<日本株はダメだと思われがちだが、大企業が低迷しているだけ――と、投資のカリスマ、藤野英人氏は言う。株式投資の本質から、明るい展望を抱く理由、2021年の相場まで話を聞いた> (※本誌「2021年に始める 投資超入門」特集より) 私がファンドマネジャーを務め、わが社で運用する「ひふみ投信」は、2008年の運用開始以来、主に日本の成長企業への投資を続け、今では日本最大規模の日本株のアクティブ投資信託に成長した。 規模だけでなく成績も好調で、この1年で言えば、東証株価指数(TOPIX)を約18%上回っている。 TOPIXは東証1部上場の全銘柄(約2200銘柄)を対象に算出される株価指数で、日本株全体の値動きを表す。投資信託は一般に、規模が大きくなるとTOPIXを超えられないと言われるが、なぜ「ひふみ」はここまで成長できたのか。 この質問に、私は決まってこう答える。「それは日本経済が好調で、企業がどんどん成長しているからです」 日本には大小約380万の企業があり、約3800社が株式市場に上場している。多くの人の目に入っているのは、このうちの200社程度。テレビCMを出しているような大手の一流企業だ。 今の日本が低成長だと言われるのは、こうした大企業の業績や株価の多くが横ばい、あるいは低迷しているからにほかならない。 それを如実に示しているのが、時価総額が大きく流動性が高い東証1部の上位30銘柄で構成されるTOPIXコア30という株価指数だ。要するに、日本のトップ30社の株価動向を表しているわけだが、これがTOPIXに勝てない。むしろ、TOPIXの足を大きく引っ張っていると言っていい。 アメリカではGAFAM(グーグル、アマゾンなどIT5社)に代表される大企業が先陣を切って成長しているのに、日本では大企業ほど成長していない。 そのせいで日本株はダメだと思われがちだが、伸びていないのは大企業だけで、成長している企業はほかにいくらでもある。年7~8%ずつ伸びている企業も1500~2000社はあるだろう。 ネガティブ要素が日本の強み では、どういう企業が業績を伸ばしているかと言えば、やはり「お客様の支持が集まっている会社」。社会に対して付加価値を提供し、それによって評価が上がっている企業に投資をすれば、社会もよくなり、自分の懐も温かくなる。 結局のところ、これが株式投資の本質だ。 ただ、こういう話をすると「そんなのは奇麗事で、所詮、株式投資は金で金を得る汚い行為だ」と怒る人がいる。私に言わせれば、その考え方こそが汚いのであり、偏見によって本質を見逃している。 残念ながら、日本ではいまだにトップの経済人の中にも株式市場に否定的な考えの人が多く、それが高潔さの表れのように思われている節すらある。 ===== ILLUSTRATION BY IR STONE-SHUTTESTOCK しかし、根本的に株式市場というのは、価値のある素晴らしい企業の株価が長期的に上がるようになっている。投資家として株式市場で成果を上げることは、そうした素晴らしい企業にお金を投じて活動を支援したことへの、いわばご褒美だ。 株式投資に根強い反発がある背景には、日本人の労働観が影響しているのではないか。日本人の多くは仕事が嫌いで、会社が嫌い。5割の人が自分の会社を信用していないという調査結果もある。 そうした人にしてみれば、会社を応援すること(=投資)はまるで悪の軍団に肩入れをするような行為に思えるのだろう。 この考えは若い人にも浸透していて、NPOやNGOに進む若者が増えているのは、これが理由かもしれない。 その一方、起業して、世の中に価値を提供する素晴らしい会社を生み出そうとする若者が増えていることも事実だ。 私の元にも起業や投資の相談が多く寄せられている。その中には思わず「きみ、天才だね!」と言いたくなるようなアイデアもあり、彼らのおかげで私は日本の未来に明るい展望を持っている。 GDPから言えば、日本はまだまだ大きな市場だ。しかも日本語という特殊な障壁に守られていて、起業家マインドの薄い人が多く、世の中には不平不満があふれている。 一見ネガティブなこれらの要素こそ、実は日本の強みだ。なぜなら、不平や不満は全て商売のネタ。日本市場はいわば穴だらけのボロボロの服のようなもので、それを繕ったり継ぎはぎしたりすれば、数十億~100億円の市場を無数に生み出せる。 全体の成長は難しくとも、大きな成長を遂げる企業が誕生する余地はこの先いくらでもあるということだ。 2021年は乱高下の可能性がある 2021年の話をすれば、2020年のコロナ相場では多くの個人投資家が振り落とされたが、今年はそれ以上に荒れるとみている。 コロナ禍で状況が悪化するほどに市場が強気になっていったのは、金融緩和への期待が膨らんだからだ。では、そうして上がった株価が下がるのはいつか。それは金融緩和期待がしぼんだ時であり、コロナが終息に向かい始めた時だろう。 その際には、上がり過ぎた株価は一時的に大きく下落するかもしれない。しかし、長期にわたって成長が見込まれる企業であれば、また資金は戻ってくる。2021年にはそうした乱高下が起きる可能性があり、パニックにならずにいられるかどうかが鍵を握る。 ===== Photo: Newsweek Japan 注目は、やはりグリーン関連。菅政権が2050年までの脱炭素を宣言したこともあって誰もが注目しているが、その中で、誰も思い付けない企業を見つけられるかどうか。 例えば、グリーン関連の重要なテクノロジーだが、多くの人が気付かないようなもの。そうしたものを発見できれば、将来大きく成長する芽をつかむことになるかもしれない。 ただし、投資に不慣れな人に伝えたいのは、いきなり手持ちのお金を全てつぎ込むようなまねはしないでほしいということ。「手に汗を握らない程度」の小さな資金から始めるのが得策だ。 具体的に言うと、現金資産の1割以下でいい。その程度なら、たとえ失ったとしても人生には影響しないだろう。また、その資金を一度に投じるのではなく、時間や対象を分散して、ゆっくり投資することも大切だ。 「長期的に価値のある素晴らしい会社の株価が上がる」ことが株式市場の根本だと述べたように、投資も長い時間をかけて向き合う必要がある。 多くの個人投資家が、よい企業だと思って投資しておきながら、ちょっと株価が上がったらすぐに売ってしまうが、それでは本来得られたはずのリターンをみすみす手放しているようなものだ。 2020年の株式市場は過去に例を見ないようなものだったが、私がこの世界に足を踏み入れて約30年、相場が簡単だったことは一度もない。 9・11、リーマン・ショック、東日本大震災。そのたびに世界の終わりだと言われるが、世界はそんなに簡単には終わらない。世界が悲観しているときに希望を持ち続けられるか。 どんなにスキルがあっても、手放したら終わりなのが株式投資だ。その意味で、株式投資の成否を決めるのはスキルよりも考え方。ぜひ「小さく・ゆっくり・長く」株式投資を味わってもらえればと思う。 (構成・土居悦子〔編集者〕) <本誌2021年1月12日号「2021年に始める 投資超入門」特集より>