<差別に対する責任ある決定と評価の声がある一方で本を「抹殺する」のはおかしいと反論サイト開設> 米絵本作家ドクター・スースの作品のうち6作について、人種差別的な描写があるとして絶版が発表されたことを受けて、3月3日に「Banned Seuss(禁止されたスース)」というウェブサイトが開設された。 「本を抹殺する行為は常軌を逸している」と同ウェブサイトは主張し、こう呼びかけた。「私たちの人間性を守るために立ち上がろう」 ウェブサイト「禁止されたスース」では現在、絶版となった6作品のうちのひとつである『マルベリーどおりのふしぎなできごと』の特集を組んでおり、また同サイトには「全てのアメリカ人の市民権と自由のために尽力する」ことを掲げる超党派の組織「不寛容と人種差別に反対する財団」へのリンクが貼られている。 この財団はウェブサイト上で、「アメリカでは、大学や企業、政府やメディア、さらには子どもたちの通う学校に至るまでの各種機関が、ひねくれた、不寛容な原理主義を押しつけるようになりつつある。この原理主義は私たちに、お互いを肌の色やジェンダー、性的指向のような、変更不可能な特徴に基づいて評価するよう求めるものだ」と主張。「そういう考え方は対立を生み、人間であることの意味を損なわせる」と続けている。 学術誌に発表の論文が人種差別を指摘 ドクター・スース作品の権利を管理している会社ドクター・スース・エンタープライズは3月2日、AP通信に対して、ドクター・スースの作品の一部に人種差別的な描写があるとして、出版を停止することに決めたことを明らかにした。 同社は声明の中で、「これらの本は有害かつ間違った方法で人々を描いている」と説明し、こう続けた。「今回の出版停止は、弊社として全てのコミュニティーや家族を支援する作品を提供していくための、より幅広い計画の一部にすぎない」 絶版が決まったのは、『マルベリーどおりのふしぎなできごと』、『ぼくがサーカスやったなら』、『McElligot's Pool』、『On Beyond Zebra!』、『おばけたまごのいりたまご』と『The Cat's Quizzer』の6作品。2日はアメリカで「読書の日」に制定されており、またスースの誕生日でもある。 ドクター・スースは本名をセオドア・スース・ガイゼルといい、最も有名な絵本作家のひとりだ。『キャット・イン・ザ・ハットーぼうしをかぶったへんなねこ』、『緑のたまごとハム』や『グリンチ』などの人気作品は、今も世界で読み継がれている。 だが2019年に学術誌「青少年文学における多様性研究」に発表された論文が、スースの作品には人種差別的、反ユダヤ主義的な描写があると指摘した。 ===== この研究ではスースが発表した50作品を検証。その結果、作品に登場する有色人種の人物45人のうち43人に「東洋人の定義に合致する特徴」があった、またはアジアに関する偏見や侮辱にあたる特徴があった。 また論文は、検証した作品に登場する「アフリカ系」の人物2人についても、反黒人的な特徴があったと指摘。反黒人的な描写は、黒人に対する差別、反対や敵意にあたると説明している。 ドクター・スースの6作品の絶版が決定されたことについて、世論の評価は割れている。ドナルド・トランプ前米大統領の長男であるドナルド・トランプJr.は、2日にFOXニュースのトーク番組「FOX&フレンズ」に出演した際に、これらの作品の出版取りやめは「正気とは思えない」と批判。一方で深夜トーク番組のホストを務めるスティーブン・コルベアは同日、絶版は「責任ある」決定だったと評価した。 =====