<去年の11月以降、世界的なコンテナ不足が各国の輸送費を押し上げている。海運業者に利益をもたらしたが、結果的に世界の景気回復のブレーキとなりかねない状況だ......> 中国からヨーロッパ向けの海上輸送費の高騰が止まらず、秋と比べても4倍にまで膨れ上がっている。もともとはコンテナ不足に端を発した値上がりだが、そのほかの要因も重なり、荷送人の負担はこれまでになく高まっている。アジアでのコンテナ不足は、海運業者に利益をもたらしたが、世界の景気回復のブレーキとなりかねない状況だ。 コンテナ輸送費の高騰 SCFI上海発海上コンテナ運賃は、2月5日に2884 USD/TEU(TEU=輸送コンテナ1単位の20フィートコンテナ換算)を記録。2020年の同時期が950USD/TEUだったことを思うと、その上昇率は相当なものだ。 参照:container-news.com ストラテジー・ロジスティック誌(2/4)は、中国発ヨーロッパ向けに限って言えば、海上輸送費はこの数か月で4倍になったと報じる。フランス北部のテキスタイル業者が挙げる具体的値段によれば、20フィートコンテナの海上輸送費で2020年7月の1000USドルから4400USドルに、40フィートコンテナで2200USドルから1万ドル以上に上昇したという。 欧米ロックダウンで中国からの輸出が急増 海上輸送費の高騰は、まずコンテナ不足が発端だった。パンデミック第一波時の欧米のロックダウンに、いち早く経済活動を再開した中国からの輸出が急増したことで、コンテナのローテーションが回らず、世界的にコンテナ不足に陥った(ザ・マリティム・エグゼキュティブ誌, 12/29)。また、船員の外国港での隔離義務もコンテナ不足に拍車をかけると同時に、「航空貨物の輸送能力が劇的に低下し、海上輸送に頼るのを余儀なくされた」(ラ・トリビュヌ紙, 1/20)ことも大きい。 加えて、「パンデミックが原因で人々の消費スタイルは変化」した。つまり、これまで旅行やコンサート、外食などに費やしていたお金を、物品購入に充てる消費者が増えたのだ。そうしてその物品の「多くがアジアからの輸入品」(同上)だったわけだ。 ストラテジー・ロジスティック誌は、さらに「中国―米国ルートのほうが、中国―ヨーロッパルートよりも実入りが良いため、海運業者がそちらを好む」という事情にも触れている。 ===== 輸送費だけでない荷送人への負担 荷送人への負担は、コンテナ運賃の急上昇にとどまらない。フランスの荷主協会AUTFは、11月27日に発表したプレスリリースの中で、「価格の高騰とサービスの低下に加えて、海運業者は荷送人に多くの追加料金を課している」と非難している(ストラテジー・ロジスティック誌, 11/30)。 以前は10日前で済んだ予約も、現在は平均50日も前にする必要がある、という。それにもかかわらず、オーバーブッキングが多いため、キャンセルされることも少なくない。 無事に港まで届いた後も、荷送人の受難は終わらない。作業員が不足していることや、感染予防のための手続きが煩雑であることが理由で、コンテナが港に長く滞留され、時間も費用も余分に掛かるのだ。 このコンテナ運賃の価格高騰が各国の輸出増加を阻害し、世界の景気回復のブレーキとなりかねないと危惧されている。 海運業者のひとり勝ち? 11月27日のプレスリリースの中で、フランスの荷主協会AUTFは、海運業者は、新型コロナウイルスを要因とする一連の状況を「故意に長引かせ、経済的な利益を得ている」と批判している。 確かに、世界的にパンデミックを理由とする制限策で、経済的被害を受ける業界が多い中、海運業者は逆に恩恵を受けたかに見える。実際、Investing.com(1/19)によれば、業界最大手のA.P.モラー・マースクの株式は、「11月半ばから(中略)34%上昇した」し、ドイツ大手海運業者ハパックロイドに至っては「同期間中に86%の上昇」、「10月と比べると倍増」という高値に達した。いずれも、1月20日前後をピークとし、その後わずかに下がりはしたが、2月9日現在いまだ1月上旬に匹敵する高値を保っている。 海運業者のひとり勝ち? フランスEDHEC経営大学院のフィリパール教授は、海上輸送費は春節休暇明けに下がるであろうと予測している。そのほかも、パンデミックが収束に向かえば、自然と消費傾向も元に戻り問題は解決するというのが大方の見方だ。 ただし、元通りになるには、荷送人をはじめ影響を受けるサプライチェーンの体力がそこまでもつ必要があるだろう。上述のテキスタイル業者の場合、20フィートコンテナの輸送費が2000USドルを超えるとすでに収益は見込めないという(ストラテジー・ロジスティック誌, 2/4)。すでに4400USドまで値上がりしている現在、どちらを向いても厳しい状況であることは明白だ。