<日本の未婚者と既婚者の収入を比較すると、女性の場合は結婚によって収入が大きく下がる傾向が見られる> 人の一生はいくつかのステージに分けられる。心身の発達に即して言うと、乳幼児期、児童期、思春期、青年期、成人期、老年期というように区分できる。社会的な役割の上では、教育期、仕事期、引退期という大雑把な分け方が一般的だ。段階ごとの節目には、学校入学(卒業)、就職といったイベントが用意され、自分の役割の自覚を促される。 就労を通して社会の維持・存続に与する社会人であることに加え、人間はまた「家庭人」としての顔も持つ。自分の巣を維持し、未来を担う子どもを産み育て、さらには自由の利かなくなった家族をケアすることだ。いわゆる家事・子育て・介護だが、無給であるにもかかわらずかなりの重労働で、社会人としての仕事と両立するのは容易でない。日本では長らく、仕事は男性、家事・家族ケアは女性という性役割分業で社会が築かれてきた。 今では仕事をする女性が増えているが、女性は家庭を持つとバリバリ働くのが難しくなる。25~54歳の有業男女を未婚者と既婚者に分け、年間所得の中央値を年齢層別に出し、折れ線でつないだグラフにすると<図1>のようになる。 男性は未婚者より既婚者の所得が高く、年齢を上がるにつれて差が開いていく。既婚男性の場合、家族の扶養手当なども支給されるためだろう。男性の場合、高収入の人が結婚しやすいということもあるかもしれない。 女性にあっては逆に、未婚者より既婚者の稼ぎが少ない。既婚者の所得は40代前半まで下がっていく。幼子の育児でフルタイム就業が制限されることに加え、配偶者控除の恩恵に預かろうと就業調整をする人がいるためと考えられる。日本は年功賃金と言うが、まともな昇給があるのは既婚男性だけで、昔ながらの性役割分業観が未だに根強いことが、所得の年齢カーブから見て取れる。 ちなみに正社員に限っても、同じようなグラフになる。女性においてはやはり、既婚者の折れ線は未婚者より下にある。データは出せないが、高学歴の女性に絞ったら2本の折れ線の乖離は甚だ大きくなるだろう。結婚の損失というか、それが意識されるようになっていることも、未婚化が進む一因と言えるかもしれない。 ===== 家庭を持った女性の稼ぎが少なくなるのは、どの国でも同じではないかと思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。<表1>は、日本を含む8カ国について、有業男女の平均年収(月収)を比べたものだ。 男性をみると、どの国でも未婚者より既婚者の所得が高い。これは、結婚できる男性にはもともと有利な属性(高学歴、高収入)の人が多いからだろう。 注目すべきは女性で、こちらは国によって傾向が違っている。日本、韓国、ドイツでは「未婚>既婚」だが、他の5カ国では逆になっている。女性が結婚しても、稼ぎが減らない国だ。保育所が充実していて、シッター等のサービスを手軽に使えるためだろう。スウェーデンでは、希望する親に保育所の枠を用意するのは自治体の義務だ。 日本の既婚女性の稼ぎは未婚者の7割にも満たず、その差が際立っている。言葉が適切かどうかは分からないが、結婚の損失が大きい社会だ。これを致し方ないことと諦めてはいけないことは、国際比較のデータで実証される。まずは保育の機械的な一律無償を見直し、捻出した財源で保育士の待遇を改善して、保育の量・質を改善することからではないだろうか。 <資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)、 「Religion IV - ISSP 2018」> =====