<新型コロナウイルスの発生源を調べるために武漢に入ったWHO調査団からも世界の目を逸らしたい狙いが> 中国企業が開発した新型コロナウイルスワクチンの有効性が低いとの研究結果が明らかになる中、中国の政府系メディアは厳しい治験を経て数カ国で承認されたファイザーのワクチンに対するフェイクニュースを流布している。 オーストラリアの政府系シンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」によれば、ブラジルで行われた研究で中国のシノバック・バイオテック社のワクチンの有効性が当初見込まれていたよりはるかに低いことが明らかになって以降、中国によるフェイクニュースの拡散が急増しているという。 フェイクニュースの大半は、ノルウェーでファイザーのワクチンの接種を受けた高齢者が死亡した件にまつわるものだ。ノルウェー医薬品庁は、ワクチン接種後に高齢者施設の入所者30人が死亡した(1月21日時点)と明らかにした。この中には死因とワクチンの間の関連が疑われていないケースも複数含まれている。 「ノルウェーの高齢者施設や他の類似の施設では1日平均45人(の入所者)が死亡している。接種後すぐに死亡する入所者がいるからといって、因果関係があることにはならない」と、医薬品庁はコメントしている。 ノルウェーでは12月27日以降、約6万3000人がワクチンの接種を受けた。当局の集計では副反応は104件起きており、死者も出ている。軽度とは言え副反応により、もともと弱っていた高齢者の状態がさらに悪化した可能性もあると医薬品庁は見ている。 ノルウェーの死者を調べろと要求 ところがこの件に関し、中国の政府系メディアは調査を求める声を上げている。中国共産党機関誌人民日報系のタブロイド紙、環球時報は「主な英語メディアは申し合わせたかのように、この問題をすぐには伝えなかった」とする論評を15日に掲載。中国中央電視台(CCTV)系のニュースチャンネルCGTNは、西側メディアはこの問題を見て見ぬふりをしていると批判した。 折しも新型コロナウイルスの発生地とされる武漢では、その発生源を調べるWHOの調査団が活動を始めている。調査団の武漢入りと時と同じくして中国のワクチンに関し悪いニュースが伝えられるのは、習政権にとっては政治的リスクだ。 ちなみにブラジルの研究で明らかになったシノバックのワクチンの有効性はたった50.4%。それ以前に伝えられていた78%よりもずっと低い数値だ。また、ブラジルやトルコからは中国企業からのワクチンやワクチン材料の出荷の遅れを指摘する声が上がっている。 中国疾病対策予防センターの専門家は12月、ファイザーやモデルナが開発したmRNAワクチンに警鐘を鳴らした。mRNAワクチンが健康な人に接種されるのはこれが初めてで、今回のような形での実用化にリスクがないとは言えないからだという。