<仮想通貨で1億円を超える資産を築いた「億り人」へのインタビュー。投資術、人物像、今後の予想を聞く> 2020年12月ごろから価格が高騰し、今年1月には一時400万円を超える水準にまで達したビットコインをはじめ、暗号資産(仮想通貨)への注目が今また高まっている。400万円という価格は、暗号資産が一般にも広く知られることとなった2017年の「バブル」を超える過去最高値だ。 17年当時には、ビットコインだけでなくオルトコインと呼ばれるビットコイン以外の暗号資産が軒並み上昇。その波に乗って億を超える資産を築いた「億り人」なる人々も登場した。 そんな億り人たちは、その後の価格の急落や現在の再上昇をどう見ているのか。また暗号資産で巨額の利益を得た彼らはどんな人物で、どんな生活を送っているのか。現在の価値で約7億円の資産を暗号資産で築いたA氏に、本誌・藤田岳人が話を聞いた。 ──暗号資産への投資を始めた理由は? もともと高校生のころから株式投資をしていたのですが、あまり「おいしくない」と感じていました。例えばIPO(新規上場株式)投資にしても、主幹事の証券会社が申込者に割り当てることになっていますが、結局は証券会社のさじ加減であり、裏側では何が行われているか分からないという不公平さを感じていたからです。 表向きは、インサイダーは売買できない、IR(投資家向け情報)は決まったフォーマットで発表するなど、投資家みんなが公平になるように規制されています。でも裏側では、絶対に不公平なことが行われていると思っていました。 暗号資産はそうした既得権益の外側で取引ができます。技術的なことを知らなければ仕組みを完全には理解できないなど平等ではありませんが、逆にそれが自分が持っているスキルにフィットして有利に働き、儲けを上げやすいと感じたのが1つめの理由です。 もう1つは、日本円などは毎年ものすごい量が発行されているので、それだと日本円の価値は下がるに決まっていると感じていたことです。ビットコインのように発行枚数を勝手に増やすことができない暗号資産なら、金(ゴールド)よりも便利だし、価値を保全する手段としては最適だと思いました。 ===== ──いつ頃のことですか? 最初にビットコインを知ったのは、マウントゴックスの事件(2014年に世界最大規模のビットコイン交換所であるマウントゴックスが起こした、ビットコインと預かり金の大量流出事件)がニュースで報道されたときです。そのニュースを聞いた翌日に、渋谷でビットコインのマニアが集まるイベントがあるとネットで知り、そこに行ってみました。 最初は取材が来るだろうということで、テレビに映りたいという冷やかし半分でした。でも現地に行くと外国人がたくさんいて、彼らと話しているうちにビットコインのすばらしさを知ったという感じです。 ──暗号資産を始めた当初は、どのように情報収集していましたか? 当時はコインの種類も情報も今のようにはなくて、Twitterで仲間を見つけたり、オフ会や勉強会に積極的に参加したりしていました。そのころに知り合った人たちとは、今でも交流があります。 ──今は、どうやって情報収集されていますか? 一番はやはりTwitterです。そういう情報をいち早く発信する人はだいたい決まっているので、そういう人のツイートを見ています。 ──では今、暗号資産の世界で注目しているものは何ですか? 特に2020年に入ってからは、DeFi(ディーファイ:ブロックチェーン上に構築された「分散型金融」サービス)と呼ばれる分野で、既存の金融を模したようなものです。これのいいところは、私の場合、税金を低く抑えられることです。 例えばオルトコインのなかには価格が数十倍に跳ね上がるものもありますが、そのコインを売却すると、それによって確定した利益全体が課税対象となるので、ものすごい税金がかかります。そのため私は、細かいトレードなどはあまりしたくないんです。 DeFiの場合、得られる利益は利息収入となります。コインを売買するわけではないので、課税されるのは利息で得られた分だけなんです。取引所が行っているレンディングというサービスも同様ですが、暗号資産を預けて金利収入を得る場合は、持っている暗号資産自体には税金がかからず、利息にしかかからないので課税対象の額が全然違います。 ──そうした利息などで得た利益と、保有している暗号資産の値上がり分を合わせると、これまでにどれくらい資産形成できましたか? 現在は7億円くらいです。ガチホ(暗号資産を売却せずに長期保有すること)したまま、資産が7億円に膨れ上がっている状態です。 ===== ──どうやって増やしてきたのでしょうか? 税金のこともあり、トレードは頻繁にはしていません。(暗号資産の値上がりに従って)14年から17年までは右肩上がりに資産が増え、ピーク時には10億円を超えました。でもその後すぐにバブルがはじけて、一時は2億円を下回っていたと思います。そこから今日までかけて7億円に戻してきたという感じです。最近になって、やっとDeFiなどで金利収入が得られるようになったくらいです。 ──暗号資産で持ち続けているということは、資産が増えても生活は大きく変わらない? その通りです。変わらないんですよ。私の場合、どうせ日本円にするつもりはないので、ビットコインの価格なんかは、本当はどうでもいいんです。ただ最近はDeFiで利息が得られるようになったので、その半分はそのまま暗号資産で持ち、残り半分は日本円にかえるようにしようかと考えています。それでも数千万円の規模にはなります。 ──では、今後は生活も変わりそうですか? 日本円にかえても、すべて株に突っ込むつもりなので生活は向上しないんじゃないですかね。実は最近悩んでいるんですが、使い道がないんです。そこが問題ですね。周りの暗号資産仲間も同じように言っています。 ──家とか車とか、いわゆる一般的な贅沢に関心がない? そうですね。家は賃貸でそこそこのところに住めればいいですし、車も特に必要ないですし......。使わないと、持っていないのと同じですよね。ただ額が増えていくだけで。 ──もっと豪遊しているのかと思っていました。 相場と向き合っている人は特に、モノの本質的な価値をすごく気にすると思うんです。そうすると高いだけで自分が幸せになるための価値が得られないものは、絶対につかまされたくないと考えるんです。食べ物でも1万円を超えると、あとはあまり変わりませんよね。贅沢をしても無駄という感じですかね。 お金をかければかけるほど幸せになれると思うのですが、ある地点を超えると幸福度は増さなくなると思うんです。お金をかけても幸せが得られなくなるとどうなるのか。芸能人が覚せい剤なんかにハマるのを見て、どうにかお金で幸福を買おうとすると、そういうことになるのかなと思ったりします。 ──なかには億り人になって、ガラッと変わった人もいますか? まあ、結構います。ただ、どう変わったかと言うと、会社を辞めてニートになったという感じで、いかにもな贅沢をしているということではないです。 スポーツカーを買いたいとか、そういう物欲が強い人は、この界隈にはあまりいないように思います。むしろ仕事から自由になりたい、という感じですかね。 ※インタビュー後半は、2月4日に掲載予定です。