<半導体の人材流出を阻止するため労働部が決定した罰則付きの強硬手段> 台湾問題をめぐって米中間の緊張が高まるなか、台湾の労働部(労働省に相当)は、台湾の人材派遣会社が中国本土からの求人情報を出すことをいっさい禁止する。 Nikkei Asiaが独占入手した情報によれば、台湾労働部は通達を出し、その中で「米中間の地政学的な緊張の高まり(やアメリカの対中半導体禁輸措置)により、中国の半導体開発は打撃を受けている。中国は半導体の国内調達網を構築するため、台湾の優秀な半導体エンジニアの引き抜きをこれまで以上に積極的に行っている」と指摘した。 台湾のこの決定は、中国へのハイテク部門の人材流出を阻止するための強硬手段であり、通達に違反した者には罰金も科す。特にIC(集積回路)や半導体など、台湾がリードする分野の重要な求人で違反があった場合は相応の措置を取るとしている。 Nikkei Asiaによれば、労働部の通達は「(中国での)半導体やICに関する仕事に人材を紹介した場合には、罰金額はより高くなる」とする。また台湾最大手の人材紹介サイト「104人力銀行」は同紙に対して、新たな規制は、中国に製造拠点を持つ台湾企業にも適用されると述べている。 求人情報の取り下げを急ぐ各社 iPhoneの組み立てを請け負い、中国に複数の大規模工場を所有するフォックスコン(鴻海科技集団)のような台湾企業にとっては厄介な問題だ。104人力銀行の広報担当者は、フォックスコンなどの企業は「まず、現在ネット上に掲載している求人情報を全て削除し、その後改めて、台湾経済部の投資審議委員会から中国での操業を認められている子会社の名前で求人を出し直さなければならない」と説明した。 EXCLUSIVE | TAIWAN WALLS OFF TECH TALENTTaiwan has told staffing companies to remove all listings for jobs in China, a drastic move to prevent the outflow of vital chipmaking talent to the mainland.@ChengTingFang and @Lauly_Th_Li report.https://t.co/x2ek9F2RZL #semiconductor— Nikkei Asia (@NikkeiAsia) April 29, 2021 Nikkei Asiaの報道によれば、104人力銀行は4月28日に全てのクライアントに対して、中国本土での求人情報を削除するよう書簡で通知。「法律違反を回避するために、できる限り迅速に、中国での求人情報の掲載を取り下げてください」と要請した。 中国は台湾人にとっての主要な雇用先で、台湾の英語メディア「チャイナ・ポスト」によれば、大学を卒業した台湾の若者の約55%が中国で働いている。また台湾の英字新聞「タイワン・ニュース」は、中国本土で働く台湾市民の数はここ数年で減少しているが、それでも台湾の外で働く市民の就職先として最も多いのは中国だという行政院主計総拠(DGBAS)の報告を紹介した。 台湾の外で働くことには、金銭的なメリットもある。チャイナ・ポストは、中国の労働者の収入が台湾の労働者の約1.72倍だという、2019年の104人力銀行の調査結果を紹介している。 ===== 労働部の今回の決定の背景には、アメリカが改めて台湾支持の姿勢を確認したことを受けて、米中間の緊張がますます高まっている事情がある。台湾は長年、独立国家並みの高度な自治を維持しているが、中国は依然として、台湾は自国の領土の一部だと主張している。 米中間の緊張はこれまでのところ、主に非難の応酬と軍事的な威嚇の形をとっている。4月には中国の戦闘機が台湾上空への侵入を繰り返し、ジョー・バイデン米政権は台湾への武器売却を承認。中国がまたこれに反発する、という具合だ。 だが今回の労働部の決定は、これまでとは異なる種類の争いだ。世界的なパンデミックのなか、仕事を求める多くの台湾市民の生活を直接一変させかねない。104人力銀行はNikkei Asiaに対して、29日夜の時点で同社のサイト上に掲載されている中国での求人情報が、3774件から1872件に減ったことを明らかにした。