<反中意識が高まる韓国で、時代劇に中国テイストが混じったことで大炎上に──> 中韓のネットユーザーたちの間で昨年末から勃発したキムチ論争の余波が続いている。 フォロワー数1400万人を超える中国の人気ユーチューバー李子柒氏が、自身のチャンネルで「中国の伝統料理」というハッシュタグとともにキムチを紹介したことをきっかけに、韓国ユーチューバーHamzy氏も負けじとキムチ作りの動画を投稿して反撃した。 ところがこの件でHamzy氏は、中国での活動をマネジメントしていた中国の芸能事務所から契約を打ち切られてしまうなど、中韓の対立が勃発した。 実はこのような対立が、今韓国のエンタメ業界にも飛び火して炎上としている。 韓国の地上波放送局SBSが春の話題作として放送開始した時代劇『朝鮮駆魔師』は、わずか2話を放送しただけで中韓対立の煽りを受けて打ち切りとなってしまった。 オンエア前からトラブル続き 去年の11月には、出演者ひとりのコロナ陽性が発覚し撮影が中断。その1カ月後には、主演俳優が撮影中に落馬し骨折するなど、放送開始前から不運に見舞われた作品ではあったが、オンエア開始後も、朝鮮王朝の第3代国王太宗を殺人鬼のように描いて歴史歪曲が指摘されるなど悪評が立った。 さらに、ドラマに登場する一部のセットや料理、伝統衣装までも中国風に表現されていた点が問題視され、放送打ち切りの大きな理由となった。朝鮮時代の韓国を舞台に繰り広げられる物語だったが、あるエピソードでは外国人神父に振る舞われるご馳走に、中国の代表的なお菓子である月餅や中国式肉まん、ピータンなどがテーブルいっぱいに並んだ。また、妓生と呼ばれる当時の芸者たちが暮らす建物も、なぜか中国風のセットに作られており、役者が韓国語でセリフをしゃべっていないシーンでは、まるで中国ドラマかと疑ってしまう場面もあった。 SF作品などでは、様々な国の文化からインスピレーションを受け、新たなスタイルを創造することはよくあるものの、それを時代劇でそれをやってしまったことは驚きである。 視聴者からの苦情、さらにスポンサーの撤退 放送直後、作品に違和感を覚えた視聴者からの苦情の電話が相次いだ。さらに、韓国大統領府のウェブサイトの国民請願掲示場には「放送を中止して欲しい」という投稿も寄せられ、視聴者を中心に多くのオンライン署名が集まったという。 世論の声が強まるにつれ、番組スポンサー各社も次々と広告契約中断を発表した。この事態にSBSは、先月26日「すでに制作会社には製作費を支払っている状態である」「80%は撮影終了していた」ことを明らかにし、謝罪と共に「地上波放送としての重い責任感をもって放送を打ち切りにする」と発表した。 また、31日には韓国放送通信審議委員会がオンラインにて行った記者懇談会では『朝鮮駆魔師』についての苦情は5149件も寄せられた」とし、「放送打ち切りとは関係なく、調査を進める」という強い姿勢を表明して注目を集めた。 ===== 『朝鮮駆魔師』の脚本家パク・ケオクの前作『哲仁王后』にも歴史わい曲の疑惑が...... Yonhapnews / YouTube 同じ脚本家の前回作品もやり玉に この騒動を受け、これまで放送されたドラマ内での表現も再びピックアップされ、オンライン上で炎上する事態となっている。 tvNで2月まで放送された時代劇『哲仁王后』は、中国のウェブ小説が原作のドラマ化だったが、第2話でユネスコの「世界の記憶(Memory of the world)計画」にも登録された歴史書「朝鮮王朝実録」を侮辱するセリフが登場し大炎上してしまった。 さらには、この原作を書いたWEB小説家・鲜橙の過去作『和亲公主』には、韓国に否定的な表現が書かれており作者の嫌韓も噂された。なにより脚本を担当したのが『朝鮮駆魔師』と同じパク・ケオク氏ということで、批判の目が向けられたようだ。 ドラマ内での中韓に関した表現が炎上するのは何も韓国ドラマだけではない。兵役問題で韓国入国を拒否された韓国人俳優ユ・スンジュンが出演し、話題を集めた中国の時代劇『成化十四年』は、放送が開始されるとすぐに韓国内で非難が集中した。 冒頭に紹介したドラマ『朝鮮駆魔師』とは逆パターンで、こちらでは韓国の伝統衣装「韓服」が、まるで中国の物であるかのように着用されていたのだ。ネット上では、これは文化の盗用であると多くの人々が声を上げ炎上した。 韓国ドラマで中国製のビビンパ? また、時代劇以外に現代劇でも新たな中韓問題が勃発中だ。中国資本の作品が増え、劇中に中国企業の商品が不自然に登場するPPL広告(Product Placement:スポンサー商品を小道具として画面に映し出す広告手法)が多発し、批判を集めている。 TV放送開始と同時にNetflixにて世界配信中の話題作『ヴィンチェンツォ』では、3月14日放送分で突然中国製のビビンバが登場し、主人公たちが食べるシーンがあった。韓国料理のビビンパだが、なぜか出てきたのはプラスチック製パッケージに中国語が全面に書かれたインスタント食品で、一見中国料理と見間違いそうな場面だった。 文化のビビンパは要らない 他にも、韓国の大人気WEB漫画原作ドラマ『女神降臨』では、主人公たちがコンビニの前のベンチで食べるインスタント食品が中国製品であったり、バスを待つ停留所の看板や、お店に貼られているポスターが中国語で書かれてあったりと、そこだけを切り取った画面を見れば韓国というよりも、まるで中国ドラマのような印象を受ける。 作品の質を上げるためには、お金の問題は切っても切れない。協賛スポンサーのPPL商品をいかに自然に劇中に取り込めるかは脚本家と演出家の力にかかってくるが、資本のグローバル化が進む昨今では、外国商品が登場するようになってその難しさは増しているように感じる。視聴者がストーリーよりもPPLの違和感が気になってしまい画面に向かって思わずツッコミを入れてしまうようでは、元も子もないのだ。 筆者は現在、アメリカに住んでいるが、ここでは日中韓など区別されることなく「アジア人」とひとくくりにされることが多い。アジア風のインテリアやアート作品を見ていても、全ての文化がごっちゃにされて「何だこれは?」という出来上がりにがっかりしてしまう事もよくある。 今、世界から注目を集める韓国コンテンツがアジア文化をごちゃ混ぜにしてしまっては、アジア以外の人たちへ文化の混乱を届けてしまう。それぞれの文化が素晴らしいのだから、無理矢理ごちゃ混ぜにして文化のビビンパにする必要はない。 作品を作るうえで、全ては「良い作品を生み出すこと」が一番の根底にあるべきである。そのためにお金がある国が出資をし、有能な人材が国を越えて協力し合い素晴らしい作品を世に誕生させることには大賛成だ。しかし、今回取り上げたドラマはそれぞれの文化について注意深く取り扱わなかったために、むしろ裏目となって対立を生んでしまっている。文化の異なる人びとが集まって本当に「良い作品を作る」という共通の目標に向かって進んでいるのか冷静に見つめなおす必要があるのではないだろうか。 ===== 朝鮮王朝時代のエクソシストを描こうとした意欲作だったが 打ち切りとなったドラマ『朝鮮駆魔師』は、史実にはないゾンビとエクソシストの対決を描くという独創的な内容を時代劇に組み込む"フュージョン時代劇"として企画されたが......。 YTN News / YouTube 『愛の不時着』のキム・ジョンヒョンが主演した『哲仁王后』 『愛の不時着』のク・スンジュン役のキム・ジョンヒョンが主演した『哲仁王后』にも歴史わい曲の疑惑が...... Yonhapnews / YouTube