<市街地に装甲車を配置するなど抗議デモへの圧力を強める国軍。ミャンマー全国で一触即発の状況が続く> 2月1日に起きた国軍によるクーデターとそれに反対する市民による抗議デモで社会的混乱が続くミャンマー。2月17日、中部の都市マンダレーでは治安当局による発砲事件が発生した。現地のメディアが発砲の様子をインターネット上にアップしたことなどから明らかになった。 ミャンマーのオンラインメディア「ボイス・オブ・ミャンマー」や米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)ビルマ版」が18日午前相次いで伝えたところによると、17日午後10時過ぎ、中部にあるミャンマー第2の都市マンダレーにあるマンダレー鉄道職員の集合住宅地区で発砲音が連続して起きた。 いずれも死傷者などの数字は分かっていないと伝えている。「RFAビルマ版」は「発砲音だけでゴム弾によるものか実弾なのかは判然としない」とも伝えている。 国軍による兵員輸送を拒否した鉄道職員 現地の情報などによると、国軍は17日昼間にマンダレーからミャンマー北部カチン州の州都ミッチーナに向かう兵員輸送の特別列車の運行をマンダレー鉄道局に要請した。ところがクーデターに反対する公務員らによる「不服従運動(CDM)」に賛同する鉄道局職員やその家族、さらに周辺の一般市民までもが集まって線路上で抗議活動を展開。このため国軍はこの日は兵員輸送の断念に追い込まれたという。 このような鉄道局職員らによる「不服従」に怒った国軍や警察が同日夜に鉄道職員の宿舎、住宅が並ぶ一角に武装して進入し、投石や発砲を繰り返した。 ネット上に公開された映像では盾を全面に押し立てて集団となった国軍や警察の一群が進んでくる様子が確認できる。さらに後方から小銃を手にした治安当局者が周囲を警戒しながら投石する様子に交じって、発砲による閃光と銃撃音が何度も繰り返し記録されている。 建物上層部から撮影されたとみられる俯瞰した映像と共に、治安部隊の進行方向左側の地上の物陰から密かに撮影されたとみられる映像も公開されている。 国軍が手を焼くCDMの拡大 クーデターから半月が経過して国軍側は政権基盤を着々と固めつつあり、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相ら前政権幹部の拘束もいまだに続いている。 一方で一般市民や学生などによる反クーデターの抗議デモは、中心都市ヤンゴンや首都ネピドーをはじめ、一部の国軍の駐屯地がある地方を除いてほぼ全国の都市に拡大しているという。 街頭でのデモに加えて、17日からはヤンゴンなどの主要道路に自動車やバスが放置されて治安部隊の移動を阻害する動きも出てきたり、行きかう車両などがクラックションを一斉に鳴らしたりして「反対の意思表示」を示すなど気運は盛り上がっている。 ===== こうした国民の反発に加えて国軍を苛立たせているのがCDMという公務員の職務不服従の動きの拡大だ。 ヤンゴン市内では主な民間銀行は銀行員が職場を放棄したため銀行業務が滞っているほか、中央官庁やその出先機関でも公務員が「不服従運動」に共鳴して各種公的業務の停滞が顕著になっているという。 一方で、2月13日にはヤンゴン市内南部にある血液センターの看護師寮が治安部隊の急襲を受け、看護師らが拘束される事件も起きている。これは看護師らがCDMに参加していたため当局の怒りをかったといわれている。 この看護師寮急襲も付近の住民が異変に気付いて自宅などで鍋釜を打ち鳴らす抗議活動"タンボウンティー"をしたことで発覚したという。 昼は市民、夜は治安部隊が「主役」 最近のミャンマーでは明るいうちは市民のデモや抗議活動が市内各所で展開され、公務員らもCDMに賛同して職場放棄などで参加している。しかし夜間になると様相は一変し、治安部隊がデモの主催者、反対運動指導者、CDM参加公務員などを事情聴取や身柄の拘束をし、さらに公務員宿舎、一般住民の集合住宅などへの捜索を繰り返す状況が続いている。 こうした事態に住民側も共同で夜警を配置したり、何か異変があった場合には"タンボウンティー"で動員をかけたりするなどの自衛策に乗り出しているという。もっとも銃器で完全武装した治安部隊に対しては、住民らの抵抗にもおのずと限界があるのが事実である。 今後は、現在拡大を続けているクーデター反対の抵抗運動を治安部隊がいつ武力による大規模な排除に乗り出すか、その結果として流血の事態となるかが焦点となるだろう。 [執筆者] 大塚智彦(フリージャーナリスト) 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など ===== 国軍による鉄道職員への発砲 ミャンマー国軍や警察が17日夜、鉄道職員の宿舎、住宅が並ぶ一角に武装して進入し、投石や発砲を繰り返した。 RFA Burmese / YouTube