<保守的な共和党知事の下で、早期のマスク着用義務解除、事業活動全面再開を強行しながら、感染再拡大もなく好調> 米テキサス州のアボット知事が新型コロナウイルスの感染拡大に伴うマスク着用義務を撤廃し、事業活動を全面再開してから4月10日で1ヵ月が経過する。 規制解除が発表された当時、米国で2番目に人口の多いテキサス州で一旦減少傾向を示していた1日当たりの新規感染者数(7日移動平均)は再び7000人超へと跳ね上がり、死亡者数も累計4万2000人に達する一方、ワクチン接種の広がりは他州に後れを取っていた。 よってこの決定には州内外から反発や批判が相次いだが、企業寄りの姿勢で知られ、個人の自由を重視する保守派の多いテキサス州では、政府によるマスク着用義務化や活動制限にはもともと抵抗感も強かった。 共和党のアボット知事は規制解除の発表に際し、「テキサスを100%開き、州民の正常な暮らしを取り戻すことにこれまで以上に注力しなければならない」と述べた。 それから1ヵ月が経ち、状況はどのように変わっただろうか? ほぼ普通の生活+マスク 多くの州に先駆けて経済活動を完全再開するとの発表は紙面を賑わせたが、3月10日を境に街ゆく人がみなマスクを外してコロナの終焉を祝ったわけではなく、いまだに学校やオフィスビル、店舗などは個別にマスク着用を求めているところがほとんだ。 また、州都オースティンと同市を含むトラビス郡が州の方針に反対してマスク着用義務の継続を決議したことに対して、州司法長官が規則執行の差し止めを求める裁判を起こし、郡判事がオースティン・トラビス郡側を支持する判決を下すなどのゴタゴタも続いている。 ただ、テキサス州中部に住む筆者の感覚からすると、出かける時にマスクを着ける以外、最近ではコロナ禍であることを忘れそうになるというのが正直なところだ。 レストランやバーに行けば大勢の人が店内での飲食を楽しみ、スポーツや娯楽、子供の習い事などの分野でも以前とほぼ同じような活動が戻っている。通っているジムでは室内にもかかわらずマスク着用が自己判断に任されるようになったことで、半数近くの人がマスクを外して運動している。 3月には約1週間の春休みもあったが、旅行を計画しているのは米国民の12%のみとの全米旅行産業協会のデータを疑いたくなるほど、周りでは近場・遠出含め遊びに出かけた人ばかりだった。 さらに、今月4日(日)はキリスト教の重要なイベントであるイースター(復活祭)で、多くの教会がネット配信ではなく実際に対面式で大規模な礼拝を行ったほか、大リーグのテキサス・レンジャーズも今週、コロナ禍以来主な米プロスポーツで初めて入場制限なしで試合を開催し、完売したチケットを手に入れた4万人近いファンが観客席を埋め尽くした。 ===== とはいえ、データを見る限り今のところ感染状況が再び悪化している様子はない。 ニューヨーク・タイムズがまとめたデータに基づいて算出すると、テキサス州の1日当たりの新規感染者数(7日移動平均)は3月10日の4909人から執筆時点で最新の4月6日には3114人まで約37%減少し、死亡者数も同期間に190人から79人に58%余り減少した。全米では死亡者数が同様に半減しているものの、新規感染者数はむしろ13%増加している。 これに対して、ワクチン接種は急速に広がっており、足元では2回の接種を終えた人が17%、少なくとも1回の接種を行った人が29%となっている。全米のそれぞれ19%と33%は若干下回っているが、バイデン大統領が4月19日から米国の全成人がワクチンを受けられるようになるとの見通しを示した一方、テキサス州では3月29日からすでに接種対象が全成人へと拡大された。 ただ、米国のコロナ対策を主導する国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、油断は禁物だと釘を刺す。 同所長は今週、MSNBCとのインタビューでテキサス州の状況について問われ、現時点の行動の影響がデータに現れるには数週間かかるとしたうえで、「これまでにも事業を再開し始め、すぐには何も起こらなかったが、数週間後に(感染が)突然爆発的に増える状況にわれわれはだまされてきた。これを早まって判断しないように注意しなければならない」と警鐘を鳴らした。 一方、月次GDPや小売売上高など、規制解除以降の景気動向を表すデータはまだ明らかになっていない。州経済への影響を考慮して早期の事業再開に踏み切ったアボット知事の決断が吉と出るか凶と出るかを占うには、まだ少し時間がかかりそうだ。