<温度管理も容易で価格も安く、ワクチン普及の期待がかかるアストラゼネカ製ワクチンにアメリカが抱く疑問とは> イングランド全土で3度目のロックダウンが宣言されたのと同じ1月4日、イギリスでは英製薬大手アストラゼネカがオックスフォード大学と共同開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。イギリス政府はこれを、パンデミックとの戦いにおける「重要な転換点」になると大きな期待を寄せている。だがアメリカでこのワクチンが使えるようになるのは、4月になるかもしれないという。なぜこんなに差が出るのか。 アメリカは早くて4月? イギリスの国民保健サービス(NHS)は、アストラゼネカ製ワクチンを一般向けに供給する世界初の保健機関だ。82歳の透析患者ブライアン・ピンカーが、アストラゼネカ製ワクチンの接種を受ける最初の人物となった。「これは、この恐るべきウイルスとの戦いにおける重要な転換点だ」と、イギリスのマット・ハンコック保健相は述べた。「すべての人々に対して、パンデミックの終わりという新たな希望を与えられることを期待している」 イギリス政府はこのアストラゼネカ製ワクチンについて、1億回分以上の接種が可能な契約を結んだと発表している。イギリスでは昨年12月、既に米ファイザー製ワクチンの摂取を開始しているが、マイナス70度以下の特別な温度管理が必要なファイザー製と違い、アストラゼネカ製は冷蔵庫でも保管できて価格も安いため、普及への期待がかかっている。 だが、アメリカ国民がこのワクチンの接種を受けられるまでには、まだ時間がかかりそうだ。新型ウイルスワクチン開発・供給の加速を目的としたアメリカ政府の「ワープ・スピード作戦」を率いるモンセフ・スラウイ主席顧問は12月30日、アストラゼネカ製ワクチンの認可は少なくとも4月まで先送りする見込みだと発言した。このワクチンの効き目に対して懸念が残っているのが理由だという。 「率直に言って、最大の疑問は高齢者への有効性だ」と、スラウイは政治誌ザ・ヒルに語った。「この点はさらなる裏付けが必要だ。臨床試験では十分な数の(高齢の)被験者が採用されていなかったからだ」 アストラゼネカ製ワクチンは、すでにアメリカで供給が始まっているファイザーやモデルナ社製のワクチンは、RNAを使って免疫反応を引き起こすタンパク質を作るよう体に促すのに対し、アストラゼネカ製ワクチンは、弱毒化あるいは不活性化されたウイルス株を用いて、体の防御機能を起動させる仕組みだ。アストラゼネカ製ワクチンはデータ上、ファイザーやモデルナのワクチンと比べて有効性が低いのも確かだ。 ===== だがそればかりでなく、アメリカ政府のワクチン供給計画にはさまざまな問題点が浮上している。アメリカ政府は、2020年12月末までに、2回接種が必要なワクチンの1回目の投与を2000万人に行う目標を掲げていた。だが、12月末時点での実績は目標の約2割にとどまったと、米疾病対策センター(CDC)は報告している。 ブラウン大学公衆衛生大学院のアシシュ・ジャー学部長は12月30日付のニューヨーク・タイムズ紙の記事において、アメリカ政府はワクチン接種の任務を、すでに大量の業務を抱えて疲弊している各州や地方自治体の保健当局にほぼ丸投げしている状況だと指摘した。「我々は、リソースを使い果たし処理能力がほとんどなくなっている人々に対して、ワクチン接種のなかでも最も困難な任務、つまり、ワクチンを実際に人々に投与する任務を押し付けようとしている」 (翻訳:ガリレオ)