<日米にとっての台湾の戦略的重要性が増したのは成果だが、同時に台湾は米中の争いに巻き込まれてもいる> 台湾海峡はいわば「火薬庫」で、世界戦争を引き起こしかねない危うさを秘めている、とある軍事専門家が警告した。発言が行われたのは、4月6日に開催されたパネルディスカッションでのこと。台湾側の視点から、アメリカの外交政策を議論する催しだった。 中国海軍の空母「遼寧」が率いるタスクグループ(任務群)が現在、台湾の東側にあたる海域で戦闘演習を実施している。中国側はこれを「通常の」演習だとしているが、米軍は太平洋で実施されているこの演習を注視しており、米海軍の「セオドア・ルーズベルト」空母打撃軍が南シナ海入りしている。 緊張感が高まり続ける中、アメリカと中国、台湾の3者がいずれも後に退けない「悪循環」に入り込んだことを示す複数の兆候がある。こう指摘するのは、台湾北部の桃園市にある国防大学の教授で、中共軍事事務研究所の所長を務める馬振坤だ。 台湾の国営通信社である中央通訊社によると、馬が上記の発言をしたのは、台北市に本拠を置くシンクタンク「プロスペクト・ファウンデーション(遠景基金会)」主催による、4人の専門家によるパネルディスカッションの席上だった。同シンクタンクは中台関係の研究が専門で、台湾政府にも助言を行う立場にある。 狭まる平和的解決の道 馬は、台湾海峡の現状は第1次大戦前のバルカン半島に近く、「平和のための窓」、つまり武力行使によらない中台問題の解決可能性はかなり狭まっていると指摘した。 「どの国も自ら戦争を引き起こそうという意図はないのだが、台湾海峡と周辺地域には戦争を引き起こす『火薬樽』がばらまかれている」というのだ。 馬がこの発言をした日には、中国人民解放軍の軍用機4機が台湾の防空識別圏(ADIZ、各国が国際法の定めによらず、防空目的で自主的に設定する空域)に侵入した。前日の5日には、空母遼寧と5隻の戦艦からなる部隊が西太平洋入りする一方で、中国人民解放軍の戦闘機と哨戒機、計10機が台湾のADIZに入ったと台湾国防部が発表した。 中国軍の戦闘機は3月、合計18日間にわたって台湾の防空レーダーの監視圏内に入り、4月に入ってからも4日連続で侵入していると、台湾国防部のウェブサイトは伝えている。 6日のパネルディスカッションは、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官によるアジアおよびヨーロッパ歴訪をテーマにしたもので、台北市にある国立政治大学(NCCU)の李世暉教授も参加した。 ブリンケンによる東京とソウル、そして欧州連合(EU)本部のあるブリュッセル歴訪は、アメリカの政権交代後初となる外交トップの訪問であり、アメリカと同盟国の互恵関係を再び確立するというジョー・バイデン大統領の外交戦略を示すものだと李は指摘した。 ===== 加えて、バイデン政権は中国に対抗することを優先課題とし、さらに人権および安全保障という視点からこの問題に取り組む姿勢を見せたことで、アメリカと中国の明確な違いを強調し、アジアの地域秩序に対する中国の脅威を浮き彫りにして見せた、と李は述べた。 国立政治大学の日本研究プログラムに所属する李は、日米政府間の議論においても、台湾の戦略的重要性は議題として浮上している、と指摘した。国際舞台において台湾の存在感が増していることについて、李は「外交上の画期的成果」と評価しながらも、台湾は米中の覇権争いに引きずり込まれているとも指摘した。 台湾は、その技術的進歩や人権問題での成果については支持を得ているが、今後待ち受けている戦略的課題に対処するためには、機敏かつ柔軟に行動する必要がある、と李は結論づけた。 中国政府からの警告が続く中で、日本の菅義偉首相は4日、この地域における台湾の平和と安定の重要性を強調した。また、バイデンと共に、中台間の緊張緩和に向けて取り組んでいきたいとの意向を示した。 首相はテレビ番組のインタビューで、「日米が連携し、抑止力を維持する中で、台湾と中国が問題を平和的に解決できる状況を作っていくことが大事だ」と述べた。 ホワイトハウスによると、菅とバイデンは4月16日にワシントンDCで日米首脳会談を行う予定だ。 バイデン政権にとってこの会談は、対面としては初の外国首脳との会談となる。報道によれば、会談後に発表される共同宣言において、両首脳は共通の懸念事項として、中台間の平和の問題を盛り込む予定だという。 (翻訳:ガリレオ)