<運用スタイルを分かっていないまま株式投資をすると「全然儲からない」という羽目にも陥りかねない。資金を貯める目的は何か、株取引に割く時間はどれだけあるか、どのような分析をするか......。自分はどちらが向いているかを見極めることが大切だ> 働き方改革の影響で、会社員の間で副業が広まっている。だが転売やウェブライターなど、時間を切り売りして稼ぐ仕事は大変そうだとか、自分に向いていないといった理由で、株式投資に参入する人も多い。 会社員が収入アップを目的として株式投資をする場合、大前提として理解しなければならないことは何だろうか。 あなたに向いているのは投資? トレード? 株式投資を始めてみたものの、「雑誌やネットを参考にしているのに全然儲からない」という人も少なくないだろう。その理由のひとつは、そもそも自分の運用スタイルを分かっていないという点にある。 株式投資と言っても、運用スタイルの違いで大きく2種類に分けられる。すなわち、「投資」と「トレード」だ。まずはその違いを知っておく必要がある。 資金を貯める目的やライフスタイルを振り返り、自分は「投資」と「トレード」のどちらが向いているかを考えてみよう。 ■投資に向いている人の特徴 ・株取引に割く時間は少ない ・株価の上下に一喜一憂したくない ・結果はすぐには求めない ・老後資金、子供の教育資金、マイホーム資金など将来的に必要なお金を貯めたい ・ある程度の資金をじっくり育てたい ・ファンダメンタルズ分析が好き、または苦にならない 投資とは、「よい企業」に対し、「長期的」にお金を投じることを意味する。株式を保有している間に企業が成長したら株価が上がり、それが株主の利益になるからだ。 ただし、企業の成長がすぐに株価に反映されるわけではなく、早くて半年、通常は3〜5年ほどの中長期的な期間で見る必要がある。そのため、今すぐにお金が必要というわけではなく、気長に待てる人に向いている。 そして、「よい企業」であるかどうかを見極めるために、「ファンダメンタルズ」と呼ばれる財務状況や業績などの複雑な分析をする。ただ、購入した後は基本的に「放ったらかし」のため、仕事や家事で忙しく、株取引に割く時間が少ない人に最適だろう。 ■トレードに向いている人の特徴 ・株取引に割ける時間は多め ・すぐに結果を出したい ・月々の収入をアップさせたい ・少ない資金を短期間で大きくしたい ・テクニカル分析が好き、または苦にならない トレードとは、「株価の動き」に注目し、「短期的」な売買を繰り返すことを意味する。短いと数秒、長くても数カ月の間で売買するので、すぐにお金が必要な人に向いている。 ファンダメンタルズ分析は必要ないが、過去の値動きからパターンを把握し、将来の値動きを予想する技術(テクニカル分析と呼ばれる)が求められる。また、刻々と変動する株価チャートの動きに対応するため、株取引に割く時間はそれなりに必要だ。特に株式市場の営業時間である平日昼間に全く時間を確保できない人には不向きかもしれない。 ===== 投資とトレードでは活用する情報が異なる 投資とトレード、どちらを選択するかで必要となるスキルや心構え、取り入れるべき情報は異なる。それにもかかわらず、それぞれの情報を混合して取り入れてしまっている人が少なくない。 投資に興味があれば、世界的投資家であるウォーレン・バフェット氏の名前を聞いたことがあるだろう。彼の投資哲学には、「自分が理解できる事業内容であること」「長期的に成長が見込めること」「よい企業を安く買うこと」などがある。 これをトレードの運用スタイルを採る人が活用しようとして、「PER(株価収益率)が低いからこの株はお得だ!」「下落してしまったけど、この会社は将来性があるからまだ持っておこう」と考え始めると失敗してしまう。 逆に、投資をしている人が日々の株価の変動に慌てふためくのも間違いのもとだ。 注意すべきは、長期=投資、短期=トレードではないということ。あくまで、資金を投じるための焦点が何に向いているのかが基準となる。 投資は「目利き」、トレードは「精神力」 投資とトレードの大きな違いは、資金を投じる判断基準が「企業の今後の成長」にあるか、「株価の動き」にあるかだ。 投資の場合、企業の財務状況や業績、業界の将来性などを分析し、今後株価が上がる潜在的な能力があるかどうかを見極める必要がある。何より重要なのは「目利き」だ。 「ひふみ投信」の運用で知られるレオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長の藤野英人氏も、長期投資を勧める1人。 「その会社は私たちの生活を快適で楽しい物にすることに貢献をしているか。10年後、20年後にも必要であり続けるか。その会社ならではの強みがあるか。進化し続けるDNAがあるか。高い理想に基づく明確なビジョンがあるか――。これらが『いい会社』を選ぶための、チェックポイントです」(藤野氏の著書『お金を話そう。』より) 短期的な株価の変動を気にする必要はないが、企業や業界の動向には常に目を光らせなくてはならない。 一方、トレードには株価を動かす要因である市場参加者の心理と、過去から現在までの株価チャートのパターンを分析し、売買のタイミングを見極めることが求められる。 短期で利益を出すには値動きの激しい銘柄で勝負しなければならず、それだけリスクも高い。だが、現役トレーダーで、オンライン株式スクール「株の学校ドットコム」の講師を務める窪田剛氏によれば、トレードならではの利点もある。 「投資に比べて売買のスパンが短いので、失敗を挽回し、利益を上げるチャンスが、年に何度もあります」(窪田氏の著書『株の学校』より) 言い換えれば、ある程度の負けを前提として平常心を保ち、虎視眈々とチャンスを狙う「精神力」がトレーダーには不可欠と言えそうだ。 ===== ちなみに、トレードには「年中無休で株価チャートに張り付いていなければならない」という誤解があるが、実はそうではない。トレードの中にもさまざまな手法があり、会社員でもトレードで稼ぐことは可能だ。 例えば、数日〜数週間の間に売買するスイングトレードであれば、休日や終業後に銘柄を探し、指値・逆指値などを活用して、あらかじめ注文を出しておくことができる。ほかに、株価が最もよく動く時間である朝だけデイトレードをするという方法もある。 自分に合った運用方法を 長期的な視野を持つことで精神的な負担を軽くできるが、結果が出るまでに時間がかかる投資。短期間で利益を出せるが、手間や技術が必要とされるトレード。決してどちらが良い・悪いというわけではなく、自分に合った方法を選択することが大切だ。 ただし、どちらを選んだとしても、決して楽をして稼げる方法ではない。まずは自分の資金を貯める目的やライフスタイル、性格などを明確にした上で、それに適した方法で学び続ける必要があることを覚えておこう。