<人気掲示板サイトに投稿されたブラックホール衝突のシミュレーション動画が大ヒット> 3月29日、ソーシャルニュースサイト、レディットに「1セント銅貨サイズのブラックホールが地球と接触したときに起きる現象」をシミュレーションしたという動画が投稿された。 その後、この動画は偽物で、ブラックホールとは何の関係もなく、破壊される地球をCGIで描いたストック映像であることが判明した。だがすでにこの投稿には5000以上のコメントがつき、6万以上の高評価が集まっていた。その映像はこちら。 1セント銅貨大のブラックホールが地球に生じたら、確かに地球は破壊されすべての生命が全滅するだろう。だがそのプロセスはおそらく、上の映像とは違ったものになりそうだ。 1セント銅貨大のブラックホールは、後で説明する理由から、地球とほぼ同じ質量を持つ。 スタンフォード大学の素粒子物理学者フランク・ハイルは以前、地球の核に1セント銅貨大のブラックホールが現れたときに起きる現象について見解を発表したことがある。ハイルの意見では、地球は破壊されるが、その過程は単純ではない。地球は内側に潰れるだけでなく、外向きの圧力と、地球の自転の力も働く。 ハイルによれば、ブラックホールが破壊的なのは、その質量だけでなく、激しい熱と放射線を放出するからだ。それによって、地球の一部はブラックホールに吸い込まれることなく、宇宙に吹き飛ばされる可能性があるという。 円盤状になって回転 知識共有プラットフォームQuoraで、ハイルはこう解説した。「ブラックホールに近いところにある物質がブラックホールに向かって落下を始めると、物質は非常に高い密度に圧縮され、それに伴って高熱が発生し、温度が上がる。高温になったことによってガンマ線やX線、その他放射線が放出され、ブラックホールに吸い込まれる他の物質を加熱する」 「その結果、地球の外側の層に強い外向きの圧力が生じ、最初はその落下速度が遅くなり、最後は外に吹き飛ぶ」 一方、ブラックホールに向かって落下する内側の部分には地球の自転の力が残っており、外側が小さくなったことで回転速度が増していく、とハイルは説明する。 次に、ブラックホールに落ちていく塊はスピードを上げながらブラックホールの周りを回り始める。こうして地球に残った物質はすべて、ブラックホールの周りを回り続けることになる。 「このときの回転の運動量は、物体のブラックホールへの落下を遅らせる。その結果、ブラックホールの周囲に降着円盤(重い天体の周囲を公転しながら落下する物質によって形成される円盤状の構造)のようなものが形成される」 ===== 地球の回転や外向きの圧力を考慮に入れなければ、地球全体が約10〜15分でブラックホールに飲み込まれるはずだが、実際に起きることは、もっと複雑なのだ。 地球にブラックホールに呑み込まれることは、理論的にはありうる。だが、地球上に1セント銅貨サイズのブラックホールを作ることは実際には不可能だ。そのためには、膨大な量の物質と、それをごく小さなものに凝縮する方法がなければならない。さらに、これまで観測されたなかで地球に最も近いブラックホールは、1000光年離れている。 膨大な質量が、非常に小さな空間の一点に詰め込まれているブラックホールは、信じられないほど破壊的であると考えられている。宇宙に存在するブラックホールは、「事象の地平線」と呼ばれる球体に囲まれ、光をはじめ、この球体に入り込んだ物質は決して外に出ることはできない。 ブラックホールの大きさは、その事象の地平線の半径の観点から考えることができる。これは重力半径または、1世紀以上前にアインシュタインの方程式から、ブラックホールの存在を示唆するアイデアを導き出したドイツの天文学者カール・シュワルツシルトにちなんで「シュワルツシルト半径」と呼ばれている。 極小から超大質量まで シュワルツシルト半径があるのは、ブラックホールだけではない。惑星や月、人間のような質量を持つ物体には、シュワルツシルト半径が存在する。 物理的半径がシュワルツシルト半径よりも小さくなると、物体はブラックホールになる。地球のシュワルツシルト半径は直径約8.7ミリ(直径約17.5ミリ)と考えられている。 アメリカの1セント銅貨は直径約19ミリなので、もし誰かが地球を米1セント銅貨より少し小さく縮めると、地球はブラックホールと化す。つまり、1セント銅貨サイズのブラックホールが存在するとすれば、その質量は地球よりも少し大きい。 一方、大きさが途方もないブラックホールも存在し、「超大質量ブラックホール(SLABS)」と呼ばれている。宇宙最大のブラックホールとされるTON 618の質量は、太陽の660億倍だ。 ===== 【動画】1セント硬貨大のブラックホールが地球に衝突したら(想像図)