<手探りのリモート授業が終わり、いきなりフルタイムの仕事が始まって苦しむ若者のスムーズな船出を助けるには> 房付きの角帽をかぶって、ガウンを着込み、著名人の激励のスピーチを聞く。そしてついに、学生代表が自分の名前を読み上げる――。 ただし、テレビ会議アプリのズーム(Zoom)の画面上で。昨年に続き、2021年のアメリカの大学卒業式はオンラインで行われている。工夫は凝らしてあるが、学生たちが子供の頃から思い描いてきた卒業式のイメージと全然違う。 それだけではない。今年のアメリカの新卒者は、ひょっとすると史上最悪の労働市場に入っていく。一時と比べれば雇用統計は力強さを増してきたが、大学卒業ほやほやの新人の採用は、コロナ禍前と比べて45%減ったとされる(労働市場分析会社バーニング・グラス・テクノロジーズ調べ)。 つまり、これから新たに社会に出る400万人の若者は多くの助けを必要としている。その負担を本人たちだけに担わせるのは、あまりにも酷だ。そこで私たち先輩社会人が手伝える方法を紹介しよう。 ◇ ◇ ◇ ■プチメンターになる 「私のメンターになってください」と言われるのは、初デートで「私と結婚してください」と言われるのと同じくらいビビる経験だ。もちろん、定期的にサポートする時間があるなら引き受けたらいいだろう。だが、たいていの人はそれほど余裕はない。 そこで違う方法を試してみよう。例えば、ズームで15分間相談に乗る。あるいは、就職活動用の履歴書や作文の添削をする。ツイッターで、自分が社会人になりたてのとき助けになった本を紹介してもいいだろう。Q&Aサイトでキャリア関連の質問に答えたり、出身大学の就職センターで模擬面接のボランティアをするのもいい。メンター的な活動は、短期的なものでも役に立つのだ。 ■自分の失敗談をシェアする 筆者は新卒時代、自分以外のみんなが社会人の基本知識を持っている気がして焦ったものだ。「どうしてみんな履歴書の書き方や、アパートの借り方を知っているの?」といった具合だ。最近の若者なら、「どうしてフェイスブックとインスタグラムの友達は、なんでも知っているように見えるの?」と思うかもしれない。 そんなとき、先輩社会人にできる最善のことの1つは、駆け出し時代の失敗談をシェアすることだ。どんなミスをし、どうして選択を誤ったのか。それは現代の若者が同じミスを犯すのを避けると同時に、右も左も分からないのは自分だけではないと気が付く助けになるだろう。 ===== 女子のプログラミング教育を推進するNPOのガールズ・フー・コードを立ち上げたレシュマ・サウジャニは、インスタグラムで自分の失敗談をシェアしている。ある日の投稿には、「勇気を出して。完璧でなくていいから」とある。「怖いと思っていることにこそ挑戦するべき。失敗しても人生の終わりではない」 筆者の場合、家族ぐるみで付き合いのある人が重要な仕事を紹介してくれたとき、お礼状を書き忘れるという失敗をした。フリーランスの納税方法を知らなくて大変なことになったこともある。大学の同級生と自分を比べたり、キャリアプランに悩むばかりで、なかなか仕事に応募しなかったことも後悔している。 ■有給インターンを雇う コロナ禍という歴史的な荒波に見舞われた若者たちに同情するのもいいが、仕事を与えるのはもっといい。21年卒生は、リアルな仕事の経験(と所得)を必要としている。フルタイムでは無理でも、有給のインターンや見習いは雇えないか。 最近は多くの企業がインターンを募集しているが、全米大学就職協議会(NACE)によると、営利企業のインターンの43%は無給だ。これはよろしくない。NGOのペイ・アワ・インターンズや、短期インターンを提供するパーカー・デューイなどに問い合わせれば、有給インターン制度の設け方を教えてくれる。 ただし、有給だからといって、インターンに厳しく当たるのは禁物だ。彼らは具体的なタスクをこなす上で、きめ細やかな研修を必要としている。コミュニケーションやチームワークなど成功のカギとなる「ソフトスキル」を学ぶ機会を提供しよう。 あなたが仕事をしているところを見せるのも、勉強になるはずだ。筆者が初めてNGOでインターンをしたとき、上司が資金調達の電話をその場で聞かせてくれた。相手に反論されたり拒絶されたときの対処法は、今もとても参考になっている。 ■話を聞く コロナ禍での大学生活という、21年卒生のユニークな経験にじっくり耳を傾けることも大きなサポートになる。筆者のいとこのオリビアは20年卒生で、とても印象的な話をしてくれた。 「区切りとなるイベントがなかったと、今でもよく友達と話す」と、彼女は言っていた。「最後の授業も卒業式もなかった。気持ちを切り替える機会もなく、ある日突然フルタイムで働くようになり、コンピューターの前に1日12時間座っている生活が始まった。大学でできなかった経験を取り戻すことはできない」 先輩社会人には、彼らの失われた経験の埋め合わせはできないが、彼らが独りぼっちではないと知らせることはできる。将来振り返ったとき、筆者も、あなたも、大変な時代に新社会人の手助けができたと思えることを願っている。