<この1週間、アメリカの感染者数や死亡者数は減少したが、まだホリデーシーズンの前に戻っただけ。これからが正念場だ> ここ数カ月、アメリカでは新型コロナウイルスの感染、入院、死亡件数が記録を更新し続けてきたが、実はドナルド・トランプが大統領任期を終える週に新規感染者数は少しだけ減少した。 これがジョー・バイデン大統領の手柄でないことは確かであり、すぐに増加に転じる可能性もある、と専門家らは口をそろえて本誌に語った。 COVID(新型コロナウイルス感染症)追跡プロジェクトによると、1月14日以降の7日間に、週単位の新規感染者数は20%減少した。11月中旬以来、休日の入らない週としては、新規陽性者が最も少なかった。 一方、16週連続で上昇していた週の入院件数の平均値も、4%減少した。だが死亡者数は依然として高いままだった。同じ週の死亡者は約2万1301人で、パンデミックが始まって以来2番目に多かった。 1月26日の最新データでは、新規感染者数と入院件数が減少しており、COVID追跡プロジェクトは「希望に満ちた兆候」だと評した。 COVID追跡プロジェクトチームは22日にこう報告した。「感染拡大が最悪の状態にある州でさえ、新規感染、入院、死亡の割合が減少する兆候が見えている。ただし一部地域ではいまだに、新規感染と入院件数は非常に多く、死亡率もすさまじく高い」 現在のところワクチン接種は遅々として進まず、アメリカの新型コロナウイルスの感染者と死亡者数は、世界で最も多い。これまでに感染者は2520万人以上、死者は42万1000人以上と報告されている。 年末イベントの影響か 専門家によれば、今回の減少は感謝祭から年末年始にかけてのホリデーシーズン中に米疾病対策センター(CDC)のアドバイスに逆らって、旅行や大人数の集まりに参加した人々が引き起こした感染爆発の反動である可能性が高い。 ホリデーシーズン中の危険な行動が、その後の感染爆発につながった、とジョージ・メイソン大学のアミラ・ローズ教授(グローバルヘルスと疫学)は語る。 多くの専門家は、年末年始の休暇の約3週間後に感染者数は減るよりもむしろ最高に達すると予測していた。COVID 追跡プロジェクトのデータはそれを反映している。 オックスフォード大学のジェニファー・ダウド准教授(人口統計学と公衆衛生)は以前、数週間以内にワクチンを受けることができるかもしれないのに、人々がこのホリデーシーズン中に集まる危険を冒し、家族を失うとしたら、「悲劇的」で「心が痛む」と本誌に語っていた。 ボストン大学医学部のジョシュア・バロカス助教授によれば、アメリカの感染状況は「峠を越えた」と言うには時期尚早であり、感染者数がピークを過ぎて今後は持続的に減少するのか、それとも再び増加するかを判断することはできない。 「大規模なワクチン接種が実施されるまで、新規感染者数は上下すると思う。数週間は増加し、数週は減少する、というふうに」と、バロカスは言う。 ===== ミシガン大学疫学部のアンドリュー・ブラウワー助手も「流行が収束に向かって減少していく時期にあるとは思わない」と、本誌に語った。 現在、感染者数が減少しているのは、トランプやバイデンの手腕とは関係がない、と専門家らは見ている。「感染者の減少は、人々の接触が急増したホリデーシーズン後の自然な落ち込みである可能性が高く、政府による対策の結果ではない」と、ブラウワーは言う。 「トランプ政権は、ソーシャル・ディスタンスの確保やマスク着用といった公衆衛生上の対策を社会全体の文化して確立することに反対の姿勢をとった。バイデン政権が今更、文化の方向性を反転させるのは難しいだろう。だが、ワクチン接種キャンペーンを通じて感染予防の態勢を維持する必要がある」 「トランプが大統領ではなくなった今、多くのことが変わったが、パンデミックに関して言えば、バイデン大統領の影響が現れるまでにはしばらく時間がかかる」と、ボストン大学のバロカスは言った。 「新大統領が就任したからといって、魔法のように感染が収まったり、マスクを着用しなかった人が着用するようになったりはしない」 政治の功績ではない ジョンズ・ホプキンス保健安全保障センターの上級研究員アメシュ・A・アダルヤ博士も本誌に対し、感染者の減少が長期的な傾向であるかどうかを判断するには早すぎると述べた。「今回の感染者数減少に関しては、政治家に功績があるとは思わない。そうアピールする政治家はいるかもしれないが」 「ホリデーシーズンに至るまでのウイルスの深刻さに関する政治的なメッセージは、よく言って『混乱』、悪く言えば『怠慢』 だった」と、ローズも言う。 確かに、政治リーダーがマスクの着用やソーシャル・ディスタンスの必要性を無視してクリスマスの集会を主催し、マスクをつけずに選挙集会に参加することを奨励した政治指導者を多くの国民が手本としたことで、ホリデーシーズン中に多くの人がウイルスにさらされた可能性は高い。その後、感染者数は急増した。 「この影響で、今後数週間、死者数は増え、より多くの感染者の治療が必要になるため、病院にはプレッシャーがかかるだろう」と、ローズは続けた。 さらに問題を複雑にするのは、イギリスとブラジル由来の変異したウイルスの存在だ。変異株が国内で広がれば、ちょっとした感染者の減少など台無しになりかねない、とブロウワーとアダルヤは指摘する。 ===== 従来のウイルスよりも感染力が高く、致死率が高い可能性があるイギリス発の変異株B.1.1.7は、すでに12以上の州で報告されている。25日にはミネソタ州で全米初のブラジルからの変異株が検出された。 「特にB.1.1.7のような変異したウイルスが増えれば、感染者の数が記録を更新したり、再び増加に転じたりする可能性が高い」とブロウワーは述べた。 バロカスをはじめ専門家にとって、感染者数の減少を、理由はどうあれ、パンデミックが収束する方向に向かっている兆候と見ることはできない。 「今でも1日あたりの死者数が4000人を超えていることを忘れてはいけない」と、バロカスは言う。「感染者数については、ホリデーシーズン前の数字に戻っているだけで、あまり喜んではいけない」