<米カリフォルニア大学デービス校の研究チームは、自閉症スペクトラム障害の診断と極めて関連の高い母体由来の自己抗体を特定した......> 自閉症スペクトラム障害(ASD)の原因については依然として完全に解明されていないものの、1990年代以降、子どもの自閉症と胎児の脳のタンパク質を標的とする母体由来の抗体との関連を示す研究論文がいくつか発表されてきた。母体由来の自己抗体に関連した自閉症スペクトラム障害(MAR ASD)は、自閉症の約20%を占めるとみられる。 神経の発達に必要なタンパク質を標的とする自己抗体がある 米カリフォルニア大学デービス校のジョディ・ファン・デ・ウォーター教授を中心とする研究チームは、2013年7月、発達段階にある胎児の脳のタンパク質を標的とする母体由来の抗体群を特定。自閉症スペクトラム障害と診断された子どもの母親のうち23%に、神経の発達に必要なタンパク質を標的とする自己抗体があることを示した。 2018年3月には、「妊娠中の母親の自己抗体が発達中の胎児の脳に反応し、その発達を変化させることがある」との研究成果も発表している。 さらに、ファン・デ・ウォーター教授らの研究チームは、機械学習(ML)を用いた分析により、自閉症スペクトラム障害の診断と極めて関連の高い母体由来の自己抗体を特定し、2021年1月22日、学術雑誌「モレキュラー・サイカイアトリ」で研究論文を発表した。 研究チームは、自閉症児の母親450名と健常児の母親342名から採取した血漿試料を用いて、発達段階にある胎児の脳で多くみられる8つのタンパク質(CRMP1・CRMP2・GDA・NSE・LDHA・LDHB・STIP1・YBOX)への反応を調べ、機械学習アルゴリズムにより、自閉症スペクトラム障害の診断と特に関連のある母体由来の自己抗体パターンを分析。 約1万件のパターンから関連性の高い3つのパターンとして、「CRIMP1とGDA」、「CRIMP1とCRMP2」、「NSEとSTIP1」が特定された。なかでも、CRIMP1とGDAへの自己抗体がある母親は、自閉症の子どもを持つ確率が31倍と最も大きく、CRIMP1とCRMP2への自己抗体がある母親では26倍、NSEとSTIP1への自己抗体がある母親では22.8倍、その確率が高くなっている。また、いずれのパターンにおいても、CRIMP1への反応があると、子どもの自閉症がより重度となる確率が高まることもわかった。 「100%の精度で初めて特定できた」と発表 研究論文の責任著者であるファン・デ・ウォーター教授は、この研究成果について「機械学習により、自閉症スペクトラム障害のリスクの潜在的バイオマーカーとして、母体由来の自己抗体に関連した自閉症スペクトラム障害のパターンを100%の精度で初めて特定できた」と評価。これらのバイオマーカーを活用することで、母体由来の自己抗体に関連した自閉症スペクトラム障害の早期診断やより効果的な介入に役立つと期待されている。