<韓国では、政府が当初に成功を収めた韓国の新型コロナウイルス対策「K-防疫」を過信するあまり、ワクチンの手配で出遅れたという声が上がっている......> 新型コロナウイルスの感染者は世界中で急増しているが、韓国でも新型コロナウイルスの1日あたり新規感染者が連日1000人を超え、医療現場が混乱している。入院待機中の感染者が死亡し、救急搬送された患者が、治療を受けられない事態に陥った。 韓国政府が、感染が拡大しはじめた当初に成功を収めた韓国の新型コロナウイルス対策「K-防疫」を過信するあまり、ワクチンの手配で出遅れたという声が上がっている。 病床ひっ迫で医療崩壊の危機 2020年12月15日、60代の新型コロナウイルス感染者の遺体がソウル市内の自宅で発見された。死亡した感染者は、同居していた配偶者が新型コロナウイルスの陽性判定を受けたため、同月11日に検査を受け、翌12日に感染が確認された。東大門区保健所は市の生活治療センターに入院させることを決めたが、ソウルでそれまで最多の399人の感染が判明した日と重なり、当局は病床の配分を断念、すぐには入院できなかった。 14日早朝、「血痰が出て咳の症状がある」という報告を受けた東大門区保健所は、病状が急変したと判断し、市に緊急入院を要請した。同日午後、本人が配偶者に体調が良くないと連絡し、保健所はふたたび市に緊急入院を要請して病床の空きを待ったが、翌朝、電話がつながらなくなった配偶者の通報で救急隊が到着したときにはすでに死亡していた。 16日、ソウル市は感染症専門病院の重症患者治療病床80床のうち、79床が使用中で、入院可能な病床は1床のみと明らかにした。生活治療センターも1929床のうち1282床が使用中で、すぐに使用可能な病床は159床のみだった。翌17日には、ソウル市内で新たに398人が陽性判定を受け、自宅で待機する感染者は580人に上った。 適切な診療を受けられないのは感染者だけではない。12月1日、高リスクと診断されていた妊婦が発熱と悪寒を訴え、家族が救急車を手配した。妊婦は数日前に退院した大学病院を指定したが、同病院の救急室がコロナ対策を理由に受け入れを拒絶した。3時間に亘って病院のたらい回しに遭った妊婦は一命をとりとめたが、死産だった。 また、急性腎不全症で救急搬送された89歳の患者は、救急室への入室を拒絶された。新型コロナウイルスの検査を受けて3時間後に入院したが、病院の外で付き添っていた57歳の息子は「父は亡くなるところだった」と話している。 「K-防疫」を過信しすぎた? 韓国政府が「K-防疫」を過信し、感染の拡大防止とワクチンの手配に失敗したという声が上がっている。ウイルスが拡散しはじめた3月、韓国政府は社会的距離の確保と検査体制を強化する「K-防疫」を推進、以後、規制の強化と緩和を繰り返した。 政府がスポーツ・ジムやスクリーン・ゴルフの利用を規制すると、運動不足を抱えた市民らは公園に殺到した。外出自粛措置に伴って電車や地下鉄の間引き運転が始まり、運行間隔が長くなった駅のホームや運行本数が少なくなった車両は混雑を増した。 ===== 首都圏の飲食店の営業時間を夜9時までとし、カフェの店内利用を禁止してテイクアウトのみ可能としたが、帰宅時間が集中する夜9時過ぎには公共交通機関が混雑し、また店内飲食が可能なファストフード店などの軽飲食店がカフェ代わりに利用する人々で混雑する状況に陥った。 密を避けるため人が集まる店などの利用を規制した結果、規制されていない場所に人々が集中し、接触リスクが増したのである。 ワクチンの手配も出遅れた 感染の拡大防止に失敗した韓国政府はワクチンの手配も出遅れた。日本や米国、英国など、新型コロナウイルスが拡散した当初からワクチンの開発と手配に取り組んだ。日本政府はアストラゼネカとファイザーのワクチンをそれぞれ6000万人分、モデルナのワクチンを2500万人分など7月頃から購入契約を開始した。欧米と比べて遅いと指摘される日本だが、韓国はさらに遅かった。 韓国政府は7月頃から各国の製薬会社と協議をはじめたが、本格的な契約交渉を開始したのは、第3波に襲われた11月末だった。 英国とカナダは7種類、米国とEUは6種類、日本は3種類のワクチンを購入するなど、各国が複数の製薬会社と購入契約を締結するなか、韓国は国内の製薬会社に生産の一部を委託する予定のアストラゼネカのワクチンのみ1000万人分を確保した。 ワクチンの購入が決まると文在寅大統領は「トンネルの出口が見えた」と安堵したが、直後の12月9日、衝撃が襲った。アストラゼネカのワクチン開発を総括する研究所長が、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認が来年半ばになるという見通しを発表したのだ。ファイザーとモデルナはFDAが緊急使用を承認しており、来年2−3月には日本でも接種がはじまると見られるが、韓国は見通しが立たなくなった。 韓国政府は、16日午後、FDAとは関係なく韓国食品医薬品安全庁がアストラゼネカのワクチンの審査を進めると発表したが、一方、「FDAが許可していないワクチンを韓国当局が許可できるのか」「許可を出して果たして安全といえるのか」など、市民は不信を募らせている。