<トランプの大嘘や煽動を批判した共和党ナンバー3が党を追われそうだといことは、共和党は今もトランプに頼らなければ票が取れない「トランプ党」だということだ> ディック・チェイニー元米副大統領の長女で、現在は下院議員のリズ・チェイニーが、所属する共和党内から非難を浴びている。昨年の大統領選をめぐってドナルド・トランプ前大統領が根拠のない不正疑惑を言い立てたことや、1月6日の米連邦議会襲撃事件でトランプが果たした役割について、批判的な発言をしたせいだ。 きっかけは3日、トランプがメディア向けの声明で、20年の大統領選は将来、「大きな嘘」として知られるようになるだろうと述べたのにチェイニーが噛みついたことだ。 チェイニーはツイッターで「20年大統領選は盗まれていない。そんなことを主張する人は、法による統治に背を向け、われわれの民主制度を害し、『大きな嘘』を広めていることになる」と述べた。 また同じ3日、チェイニーは保守系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所がジョージア州で開いたイベントでトランプを名指しで批判した。 「嘘の土台には党や保守主義運動の再建はできない。選挙は盗まれたという考えを信奉するわけにはいかない」とチェイニーは述べた。 「(そうした考えは)わが国の民主主義の血流にとって毒となる。郊外の有権者を取り戻し、20年の選挙でわれわれに票を投じてくれたすべての人を引き留めるには、アイデアと政策を使うべきだ。個人崇拝のカルトになるわけにはいかない」 院内総務からは「戦力外通告」 チェイニーはまた、共和党は「1月6日の(米連邦議会襲撃)事件を取り繕ったり、トランプの大きな嘘の定着に手を貸したり」するわけにはいかないと述べた。 だがチェイニーの発言には共和党内から反発の声が多く上がった。下院共和党の序列第3位の座からチェイニーを引き摺り降ろす動きもある。ケビン・マッカーシー共和党下院院内総務は4日、チェイニーが「職務を遂行できるか」疑問視する声が共和党の議員の間で上がっていると述べた。 チェイニーが共和党内からの批判にさらされるのは今年に入って2回目だ。チェイニーはトランプに対する弾劾決議案を支持し、共和党に造反した下院議員10人のうちの1人。2月にはチェイニーの役職を解くべきかをめぐって下院共和党でが行われ、145対61で否決されていた。 チェイニーは弾劾に賛成した理由について、連邦議会襲撃事件を起こした支持者の集団をトランプが呼び集めたのは明らかだからだと説明。「その後の出来事はすべてかれのしわざだ」と述べ、「アメリカ大統領による、大統領職と憲法の(遵守を誓った)宣誓に対するこれほどの裏切り」は前例がないと語った。 チェイニーはトランプの在任中から、外交政策などで政権への批判を繰り返してきた。 ===== マッカーシー院内総務の脅しとも言える発言に対し、チェイニーの広報担当者はチェイニーが動じることはないだろうと述べた。 「これは共和党が20年の選挙に関する嘘を永続させ、1月6日の事件を糊塗しようとするかどうかの問題だ。リズはそうするつもりはない」と広報担当者は声明で述べた。 そして5日、チェイニーはワシントン・ポストに寄稿し、共和党の仲間たちに対し、トランプと距離を置くよう呼びかけた。 「共和党は転換点にいる。そして共和党員は、真実と憲法への忠誠を選ぶかどうか決めなければならない」とチェイニーは説いた。 「資金調達や政治的な目的から、トランプの主張を受け入れたり見て見ぬふりをすることに魅力を感じる人もいるかも知れない。だがそうしたアプローチは深刻かつ長期的なダメージをわが党とわが国に与えることになる。トランプは1月6日の襲撃事件について、これまで一度も自責の念や遺憾の意を表したことはない。そして最近では、国民の意思を実行するという点でアメリカの選挙や法制度、憲法制度は信頼に値しないと示唆している。これは非常に有害だ。特に今は、世界の舞台で共産中国と、そして民主主義は欠陥のある制度だという中国側の主張と戦っているのだからなおさらだ」 共和党は「根っこから保守的原則を代表する」存在でなければならず、トランプの「個人崇拝」から距離を置かなければならない――そうチェイニーは寄稿を締めくくった。そして「歴史はわれわれを見ている」と、共和党の仲間たちに呼びかけた。