繰り返し、意欲を示している(もっとも一部の専門家からは、北朝鮮がすでに核兵器を保有している以上、このやり方は意味をなさないとの声も上がっている)。 統一省の金炯錫(キム・ヒョンソク)元次官は朝鮮日報に対し、李の外相就任は「アメリカ政府とのさらなる交渉に関心を寄せるのではなく、強硬な姿勢を示すのが目的だった。今度は(北の)政権は彼をアメリカと話の出来る人物に取り替えようとしている」 バイデンは北朝鮮問題には、トランプよりも厳しい姿勢で臨む考えを示している。選挙運動中、バイデンは金のことを「悪党」と呼び、「独裁者におもねる時代はもう終わりだ」とに述べていた。 バイデンが副大統領を務めたオバマ政権は北朝鮮問題では「戦略的忍耐」というアプローチを取っていた。つまり制裁によって北朝鮮がアメリカの要求に応じざるを得なくなるのを待ったのだ。 今後、北朝鮮の外交官らはこれまでの強硬姿勢の尻拭いに追われることだろう。これまで北朝鮮はバイデンをばかにしたような態度を取ってきた。国営の朝鮮中央通信(KCNA)は昨年、バイデンのことを「狂犬病にかかった犬」で棒で叩き殺すべきだと評していた。