<イスラムのフェミニストや女性議員を巻き込む社会運動に火がついた> モロッコのソーシャルメディア上では、婚外交渉を犯罪と定めた法律の廃止を目指す運動が展開されている。きっかけは、「リベンジポルノ」の被害者の女性が有罪判決を受けて収監されたことだった。 モロッコの報道でハナーと呼ばれているこの女性は、男性との性行為を撮影した動画をネットで公開されたのち、1月にモロッコ北部の街、テトゥアンで逮捕された。2人の子どもを持つシングルマザーである彼女は、禁錮1カ月と罰金500ディルハム(約5800円)の有罪判決を受けた。 ハナーは、イスラム教徒が大多数を占めるモロッコの刑法の2つの条文に反したとして告訴された。1つは、「公の場での慎みを踏みにじる行為」を禁じる第483条、もう1つは、婚外交渉を禁じる第490条だ。 ハナーの釈放を求める運動を行っている社会活動家らは、この動画はハナーの知らないところで、同意なく撮影・拡散されたと抗議している。 流出した動画に映っている女性の相手は、警察が指名手配している男だと地元メディアは伝えた。動画を公開した人物の身元はいまだ不明で、この人物が法的責任を問われるとしても、それがどんなものになるかはわかっていない。 モロッコのインフルエンサー取り込む モロッコでは、ハナーの逮捕および実刑判決に怒りを覚えたソーシャルメディア・ユーザー数百人が、刑法第490条の廃止を求めて声を上げている。この条文は、結婚相手以外と性交渉を持った者に1カ月から1年の禁錮刑を科すと定めている。モロッコのインスタグラムでは、この運動を象徴する赤色をバックにした画像があふれており、ツイッターでは「#STOP490」(490条を廃止せよ)というハッシュタグがトレンド入りした。 この運動を立ち上げたのは、複数の受賞歴がある作家のレイラ・スリマニと映画監督のソニア・テラブが創設した、社会改革を促す運動「モロッカン・アウトローズ」だとされている。このグループは、刑法第490条を批判する画像やミーム、ソーシャルメディア向けのフィルターを拡散し、モロッコの若者やインフルエンサーを運動に取り込んでいる。 モロッコ人を母に、ポルトガル人を父に持つ女優のサラ・ペルルは、この条文を「時代錯誤」と呼び、「われわれが好むと好まざるとに関わらず、モロッコ人たちは婚外交渉をしている」と指摘した。 「この話は極めて不快だ」と、ペルルはインスタグラムで書いている。「この法律が廃止され、モロッコ人が自分の心身に関して、望むことを何でも自由にできる状況が来ることを望んでいる」 ===== イスラム圏のフェミニスト、アスマ・ラムラベットはフェイスブックへの投稿で、刑法第490条は「今日のモロッコでは受け入れられない」と書いた。 「宗教が結婚相手以外との性交渉を禁じているとしても、社会の中では、成人同士が私的に行う行為は罰せられるべきではない。これは各自の倫理観の問題だ」とラムラベットは書いている。 モロッコで国会議員を務めるオマル・バラフレジも、自身のフェイスブックのページで、第490条の廃止を求める声に賛意を表明した。 今回の運動は、同性間の性的な行為を罰する刑法第489条についても、反対を表明している。 ハナーの収監は、モロッカン・アウトローズ運動が起きるきっかけとなった、女性ジャーナリストのハジャル・ライスーニの一件を思い出させるものだ。ライスーニは2019年、婚前交渉のうえ人工妊娠中絶を行なった容疑で逮捕された。裁判で、ライスーニと婚約者は禁錮1年、妊娠中絶を行った産婦人科医は禁錮2年の実刑判決を受けた。3人はその後、モロッコ国王モハメッド6世による恩赦を受けた。 とはいえ、ライスーニの逮捕・収監を批判していた人権活動団体は、恩赦の後も批判を緩めていない。そもそもライスーニに対する告発自体が、現体制に批判的な報道を行ってきた彼女を収監するための口実だったと主張している。 (翻訳:ガリレオ)