<鼻腔を通じてヒトの脳に侵入し、「殺人アメーバ」と呼ばれているアメーバの一種が、温暖化で徐々に北上していることがわかった...... > 摂氏45度までの温かい淡水で生息するアメーバの一種「フォーラーネグレリア」は、鼻腔を通じてヒトの脳に侵入し、致死率の高い中枢神経系の感染症「原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)」を引き起こすことから、「殺人アメーバ」と呼ばれている。 フォーラーネグレリアは、川や池、湖など、汚染された淡水で遊泳している間に、鼻から侵入して中枢神経系に達し、原発性アメーバ性髄膜脳炎を引き起こす。やがて嗅覚障害や味覚障害が現れ、さらに頭痛や嘔吐といった症状が急速に進行して、発症から3〜7日以内に死に至る。 近年、中西部でも確認されている 米国で1978年から2018年までに報告された原発性アメーバ性髄膜脳炎の症例数は計120件で、毎年8件以下のペースで症例が確認されている。日本でも、1996年11月に原発性アメーバ性髄膜脳炎の症例が初めて報告された。 アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の研究チームは、1978年から2018年までに米国で報告された原発性アメーバ性髄膜脳炎の症例85件を分析し、2020年12月16日、その研究結果をCDCの専門誌「エマージング・インフェクシャス・ディジージズ」で発表した。これによると、これまで主に南部の州で見つかっていた症例が近年、中西部でも確認されているという。 credit: CDC/Emerg Infect Dis 原発性アメーバ性髄膜脳炎の感染源となったのは、69件が湖や池で、14件は川、2件は屋外のレクリエーション施設であった。1978年から2018年までの年間症例数は0〜6件で、その傾向はあまり変動していない。 症例を地域別にみると、南部が74件と圧倒的に多く、西部で5件、中西部で6件となっている。中西部で報告された6件の症例のうち5件は、2010年以降に確認されたものだ。 年間およそ13.3キロ北上していた コンピューターモデルを用いて症例が確認された最大緯度の変化を調べたところ、年間およそ13.3キロ北上していたことがわかった。また、症例発生日前後の気象データを分析した結果、フォーラーネグレリアに曝露する直前2週間の日中の気温は、過去20年間の平均気温よりも高かったことも明らかになっている。 研究チームは、一連の研究結果をふまえ、「気温の上昇とこれに伴うレクリエーション用水域の拡大が、原発性アメーバ性髄膜脳炎の疫学的変化をもたらしたのではないか」と考察している。