<「北極海は、少なくとも2度の氷河期で、塩水がなくなり、その代わりに、厚い棚氷の下で大量の淡水に満たされていた」との研究が発表された......> 北極海は、過去15万年の間に少なくとも2度、厚さ900メートルの棚氷で覆われ、淡水で満たされていたことが明らかとなった。 独アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所(AWI)とブレーメン大学海洋環境科学センター(MARUM)の共同研究チームは、2021年2月3日、「北極海とこれに隣接するノルディック海は、少なくとも2度の氷河期で、塩水がなくなり、その代わりに、厚い棚氷の下で大量の淡水に満たされていた」との研究論文を学術雑誌「ネイチャー」で発表した。 数千年にわたって淡水化していた? 最終氷期で特に寒冷期であった約6〜7万年前、欧州北部や北米の大部分が棚氷に覆われていた。欧州の棚氷はスコットランドからスカンジナビア半島を経てロシア北部カラ海の東まで達し、北米では現在のカナダの大部分が2つの巨大な氷床の下に埋もれ、グリーンランドやベーリング海の沿岸の一部も氷河に覆われていたと考えられている。 研究チームは、当時の北極海の状況を解明するべく、塩水中でウランが崩壊すると生成され、海洋堆積物の中に捕捉される「トリウム230」をもとに、北極海、フラム海峡、ノルディック海で採取した計10個の海洋堆積物の地質分析を行った。 その結果、同一の間隔でトリウム230が存在しなかった。これは、塩水がなかったことを示すものだ。研究チームでは、「約13〜15万年前と約6〜7万年前、北極海とノルディック海は、棚氷の下に淡水が溜まり、数千年にわたって淡水化していたのではないか」と考察している。 北極の氷塊が海洋循環を妨げていた 北大西洋や太平洋と複数の海峡でつながっているにもかかわらず北極海が淡水化した要因として、研究論文の責任著者のルーディガー・ステイン博士は「氷河期の海面は現在よりも最大130メートル低かったうえ、北極の氷塊が海洋循環を妨げた可能性がある」と指摘。 たとえば、ベーリング海峡やカナダ列島の入り江などは当時、海面上にあり、太平洋とのつながりが完全に切断されていた。 また、淡水から塩水へのシフトは比較的短期間で起こっていたとみられる。研究論文の筆頭著者のヴァルター・ゲーベルト博士は「氷の壁が機能しなくなると、北極海は再び、塩水で満たされ、淡水と入れ替わり、淡水はノルディック海やグリーンランド-スコットランド海嶺から北大西洋へと急速に放出される」との仮説を示す。 北極圏からの淡水の放出は、最終氷期の急激な気候変動の要因となった可能性もある。ゲーベルト博士は「淡水の放出と気候変動が互いにどのように関連しているかについて、さらに詳しく調べる必要がある」と述べている。