<コロナ禍に加えて例年になく寒い日が続き、ステイホームする人に向けたビジネスが熱い> 今年は、大雪により高速道路でのクルマの立ち往生のニュースや、雪による停電など雪災害対策の大切さを改めて考えさせられる冬となった。お隣の国、韓国でも今季は日本と同様に大雪に見舞われた。比較的暖かいはずの済州島でも、今年は1月上旬から大雪・強風注意報が出されるほどだったという。 大雪への対処は、降り出してからももちろんだが、事前の天気予測も重要である。とくに、それが売り上げを大きく左右するビジネスならなおさらだろう。最近韓国では、天気予測を人工知能AIに行わせて豪雪をピタリと当て、売り上げを大きく伸ばすことに成功した企業が注目を浴びている。そのビジネスとは、TVホームショッピングである。 6カ月先まで1日ごとの天気を予測 昨年7月、ロッテ・ホームショッピングは、韓国IBMとAI基盤気象予測システムについて業務協約を結んだことを発表した。AIに天気を予測させることにより、なんと6カ月先までの1日単位の天気はもちろん、最高気温/最低気温/平均気温/降水量など細かな情報までもが割り出せるという。 さらに、ロッテ・ホームショッピングは、商品の売り上げ結果と天気を照らし合わせたデータをAIに学習させることにより、今後は気象状況別の商品需要予測まで展開し提供していく予定だと発表していた。 そして、AI気象予測が導入から約6カ月がたった今冬。ロッテ・ホームショッピングは、この大雪を事前に予測し、売り上げに大きな成果を出している。 放送2週間前に商品決定が必要なホームショッピング 具体的な例でいえば、今月2週目と3週目は大雪と共に、気温がかなり冷え込むことをAIが予想していたため、厚めの暖かい寝具、温水マットなど暖房商品を主力とし、ホームショッピングでは欠かせない衣料品も冬物の肌着、起毛生地商品、暖かいコートなどに緊急商品変更をして販売したという。 さらに、大雪警報の出た12日には、羊毛コートやロングダウンジャケット、起毛パンツをメインに販売し、売り上げを大きく伸ばしたそうだ。 通常のホームショッピングでは、放送日の何日前から販売商品の決定を行わなくてはならないのだろうか? 一般的にホームショッピング業者は、約2週前に商品の決定を終えなくてはならないという。いくら生放送で紹介するとはいえ、商品の仕入業者との商談を済ませ、放送の準備、価格設定などをあらかじめ協議しておく必要があるからだ。 特に、衣料品や冷暖房器具などは、天気に大きく左右される商品であるため、発売のタイミングを間違えるわけにはいかない。 ===== AI気象予測システムを導入していない他のホームショッピング業者は、気象庁が発表する韓国を5つの地域に分けた気象予測データを元に、これまでの放送データなどから割り出して、販売商品を決定していたそうだ。 そのため、突然の天気の急変で売り上げが伸び悩むことや、ギリギリまで放送準備に追われるなどの苦労があった。 昨年の長梅雨と台風も予測、売上目標300%にアップ 一方で、AIを導入すればそういった悩みは最小限に抑えられる。実は、ロッテ・ホームショッピングのAI気象予測システムは、今回の大雪だけでなく、それ以前にも、昨年の7月から9月にかけて韓国を襲った記録的に長い梅雨と台風を予測していたといわれている。 長梅雨と台風の予測を出したAIを信じ、ロッテ・ホームショッピングは除湿機や衣類乾燥機など梅雨対策に特化した商品販売を増やして番組編成を行った。その結果、前年同期比の注文数は「除湿機」113%、「乾燥機」120%にそれぞれアップしたという。 各商品別の注文金額も3〜5億ウォンを記録しており、ロッテ・ホームショッピングは、昨年の除湿器/乾燥機の対予算比150〜300%を達成させ大成功した。 このように、導入後早速大きな成果を上げているロッテ・ホームショッピングのAI気象予測システムだが、そもそも天気予報はAIが最も活躍できる分野の一つだと言われている。 韓国政府もAI予報の開発に期待 昨年2月4日、Googleは「Google AIフォーラム」の会場で、AIによる気象予測研究結果を発表した。「公益のための AI(AI for Social Good)」プロジェクトリーダーであるカーラ・ブルームバーグ氏による発表では、Google AI 気象予測システムは、1平方キロメートル単位で6時間先の天気をたった5分で予測することができるという。これまでの気象予報システムでは、過去の観測データを統合し反映させなければならないため、スーパーコンピューターを使っても約6時間はかかっていたというから驚きだ。 韓国は昨年末、2021年度気象庁への予算を昨年の3,909億2000万ウォンから8.9%もアップした4,256億5900万ウォンで編成した。とくに、AIによる天気予測システム開発をメインとした「未来気象技術確保事業」に106億ウォンの予算が割かれていることに注目が集まった。政府もAIによる気象情報に期待を込めていることがよくわかる。 もちろんビジネス分野だけでなく、今後AIの気象予測がますます性能を高め予想的中率が上がると、大雪や台風などの天災を迎え撃つ大きな助けになる。自然の力はあまりにも大きく、これまで太刀打ちできなかったが、人類はAIという味方を手にし、事前に予測して対処することができるようになった。 これからは特別ハイテクを意識していなくても、知らず知らずのうちに、身近なところでAIの恩恵を受けている、そんな世界になっていくことだろう。