<タンカーをイラン革命防衛隊に拿捕された韓国は自国軍を現場に派遣、他国の協力を求めているが> 韓国船籍の石油タンカーがペルシャ湾でイランに拿捕された事件で、韓国は急遽、現地近海に自国の軍を派遣。さらに、周辺地域で活動する国々に事態打開のための協力を求めている。 イランの精鋭部隊、革命防衛隊は1月4日、指揮下のズルフィカール艦隊が、サウジアラビアを出てペルシャ湾を航行中の韓国籍のタンカーを「海洋環境に関する法律に違反した」という理由で拿捕したと発表した。 このタンカーの名は「韓国ケミ号」。石油化学物質の最大積載量は7200トンに達し、韓国、インドネシア、ベトナム、ミャンマー国籍の船員が乗り組んでいたと言われている。船と船員はイランのバンダルアッバス港に移送され、拘束された。革命防衛隊は「この問題は司法当局によって対処される」と述べた。 この事件を受けて、韓国国防省当局者は本誌に対し、韓国は「わが国の石油タンカーの救助に、ホルムズ海峡付近に海賊対処部隊を派遣した」と語った。 湾岸水域の破壊活動とイランによる船舶の拿捕を防止するために結成された「国際海事保安機構」の支援を求めるかと尋ねられた韓国の政府当局者は、「韓国政府と多国籍海賊対処海軍部隊の緊密な協力関係」を求めていると語った。アメリカ主導のこの団体は、船舶の安全航行保護を目的に2019年にホルムズ海峡付近で活動を開始。少なくとも9カ国が参加している。 高まる湾岸地域の緊張 ホルムズ海峡は、世界で最も重要な海上石油交通の要諦であり、ドナルド・トランプが2017年に大統領に就任して以来、エスカレートするアメリカとイランの緊張と危機の火種になった。 アメリカと韓国は軍事同盟国であり、敵である北朝鮮からの攻撃を防ぐために相互防衛の関係が確立されている。いかなる「外部武力による攻撃」の場合にも、それぞれが相手の援助に駆けつけることが義務付けられている。 ペルシャ湾における衝突の危険拡大の不安は、イラク革命防衛隊クッズ部隊司令官カッセム・ソレイマニが米軍に殺害されて1年の記念日を迎えた先週末へ向けて、日増しに高まってきた。 「アメリカの行為は、国際的な法と規範を軽視するトランプ政権の本質と、何としてもイランを屈服させることができないという絶望を全世界に示している」と、イラン国連代表部のアリレザ・ミールユーセフィー報道官は本誌に語った。「イランはトランプとその同盟国の仕打ちに耐えてきた。今後も従来通りの外交・安全保障政策を継続する」 ===== 「トランプは政権末期の今、武力紛争を開始する口実を提供するために罠や挑発を仕掛けている」と、ミールユーセフィーは警告を付け加えた。「イランは自衛に十分な準備をしており、トランプの罠に対しては、公然と、そして断固として対応する」。 米軍は過去数週間に2度、核搭載可能なB-52爆撃機を中東の空に飛ばし、イランを軍事力で威嚇した。そのきっかけとなったのは、12月にイラクの首都バグダッドで起きたアメリカ大使館へのロケット弾攻撃事件だ。この事件は、イランがアメリカの国益を損なうために仕掛けたものだ、とトランプは非難した。 大統領の任期が残り2週間ほどになった今も、トランプはイランに対して外交重視のアプローチをとるライバルのジョー・バイデンが大統領選で勝利したことを認めようとしない。予測不能なトランプの行動に対する不安は世界に広がっており、友好国も敵も同様にアメリカの動きに注意深く目を光らせている。 クリス・ミラー国防長官代理が3日に発表した声明によると、USSニミッツ空母はこの海域を出発する予定だったが、「トランプ大統領や他の米政府当局者に対してイランの指導者が突きつけた新たな脅威」のために、突然残るように命じられた。「誰もアメリカ合衆国の決意を疑ってはならない」と、ミラーは付け加えた。 韓国外交部は、韓国ケミ号の早期解放を革命防衛隊に求めている。革命防衛隊はこれまでも海上交通を危険にさらしたり、重要な海の交差点の付近または内部で規則に違反した国際船舶を拿捕してきた。 微妙な南北朝鮮との関係 外交部報道官は後に本誌に対し、船の乗組員らの健康状態は良好で、韓国とイランの両方で彼らの安全を確保するための努力が行われていることを確認した。この問題を解決するためにイランと国際社会のメンバーらとの協議が行われていることを繰り返し述べた。 1月10日に予定されている崔鍾建(チェ・ジョンゴン)韓国外交部第一次官のイラン訪問は、今回の事件と関係なく行われる、と報道官は語った。 2015年に締結されたイラン核合意からアメリカが2018年に一方的に離脱し、トランプ政権が対イラン制裁を再発動する前、韓国はイラン石油の最大の輸入国のひとつだった。イランの当局者はその後、アメリカの制裁下で韓国が凍結したイランの資産数十億ドルを解除するよう韓国政府に要請している。韓国はこの問題に関して会合を続けているが、これまでのところイランの要求は拒否している。 イランは北朝鮮とは友好的な関係にある。北朝鮮もまたアメリカの経済制裁の対象であり、韓国は北朝鮮との関係改善に努力してきた。アメリカがイラン核合意を離脱した時期に前例のない形で和平交渉も進んだ。だがそこから先の米朝関係は不安定になった。アメリカではバイデンが20日に新大統領となり、北朝鮮は今月中に開催される第8回党大会を前にしているため、将来はどうなるか、まったくわからない。 ===== アメリカとイランに関していえば、イランは北朝鮮とは違って核兵器を求めていなかったが、1月4日にウランの濃縮度を20%に引き上げる作業を始めると発表した。そうなれば、アメリカが離脱した核合意で定められた濃縮度の限界を大きく超えることになるため、両国の緊張はさらに高まるはずだ。 イラン当局者は、バイデンが約束したようにアメリカが核合意に復帰するなら、イランは直ちに合意に基づく限界まで濃縮度を下げることを保証した。