<トランプが大幅に引き下げた法人税を取り戻し、巨額インフラ投資計画で雇用と中間層を救う計画だが、甘い汁を吸ってきた企業の反対も強い> ジョー・バイデン米大統領は、2兆ドル規模のインフラ投資計画の財源を賄うために、法人税率の引き上げを提案。アメリカの複数の大手企業CEOが、これを全面的に支持すると表明している。複数のホワイトハウス関係者はこの法人税率の引き上げについて、2017年に共和党政権が実施した富裕層と大企業優遇の減税措置を撤回するものだと言っているが、共和党とワシントンの企業ロビイストたちは増税に反対している。 バイデンの増税案は、現行21%の法人税率を28%に引き上げるというもの。これによって増える税収およそ8500億ドルをインフラ投資計画の財源に充てる計画で、ドナルド・トランプ前大統領が法人税率を35%から21%に引き下げた税制改革法案との「中間点」を模索した結果だ。 バイデンが「フォーチュン500企業のうち、2020年に連邦法人所得税を1セントも払わなかった91社のひとつ」と批判していたアマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は、バイデンの増税案を支持すると表明。配車サービス企業リフトのジョン・ジマー共同創業者兼社長も4月7日、CNNに対して、法人税率の引き上げを支持すると述べた。 今週ロイターの取材に応じた12人超の企業トップやホワイトハウス関係者は、バイデンが法人税率の25%の引き上げで妥協することを期待していると語った。バイデン自身、7日にホワイトハウスで行った演説の中で「議論を歓迎する。妥協は避けられない。修正があるのは間違いない」と言っていた。 25%で妥協となるか 税率25%にすれば増収分は5000億ドル未満に減るが、ウェストバージニア州選出のジョー・マンチン上院議員をはじめとする民主党穏健派は、25%への引き上げならば支持できると言っており、バイデンのインフラ法案が議会で可決される可能性も高い。アメリカの法人税率は1960年時点で50%を超えていたが、その後の減税で今はその半分以下の水準となっている。 大手エネルギー企業のロビイストはロイター通信に対して、「歓迎はしないが、(引き上げ後の法人税率が)25%になることを期待している」として、「それが達成されればよしとする」と述べた。 バイデンに加えてホワイトハウスの複数の側近も、2017年の共和党政権による法人税率の減税措置を非難。スティーブン・ムニューシン財務長官(当時)の主張とは異なり、一度も「公約された労働者への還元効果はなかった」と指摘している。バイデンのインフラ計画には、富裕層が税の徴収から逃れることがないように、内国歳入庁(IRS)の執行能力を強化する案も含まれている。 ===== トランプの減税措置は国際税制の改正と米企業の国内回帰につながったものの、米企業のうち、減税によって浮いた資金を労働者の賃金引上げや投資に回した企業はごく一部で、多くの企業は浮いた分を株主への配当や幹部への賞与に充てた。2019年に米財務省と行政管理予算局が発表した報告書は、トランプ減税の影響で、アメリカの財政赤字がわずか1年で26%も拡大したと指摘した。トランプが軍事支出を大幅に増やしたことに加えて、最も裕福な企業や個人を対象とした減税措置によって税収が減ったことが大きな原因だった。 「2017年に可決された減税案は、とても重要な教訓だ」と、大統領経済諮問委員会のメンバーであるヘザー・ブーシーはあるインタビューで述べ、こう指摘した。「(トランプ政権の)税制改革法案には民間部門の投資を促進する効果がなかった。我々はそれを覆そうとしているのだ」 バイデンは大統領選の際、年収40万ドル以下の世帯には増税を行わないことを公約に掲げていた。そのため共和党とロビイストが議会を説得して法人税率の引き上げ案を潰せば、民主党にとってはインフラ投資計画の財源確保手段が大幅に制限されることになる。バイデンは今週、アメリカの中間所得層が税率20%以上の税を支払っているのに対し、大手企業55社が「さまざまな抜け穴を利用し、連邦法人所得税を1セントも払っていない」と指摘し、「あまりに不公平だ」と批判した。 景気回復のために「投資は重要」 ホワイトハウスの複数の側近は、バイデンの法人税率引き上げ案に対する共和党の執拗な攻撃については、心配していないと述べた。企業や米国民から、十分な支持が得られていると彼らは確信している。 リフトの共同創業者であるジマーはMSNBCに対して、「再び米国内と米経済に投資を行っていくことは、重要なことだと思う。経済が成長すれば、雇用も増えて人の動きも活発になる」と述べた。 だが米大手企業は2017年の法人税率減税措置の大きな恩恵を受けてきたため、米商工会議所とビジネス円卓会議は、バイデンの法人税率引き上げ案に強い反発を表明した。 連邦法人所得税の税収は1950年代半ば以降、着実に減少しており、米商務省経済分析局の最近のデータによれば(50年代半ば当時の)対GDP比およそ4%から、現在は1%未満に落ち込んでいる。