<約3カ月間ロックダウンを行うもウイルス拡大は止まらず、独政府は特定の状況下における医療用マスク着用を義務化。肯定的な意見は多いが、果たして効果は...> ドイツ政府は1月19日、商店や公共交通機関の利用の際にはFFP2などフィルター性が高い医療用マスクを着用することを政令で義務付けた。25日から施行され(バイエルン州政府だけは独自に18日から実施)、違反者は250ユーロの罰金を科される。もはや布マスクでは買い物にも行けない。 筆者が住むバイエルン州ミュンヘンのスーパーマーケット。布マスクを着けた中年の女性客が店に入ろうとしたところ、店員に「FFP2マスクを着けないと入店できませんよ」と注意された。女性は店員に「FFP2マスクって何?」と聞き返していた。入り口には「入店時には、FFP2マスクを着けることが義務付けられています」と書いた大きなポスターが貼られているが、女性は見過ごしたのだろう。 だが、先行して施行された同州では既に周知が行き届いており、こうしたケースは例外だ。店内を見回すと子供を除くほぼ全ての客はFFP2マスクを着けている(14歳以下は着用義務免除)。 ドイツでは昨年4月のパンデミック第1波で商店や公共交通機関でのマスク着用義務が導入されたが、種類の指定はなく、大半の人が布マスクを使っていた。 FFP2マスクは、12月頃から薬局やオンラインで比較的容易に入手できるようになった。価格が1枚6ユーロの時期もあったが、最近では1枚1ユーロ前後に下がっている。ドイツ政府は、60歳以上や基礎疾患を持つ人には無料で3枚配布している。またバイエルン州政府は、失業者らに250万枚のFFP2マスクを配り始めた。 FFP2マスクの義務化に踏み切ったのは、約3カ月間ロックダウン(都市封鎖)を行っているにもかかわらず、ウイルス拡大が止まらないためだ。11月2日以降は飲食店や劇場、映画館などの営業、国内観光での宿泊施設提供が禁止された。 12月16日からは食料品店や薬局などを除く全ての商店の営業も禁じられ、学校や託児所も閉鎖。だが直近1週間の10万人当たりの新規感染者数は、1月27日時点で101人と、政府目標(50人)の2倍以上。ロベルト・コッホ研究所によると、29日には1万4000人が感染し、839人が死亡した。 さらに英国で発見された感染力が強い変異株「B・1・1・7」の市中感染がドイツでも起きている。ドイツ政府はFFP2マスクについて「飛沫やエアロゾルからの防護度は94%」で、布マスクよりも高いと説明している。 ===== 市場調査会社カンターが11月に行ったアンケートによると、回答者の90%が商店や公共交通機関でのマスク着用義務に賛成していた。だが、町の中心部やスーパーの駐車場などを除くと屋外でのマスク着用義務はない。このため、屋外でマスクを着けている人は10%に満たない。 また、なぜか店員は政令施行後も布マスクの着用を許されている。レジの前に透明なプラスチック板を取り付けている狭い店で、店員がマスクなしで接客するのも見た。プラスチック板では、飛沫は防げてもエアロゾルは防げない。 アパートを掃除する管理人、住宅の改装業者や小包の配達人が「息苦しいから」と、屋内でマスク着用を怠っているのをよく見掛ける。個人主義が強く、他人の目を気にしないドイツでは、そもそもマスク着用が日本ほど徹底していない。これでは、ウイルスの迅速な抑え込みは難しいかもしれない。 <本誌2021年2月9日号掲載>