<うちわやマウスガードよりも感染効果が高いマスクが開発されたが、専門家や一般からも反応は今ひとつ> 日本では新型コロナウイルスの感染予防として、口の部分だけ開いたり、顎の部分にゆるみをもたせたり、手で持ったりする食事用マスクが発表され注目を集めている。感染が拡大し始めたとき、フェイスマスク着用に強い抵抗があったヨーロッパ人が見たら「さすがはマスク好きな日本人だ」とか「食事で、そこまで気を遣うのか」と、きっと驚くだろう。 一方、メキシコでは、食事用のマスクとして鼻のみを覆う「鼻マスク」が考案され、広く販売する計画が進んでいる。 メキシコの研究者たちが考案 歯科治療でも使える 鼻マスクは、メキシコ国立工科大学医学部の免疫学者スタボ・アコスタ・アルタミラーノ氏らが作った。新型コロナ感染を抑えるため、5ミクロンより小さいサイズのエアロゾル(空気中に浮遊する微粒子)を考慮し、厳格な品質基準に従ってさまざまなものを試し最適なマスクの素材を発見したという。 このマスクを使えば、レストランはもとより、長距離フライトや歯科医院など人との間で十分な距離を維持することが難しい場合に、よりしっかりと新型コロナを予防できるようになると開発者らは主張している。現在、大量生産を請け負う企業と話し合いを進めており、近いうちに発売を予定している。 何もしないよりはいい 新型コロナウイルスは目・鼻・口から感染するが、米ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センターの感染症専門家アメシュ・アダリヤ氏は、感染した場合、鼻からどの程度ウイルスが進入するかを誰も数値化していないとし、「鼻だけを覆うマスクは十中八九、強力な保護にはならないだろう」と指摘する。ただし「何もしないよりは多分よいだろう」と、健康情報サイトのベリーウェル・ヘルスにコメントしている。 米ノースイースト・オハイオ医科大学のリチャード・ワトキンス氏も、「効果についてさらに研究が必要だが、おそらく害を及ぼすことはなく、多少役立つかもしれない」と同サイトにコメントしている。 ===== 鼻マスクに一般の反応は? スイスのフリーペーパー20ミヌーテンには、「この鼻マスクを着用すると思うか」というオンラインアンケート(1万8200人以上が回答)があり、「役に立たないから着けない」という意見が53%、「カーニバルには着けたい」と冗談半分の人が31%、「あまりにも突飛に見えるから着けない」が8%、「用心することに越したことはない。着けたい」「少なくとも試してみたい」がそれぞれ4%だった。 着用した姿がおそらくピエロを想定させるため積極的に付けたい人は少数派だが、もしかして将来、別の新しいウイルスが確認されたら、鼻マスク着用が食事中の新しいマナーにならないともいえない。 ジョンズ・ホプキンス大学は、感染が拡大し始めたころにはマスクが推奨されなかったのに一転して強く推奨されるようになったことについて、次のように説明している。 「当初、研究者や科学者は、一般の人々の間でマスクの着用がどれほど必要か知りませんでした。いまでは、マスク着用がこのコロナウイルスの蔓延を防ぐのに効果的な方法であることがわかりました。 (中略) 新型コロナウイルスのようなまったく新しいウイルスが人類の前に現れた場合、ウイルスの性質について詳しくわかるにつれ、推奨事項は頻繁に変わります」 ヨーロッパ人が日本人のように公共の場で常時マスクをするようになるとは、ヨーロッパ人自身も思っていなかったほど社会は激変した。何が新しい常識になるかは想像しにくい。鼻マスクがまったく役に立たないと決めるのは、まだ早いのでは? [執筆者] 岩澤里美 スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com ===== うちわ会食よりも安全な「鼻マスク」 ここまでするなら普通のサージカルマスクでいいという声も聞こえそうですが...... REUTERS / YouTube