<シンガポール・南洋理工大学(NTU)の研究チームは、磁界を用いてエポキシ樹脂を硬化させる新たな手法「磁気硬化」を発明した...... > プラスチックやセラミック、木材などの接着剤として幅広く用いられている「エポキシ樹脂」は、一般に、熱や光によって硬化する。そのため、フレキシブルエレクトロニクス(折り曲げられる電子回路)や生分解性プラスチックといった熱に弱い材料や断熱材料には適用しづらい。また、その硬化過程で多くのエネルギーを要し、これを長時間かけて硬化させるための高温炉も必要となる。 既製のエポキシ樹脂を「磁気硬化性樹脂」に変えることができる シンガポール・南洋理工大学(NTU)の研究チームは、磁界を用いてエポキシ樹脂を硬化させる新たな手法「磁気硬化」を発明した。一連の研究成果は、2020年9月20日に学術雑誌「アプライド・マテリアルズ・トゥデイ」で掲載されている。 「磁気硬化」とは、既製のエポキシ樹脂にマンガン、亜鉛、鉄を配合した独自の磁性ナノ粒子を混ぜ合わせ、この「磁気硬化性樹脂」を小型の電磁気装置で生成した磁界に通し、磁性ナノ粒子を発熱させ、短時間で硬化させるという手法だ。 磁性ナノ粒子は電磁エネルギーが通ったときに発熱するよう設計されており、その際の最大温度や加熱速度も、磁性ナノ粒子によって調整できる仕組みとなっている。 研究論文の共同著者で南洋理工大学のラジュ・ラマヌジャン教授は「磁性ナノ粒子を既製のエポキシ樹脂と混ぜるという『磁気硬化』の手法により、あらゆる既製のエポキシ樹脂を『磁気硬化性樹脂』に変えることができる」と述べている。 短時間で硬化させることができ、エネルギーを大幅に軽減できる 「磁気硬化性樹脂」は、従来の熱硬化性樹脂に比べて、短時間で硬化させることができ、この過程で要するエネルギーを大幅に軽減できるのが利点だ。 従来の熱硬化性樹脂を硬化させるには2000ワットの高温炉で1時間かかるが、「磁気硬化」によれば、200ワットの電磁気装置を用いて「磁気硬化性樹脂」1グラムをたった5分で硬化できる。硬化過程に要するエネルギーは、従来の熱硬化性樹脂のわずか120分の1にあたる16.6ワット時だ。 たとえば、スポーツシューズの場合、ゴムが断熱材で、従来のエポキシ接着剤への熱伝達に抵抗するために、ゴム底と靴のアッパー部分の間の接着剤を加熱が難しいことがよくある。磁気硬化接着剤を使うとこうしたプロセスがより容易になるという。 「磁気硬化性樹脂」は、熱に弱い材料や断熱材料を含め、より幅広く活用できる。一連の研究成果では、木材、セラミック、プラスチックに適用できることが示された。また、その強度は最大7メガパスカル(MPs)で、既製のエポキシ樹脂と同等だ。航空宇宙や自動車、電子機器、スポーツ用品、医療機器など、様々な産業にわたって応用できると期待が寄せられている。 NTU Singapore scientists invent glue activated by a magnetic field