<福祉・介護業界では、全体の就業者と比較して管理職が男性に著しく偏っている> 滋賀県の社会福祉法人の理事長から性被害やハラスメントを受けたとして、女性職員が訴える事件が先月、起きた。つい昨日(22日)も、宮城県の法人理事長のパワハラで保育士17人が一斉退職したニュースが報じられた。 こうやって明るみになる事件はまれで、実態としては数えきれないほど起きていると推測される。その背景として、就業者の多くは女性であるにもかかわらず、経営者は男性で占められているという、福祉産業の構造が挙げられる。立場上弱い人が強い人から被害を受ける、失職や報復の恐れから被害を訴えられない、訴えても相手にされない――こういう現実がありそうだ。 就業者(現場要員)の多くは女性、しかし経営者の多くは男性。こうした歪みを統計で可視化するのは難しくない。上記の滋賀県の社会福祉法人は障害者福祉事業を主に行っているようだが、当該産業の就業者の男性比は37.9%なのに、管理職に限ると70.1%も占めている(2015年、『国勢調査』)。この対比から、管理職が男性に偏っているのは明らかだ。 管理職が男性にどれほど偏っているかは、管理職の男性比が、就業者全体の男性比の何倍かで数値化できる。管理職の男性偏り度が大きい20の産業をピックアップすると<表1>のようになる。 福祉(赤字)、小売業、病院といった産業が目につく。これらの産業で働く人は女性が多いが、管理職に絞ると男性が多くを占めている。 首位の児童福祉産業では、就業者全体では7.9%しかいない男性が、管理職では56.9%も占めている。男性から管理職が出るチャンスは、通常の7.21倍であることが分かる。大変な偏りだ。保育所や幼稚園を見ても、保育士や教諭は女性が大半にもかかわらず、法人理事や園長は男性が多いのはよく知られている。 もはや人為的な是正が必要なレベルだ。上表にリストアップされた産業では、権力関係に基づくハラスメントが横行していないか、従業員へのアンケートなどを行って点検する必要があるだろう。 ===== 偏りが大きいのは福祉産業だが、地域による違いもある。対策の音頭をとるのは地方自治体であることが多いので、都道府県別のデータを出してみた。産業中分類の「社会保険・社会福祉・介護事業」について、就業者と管理職の男性比を県別に出し、後者が前者の何倍かを計算した。<表2>は、高い順に並べたランキングだ。 管理職の男性比は、就業者全体のそれの何倍か。都道府県別に見ると、1.93倍から5.22倍の分布幅がある。最も高いのは福井県で、全体比とくらべると5倍以上の偏りとなっている。奇遇と言うか、上位3位は北陸の県だ。 福井県では、福祉産業の就業者の男性比は17.6%だが、管理職では91.7%にもなる。これは県として、是正のアファーマティブアクションをとるべきではないか。具体策として、管理職の男性比を適正範囲に制限することが考えられる。例えば、就業者全体の男性比の0.5~2.0倍の範囲内にするというのはどうだろう。 <表1>によると、児童福祉産業の就業者の男性比は7.9%なので、この基準だと管理職の男性比は3.9%から15.8%の範囲でないといけない。しかし現実は56.9%で、明らかに常軌を逸している。福井県の福祉産業だと、管理職の男性比の適正範囲は8.8%から35.2%だが、現実は91.7%だ。県として是正のアファーマティブアクションが求められるゆえんだ。 これから重要性を増す福祉産業だが、性暴力やハラスメントがまかり通ることがあってはならない。なすべきは研修でくだくだと道徳を説くことではなく、人的配置の「ジェンダー・アンバランス」を直すことだ。 <資料:総務省『国勢調査』(2015年)の抽出詳細集計> =====