<長い間、医師たちのアドバイスは「食べる量を減らして、運動量を増やそう」だったが、それではダイエットは成功しない。「トロント最高の医師」が代わりに推奨するのは、ファスティング(断食)だ> どうしたら効果的に減量でき、それを長期間維持できるか。健康なダイエットの秘訣とは何か。 世界中で多くの人を悩ませるこの問題に、長い間、医師たちが述べてきた一般的なアドバイスは「食べる量を減らして、運動量を増やそう」だった。つまり、カロリー制限だ。 しかし、カロリー制限は決して有効ではないことが、数多くの科学的研究から既に証明されていると、「トロント最高の医師」とも呼ばれる医学博士のジェイソン・ファンは言う。 ファンが代わりに推奨するのは、ファスティング(断食)だ。その効果は、体重や血液検査の結果だけにとどまらないらしい。 このたび、ファンは臨床研究者のメーガン・ラモス、コンサルタントのイヴ・メイヤー(両者とも肥満に悩んできた当事者でもある)と組んで、『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』(多賀谷正子・訳、CCCメディアハウス)を出版。原書は米アマゾンで1500以上のレビューが付き、平均4.6と、読者から絶大な支持を得てベストセラーとなっている。 「読んですぐに実践できる、ファスティングの決定版」と謳う本書は、ファスティングとは何かに始まり、その準備、実践、うまく続ける秘訣までをまとめた1冊。 ここでは本書から一部を抜粋し、3回に分けて掲載。まずは、著者の3人がそれぞれ本書を出版する理由を記した「はじめに」から、ファン医師のパートを抜粋する。 ◇ ◇ ◇ 〈ジェイソン・ファン〉 私は腎臓専門医、つまり腎臓の疾患を診るスペシャリストだ。メディカルスクールを卒業したあとトロント大学で内科の研修をし、その後カリフォルニア大学ロサンゼルス校で専門医の研修を行った。 これまで20年間、来る日も来る日も腎臓の治療にあたり、生命の維持に不可欠なこの臓器の機能を正常にするために働いてきた。適切な薬を処方し、適切な治療や手術を勧め、腎臓結石、糖尿病、がん、炎症をはじめ、腎不全にともなう問題を抱える人たちを救うための、正しい手順を踏んできた。 だから、いま私が肥満の治療を行い、患者が薬を飲まなくてすむように、手術を受けなくてすむように、そして透析を受けなくてすむようにするための方法を説いているのは、少し不思議な気がする。いま私が自分の使命だと思っていることは、私のような腎臓専門医の仕事をなくすことなのだから。 なぜ、そんなことになったのかといえば、10年ほど前、ある厄介な問題に気づいたからだ。昔は、腎臓病を引き起こす最大の原因は高血圧で、その次が2型糖尿病だった。それが、検査で高血圧の診断が適切に行われ、血圧の薬が使われるようになると、高血圧によって引き起こされる疾患は減少し、腎臓病の主な原因は2型糖尿病になった。 ===== こうした患者に投薬治療やそのほかの技術的な治療を行っても、病状がよくなることがないのは明らかだった。私は次第に、投薬や透析などの治療を行ったところで、この疾患の根本原因に対処しないかぎり、病状が大きく改善することは望めないのではないかと思うようになっていった。 体重が多すぎると2型糖尿病を発症する。ということは、太りすぎていることが腎臓病の根本原因であることは明らかだ。だとすると、唯一の論理的な解決策は、患者が減量するのを手助けすることだ。 でも、どうしたら効果的に減量でき、それを長期間維持できるだろうか。減量の目標を最もうまく達成できて、健康になれる方法はなんだろう。 何十年ものあいだ、医師が述べてきた一般的なアドバイスは「食べる量を減らして運動量を増やそう」というものだった。けれども、ほとんどの人には効果がなかったし、数多くの科学的な研究でも(これから本書で述べていく)、カロリー制限が有効ではないことが証明されてきた。 私を含めた誰もが、カロリー制限ダイエットに挑戦して失敗した経験があるはずだ。2キロだけやせたいという人も、93キロやせたいという人も、みな同じだ。 あいにく、私はメディカルスクールで栄養のことや減量については、ほとんど学んでこなかった。そこで、そのふたつを理解するという仕事を自分に課すことにした。私の患者の健康を左右する最も大切な要素は、まず間違いなく体重といっていい。だから、この点に関するエキスパートにならなければいけないと思った。 でも、新しいことを学ぶよりも、自分の頭に染みついた間違ったパラダイムを消し去ることのほうがずっと難しい。自分が知っていると思い込んでいた――メディカルスクールで学んだ――減量についての知識のほとんどが、いまでは完全に間違いであることが証明されている。 カロリー制限がその一例だ。メディカルスクールでは、体重を落とすには消費するカロリーよりも少ないカロリーの食事をすればいいだけだと教わった。「摂取カロリーを消費カロリーより少なくすれば太らない」という論理だ。 だが、この方法で体重を減らすことはできないし、そう述べているのは私だけではない。カロリー制限法が成功する確率は、ざっくり言って1%ほど。私たちはいままでにないほどカロリーに気をつかっているというのに、肥満はいまや世界的な問題になってしまった。 減量が健康にとって、とくに腎臓疾患にとって大切であることから、私はカロリー制限法を科学的な側面から検証した。すると驚いたことに、カロリー制限法には、科学的に見た利点はいっさいないことがわかったのである。 ===== カロリーそのものを利用する体の生理的経路はない。カロリーを減らせば体重が減ることを証明する研究もない。それどころか、どの研究でも、カロリーを減らしても効果はないとされている。 カロリーを減らしても意味がないとわかっているならば、なぜ医師たちはこの方法を擁護していたのか。どうにも理解に苦しむ。 そこで私は、もっと減量に効果のある方法を探そうと決意した。そして、長らく忘れられていた、昔ながらの有効な方法を見つけたのだ。 私はすぐに、砂糖と精製された穀物の摂取量を減らすことに加え、ファスティング(断食)を実践することを患者に勧めた。このアドバイスが転機をもたらしてくれた。患者は減量に成功し、健康的な習慣を手に入れ、慢性的な問題の多くが改善した。 ファスティングの効果は、体重や血液検査の結果だけにとどまらない。中毒、羞恥心、罪悪感など、減量や不健康な生活にまつわるさまざまな精神的、感情的な問題にも効果がある。医学的な問題もさることながら、こうした苦悩に対処するのも大切なことだ。 そうはいっても、私は減量の精神的、感情的な側面について述べるのに最適な人物ではない。高校生のころからほとんど体重は変わっていないし、つい最近まで、30年間同じズボンをはいていたくらいだ。それはいくらなんでも恥ずかしいといって、妻が捨ててしまったが。 もちろん、祝祭日や休暇のあとは1~2キロ増えてしまうこともあるが、仕事が忙しくなるとまた減る。だから、減量するのは大変なことだと頭では理解していても、自分の経験と照らし合わせて考えることができない。 その点、聡明で歯切れのよいイヴ・メイヤーなら、自らの体験をもとにした話をしてくれるだろうし、私と長年一緒に働いてきたメーガン・ラモスは、個人的な体験からも、専門家の見地からも、肥満についてよく知っている。だから、3人でこの本を書くことで、ファスティングを取り入れたライフスタイルにすれば、増えた体重を減らすことも、慢性疾患をよくすることもできるということを、読者のみなさんに伝えられるのではないかと思っている。 そのために、私たちはこの本を書いていく。あなたにそれを伝えるため。学んでもらうため。笑ったり泣いたりしてもらうため。コミュニティをつくってもらうため。さまざまな神話を見直して、その欠点を明らかにするため。 なにより、誰もが手なづけるのに苦労している"肥満"という獣のことをあなたに理解してもらうために、3人でこの本を書いていこうと思う。 『トロント最高の医師が教える 世界最強のファスティング』 ジェイソン・ファン、イヴ・メイヤー、メーガン・ラモス 著 多賀谷正子 訳 CCCメディアハウス (※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)