<低所得層には一人親世帯が多く、高所得層には共稼ぎ世帯が多いため、子どもに連絡手段として持たせていることも考えられる> 未来社会を言い表す言葉として「Society 5.0」がある。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会のことだ(内閣府)。 生産・流通・販売、交通、健康・医療、金融、公共サービス等の幅広い産業構造の変革、人々の働き方やライフスタイルの変化を伴うのは必至で、スマホといった情報機器が生活に必須となる。現に、生産年齢層の国民のほぼ全員がスマホを所持している。 子どもに持たせる年齢も早まってきているが、小学生の所持率は高くない。専用のスマホを持たせている保護者の割合は、低学年では11.7%、高学年でも29.3%でしかない(国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する実態調査』2016年度)。この段階では家庭環境とも強く関連していると見られるが、家庭の年収別のスマホ所持率を出すと興味深い傾向がわかる。<図1>は、低学年児童(1・2年生)のグラフだ。 費用がかかるので家庭の年収と比例するかと思いきや、そうではない。年収200万円未満の層が19.3%と最も高く、600~700万円台の階層まで低下し、その後反転して上昇する「U字」型になっている。低学年のスマホ利用層は、貧困層と富裕層に割れているようだ。 経済的に余裕のない家庭では「スマホ育児」が多い、という話を聞いたことがある。子どもに構う時間的・精神的余裕がなく、スマホを持たせてひとまず大人しくさせる。富裕層の用途はこれとは違う。やや乱暴な言い方だが、子どもを手っ取り早く黙らせるために持たせるか、子どもの能力を伸ばすために持たせるか、という違いが階層間であるのかもしれない。 親が子どもと接する時間とも関連しているだろう。低所得層には一人親世帯などが多く、富裕層にはフルタイムの共稼ぎ世帯が多い。こういう家庭が、わが子との連絡手段としてスマホを持たせているとも考えられる。 ===== 早いうちからスマホに慣れさせることは、未来社会を生き抜く力の素地を養う上で有益だが、ゲームへののめり込みや有害情報との接触など、負の側面も併せ持っている。後者が、恵まれない家庭の子どもに集中するとしたら一大事だ。健康や勉学にも悪影響が及び、家庭間での「育ちの格差」が拡大することになる。用途について管理・監督するよう、保護者の意識の啓発が求められる。 <図1>は低学年のデータだが、思春期にさしかかった高学年(5・6年生)と対比すると<表1>のようになる。タブレット、パソコンの所持率の階層差も載せている。 スマホの所持率が「U字」型であるのは高学年でも変わらない。タブレットも似たような傾向だが、パソコンの所持率はどの年収階層でも低い。高学年の富裕層でやっと5%になる程度だ。日本の子どものパソコン所持率が低いのは知られているが、機器を買えないという経済的理由よりも、必要性が認識されていないことのほうが大きいようだ。 インターネットは検索して情報を得るためのルーツであって、場所をとるパソコンは不要でスマホで事足りると思われている。ネットで得た情報を加工し、独自の創作物として発信する、という用途が頭にある保護者は多くない。だが、これからの時代で求められる姿勢は「創作」と「発信」で、パソコンはそのために不可欠といえる。文部科学省は「児童生徒1人1台端末」という構想を示しているが、パソコンの積極的な用途にも気付かせたい。パソコンの所持率がこうも低いと、学校教育の情報化(課題提出や庶務連絡をネット経由で行う)も難しい。 家庭の年収別に情報機器の所持率を見てみると、知られざる様々な課題が浮かび上がってくる。 <資料:国立青少年教育振興機構『青少年の体験活動等に関する実態調査』2016年度> =====