<革新系の与党代表が、保守系政治家である朴や李明博元大統領の赦免を求める理由とは?> 1月14日、韓国大法院(最高裁)は、収賄や職権乱用の罪に問われた朴槿恵(パク・クネ)前大統領に対するソウル高裁の判決を支持。これで懲役20年の実刑と罰金の判決が確定した。 報道により朴をめぐる一連のスキャンダルが明るみに出たのは、2016年秋。それを受けて朴の退陣を求める大規模な抗議デモが巻き起こり、ついには2017年3月、国会の弾劾決議によって朴が大統領を罷免された。いわゆる「キャンドル革命」である。朴の失職に伴って実施された大統領選で当選したのが、現職の文在寅(ムン・ジェイン)大統領だ。 実刑判決が確定した朴だが、もしかすると、早々に刑務所を出所できるかもしれない。 革新系の与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン)代表は、現地メディアの新年インタビューで「適切な時期に(収賄で既に収監されている) 李明博(イ・ミョンバク)元大統領と朴の特別赦免(恩赦)を文に提案する」と述べた。赦免は「国民統合」の手段だとのことだった。朴と李は、「共に民主党」と対立する保守系の政治家だ。 この提案に対しては、与党内で反発の声が上がっている。李洛淵は、文の後任を選ぶ2022年大統領選を目指す有力候補の1人だ。大統領選で保守層の支持を広げる狙いでこの提案をしたのではないかとの見方もある。 文は以前、収賄罪で有罪判決を受けた人物への赦免を行わない意向を口にしていた。それに、文の支持者の多くは李と朴の赦免に強く反対している。状況が大きく変わらない限り、赦免の可能性は乏しいと、専門家は考えている。 一方、李政権と朴政権で与党だった保守政党を継承した最大野党の「国民の力」の内部でも、2人の赦免には賛否が分かれている。赦免により過去のスキャンダルが蒸し返されれば、4月に行われるソウルと釜山の両市長選で党に悪影響が及ぶのではないかと懸念する声もあるのだ。 「共に民主党」内で赦免に反対する人たちが指摘するのは、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領のケースだ。軍事クーデターで権力を奪取し、1980~88年に大統領を務めた人物である。1980年5月、光州市で民主化を求めるデモが起きると、全はそれを武力弾圧した。この光州事件により、公式発表で200人近く、一説には2000人以上の死者が出たという。 1997年春、全は後任の大統領を務めた盧泰愚(ノ・テウ)と共に、クーデターや民主化弾圧、不正蓄財などで有罪判決が確定し、収監された。しかし、この年の12月、当時の金泳三(キム・ヨンサム)大統領は全と盧を赦免した。これは、このとき大統領選で当選して次期大統領に決まったばかりの金大中(キム・デジュン)の提案だった。 ===== 金大中は、自らも軍事政権時代に厳しい弾圧を受けた人物だ。全と盧の赦免という思い切った提案は、世論を統一し、分断を解消して国益のための政治を実現したいという意欲の表れだった。 ところが、赦免されて以降の全は、ほとんど反省の色が見られず、厳重に警備された豪邸で悠々自適の生活を続けている。全を赦免すべきでなかったという声は少なくない。 2018年以降は、国税当局が発表する高額滞納者名簿にも全の名前が毎年載り続けている。地方税の滞納額は9億7400万ウォン(約9200万円余り)に達している。 こうした過去の大統領の例もあって、有罪判決を受けた大統領経験者の赦免については、世論の反発が極めて強い。朴が早期に刑務所から出ることは、簡単ではなさそうだ。 <本誌2021年1月26日号掲載> =====