<ベッドにいる時間のうち実際に眠っている時間の割合「睡眠効率」を高めれば、ほとんどの人の睡眠問題は解消される> 健康、美容、能力アップ、認知症対策など、さまざまな分野で共通して大切だといわれているのが「睡眠」だ。しかし、多くの人が睡眠の悩みを抱えているのも事実だ。 厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2018年)によると、「ここ1カ月間、睡眠で休養が十分にとれていない」と回答した人の割合は21.7%だった。5人に1人が睡眠に悩みを抱えていることになる。そんな睡眠の悩みを解決するのが、本書『4週間で誰でも寝つきがよくなる 最速入眠プログラム』だ。 著者のマイケル・モズリーは医師で、BBCやディスカバリーチャンネルで長年プロデューサーをつとめるジャーナリストでもある。1995年には、ピロリ菌に関する報道番組で英国医師会の年間最優秀医学ジャーナリストにも選ばれ、その後も『週2日ゆる断食ダイエット』(幻冬舎)は世界的ベストセラーとなっている、英語圏では著名な科学ジャーナリストだ。 そのモズリー氏の新しいテーマが睡眠だった。自身が20年もの間、夜中に目が覚めてしまう状況に悩まされ、深刻な睡眠不足の影響を解明するべく、自らさまざまな実験を体験し、睡眠の質を向上させる方法をBBCの番組で検証した。その番組を書籍化したのが本書だ。 そもそもなぜ眠れないのか? 実は眠りたいという衝動は起きた瞬間から始まっている。目覚める直前に体内でストレスホルモンのひとつである、コルチゾールが大量に分泌され、その働きにより脳内にはアデノシンと呼ばれる化学物質が放出される。アデノシンは脳の受容体(レセプター)と結合し、脳の活動をゆっくりにするため、眠気が起こるのだ。したがって起きている時間が長ければ長いほど、アデノシンのレベルが高くなり、眠気も増していく(ちなみに、このアデノシンの動きをブロックするのがカフェイン)。 このアデノシンの他、眠気の推進力となるのが体内時計だ。しかし、よく言われるように体内時計は24時間ぴったりの周期で動いているわけでなく、個人差も大きい。この体内時計が早く進むタイプ(朝型)、遅く進むタイプ(夜型)があり、しかも遺伝子に基づいていることが今では明らかになっている。 遺伝子を変えることはできないが、その体内時計をリセットすることはできる。それが、モズリー氏の「熟睡プログラム(安眠プログラム)」だ。 熟睡プログラム2つのアプローチ 「熟睡プログラム(安眠プログラム)」は、「睡眠制限療法」と食事のふたつのアプローチが中心となっている。 「睡眠制限療法」は簡単に言えば、ベッドにいる時間を減らす方法である。睡眠に悩んでいる人は、できるだけ長い時間をベットで過ごそうとする。しかし、眠れずにただ横になって眠れないでいることは、脳がベッドと眠れずにイライラしていることを関連づけてしまうため、最悪の行動パターンが定着してしまう。睡眠制限療法とは、ベッドにいる時間を制限することで、脳内で結びついた「ベッド=眠れない」を断ち切る方法である。 ===== 4週間の熟睡プログラム モズリー氏が提案する熟睡プログラムは、4週間が目安になっている。ここでは「睡眠制限療法」を紹介する。まず準備段階として、プログラム開始1週間前からプログラム終了まで睡眠日記をつける。じぶんの睡眠を評価し、睡眠効率(実際に眠っている時間)を計算するためだ。たとえば、8時間ベットで過ごし、実際に眠っていた時間が6時間だとすると、睡眠効率は、6/8=0.75%ということになる。プログラムの終了までに目指すのは、睡眠効率85%である。 プログラム第1週 睡眠制限療法では、ベッドにいる時間と実際の睡眠時間と同じにして、起床時間は変えない。その際、4つのルールがある。 1、ベッドにいる時間が5時間を下回らないようにすること。 2、時間を厳密に守ること。 3、日中、横になったり昼寝をしたりしないこと(家族に頼める人は、眠っていたら起こしてもらうようにしよう)。 4、日中の眠気がひどい場合は、車の運転や機械操作を避けること。(182ページ) プログラム第2週 睡眠制限療法の振り返りを行う。睡眠効率が85%まで改善していたら、ご褒美としてベットにいる時間を20分伸ばす。改善していない場合は現状維持を続けるか、ベットにいる時間をさらに20分短くする。 プログラム第3週 ここまでで、睡眠効率が85%まで上がっていたら、ベットにいる時間をさらに20分増やす。しかし、それほどの改善が見られない場合は、ベットにいる時間をさらに20分減らす。ただし、ベットにいる時間が5時間を下回らないように注意が必要だ。 プログラム第4週 睡眠制限療法を継続している場合は、ベットにいる時間が長くなっても、睡眠効率85%を継続していれば、ご褒美としてベットにいる時間をさらに20分増やす。ほとんどの人は、4週間の睡眠制限療法で睡眠問題は解消される。しかし、まだ改善が見られない場合は、最長8週間まで継続することができる。 もうひとつのアプローチである食事では、食物繊維が豊富な発酵食品を食べて、体内の微生物に栄養を与えることが必要になる。その際、体重やウエストサイズ、血糖値などを測定することもすすめている。睡眠を改善することにより、元気になることを実感すれば、やる気もわいてくるからだ。また、寝室や寝具などの環境を整えることも重要になってくる。その際、マインドフルネス、呼吸法などを取り入れることで、さらなる効果が期待できそうだ。 人生のおよそ3分の1を費やすのが睡眠である。まずは、自分の体内時計が早く進む人(朝型)なのか、遅く進む人(夜型)なのかを把握し、その上で、本書が紹介している入眠潜時テスト(スプーン・テスト)(77ページ)や睡眠潜時反復検査(79ページ)で、睡眠が足りているかどうか自分の睡眠状態を把握することからはじめたい。 『4週間で誰でも寝つきがよくなる 最速入眠プログラム』 マイケル・モズリー 著 井上麻衣 訳 CCCメディアハウス (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)