<2021年に入って米空母打撃群の南シナ海派遣が増えていることについて、専門家が中国政府に警戒を促した> 米軍が南シナ海に頻繁に船舶や航空機を派遣していることは、ジョー・バイデン米政権の「不安」大きさと、中国軍によるいかなる「大きな動き」も阻止しようという意志の表れだ――中国の海洋専門家が、こう指摘した。 北京大学の胡波教授は3月1日に発行された学術誌「World Affairs」に発表した論説の中で、米海軍の空母打撃群が定期的に中国沖に表れるようになる日も近いかもしれないと、中国政府の政策立案者たちに警告を発した。 「アメリカは空母の配備パターンを変えてきている。南シナ海と周辺海域で、中国に狙いを定めた軍事演習を強化したいと考えているからだ」と胡は指摘した。「万が一の事態に備えて、(中国との)争いに勝てる能力をつけようという計画だ」 北京大学のシンクタンク「海洋戦略研究センター」のディレクターも務める胡はまた、南シナ海への米軍の配置は、アメリカが中国に対する抑止力を強化し、人民解放軍がいかなる「大きな動き」を取るのも阻止する上でも役立つとも指摘した。 米軍偵察機の飛来が増加 胡は、南シナ海における米軍の最近の動きは「新政権の不安心理に関係がある可能性が高い」と分析。2021年に入ってからセオドア・ルーズベルト空母打撃群が3週間のうちに2回、同海域に派遣されたことや、2月にセオドア・ルーズベルト空母打撃群とニミッツ空母打撃群が合同訓練を実施したことが、それを裏づけていると述べた。「アメリカの空母が南シナ海に入っても、もうトップニュースにもならない」 胡は北京で米軍など諸外国の軍による中国周辺での動きを調べるシンクタンク「南海戦略態勢感知計画(SCSPI)」の主任も務めている。 SCSPIは3月2日付の報告書の中で、2月には米軍の偵察機が75回、南シナ海上空に飛来したと報告。この「増加」と時期を同じくして、空母打撃群の軍事演習や、米艦船のその他のミッションが実行されていると指摘した。 米海軍のミッションは以前ほど定期的には行われなくなっているが、戦闘への即応性を目的とした配備の回数は増えていると、胡は論説記事の中で分析。米軍の艦船は定期的にフィリピン海を航行し、中国の「接近阻止・領域拒否(できるだけ遠方で米軍を撃破する)」戦略に対抗して、南シナ海や台湾海峡のような「紛争地域」での不測の事態に介入するための演習を行っていると述べた。 ===== 胡は、アメリカが力を誇示する上で鍵を握るのが11隻の空母であり、今のところこれと肩を並べるレベルの空母を保有している国はほかにないと説明。だが米政府がこれらの空母を酷使していることが今後の「不安材料」になるだろうと指摘した。 彼は2020年11月に米海軍協会が行った分析を引用し、米軍の空母が2020年1月から10月31日までの間に海上で過ごした日数は、延べ855日にのぼると述べた。2019年の1年間の延べ日数よりも258日多い。 現在の傾向が続けば、米軍による南シナ海への空母派遣は「大幅に増えて、年に数十回に及ぶ可能性がある」と胡は予想する。「中国と中国軍は今後、西太平洋で日常的に、アメリカの2つの空母打撃群に対処する備えをしなければならないかもしれない」と胡は書き、グアムにある米軍基地は、アメリカが力を誇示する上での「戦略的な支点」だと分析した。 また中国政府は今後、南シナ海に頻繁に艦船が配備される事態への対抗策を練る必要があるだろうと結論づけた。 米政府「中国は今世紀最大の地政学上の課題」 3月3日には、中国海軍の退役将校で軍事評論家のSong Xiaojunが中国中央電視台(CCTV)の番組「ディフェンス・レビュー」の中で、アメリカが南シナ海と台湾海峡に艦船を派遣しているのは「『中国脅威論』を増幅」させて「同盟諸国を味方に引き入れる」ためだと述べた。 中国との「長期にわたる戦略的な戦争」に備えるにあたり、バイデン米大統領は数カ月をかけて、中国のどの脅威に優先的に対処するかを決断する必要があるだろうと彼は同番組の中で分析した。 この番組が放送された数時間後、アントニー・ブリンケン米国務長官はバイデン政権の外交政策について演説を行い、中国をアメリカにとって「今世紀最大の地政学上の課題」と称した。 ホワイトハウスは3日、外交・軍事政策の指針となる23ページの暫定版国家安全保障戦略ガイドラインを発表。この中で中国について、「安定的で開かれた国際システムに持続的な挑戦をする経済力、外交力、軍事力と技術力を備えている可能性のある唯一の競合国」と言及した。