<米バイデン政権が行うべきは新型コロナウイルスの起源に関する追加調査ではなく中国への制裁だ> ジョー・バイデン米大統領は5月26日に発表した声明の中で、米情報機関に対して、新型コロナウイルスの起源についての「情報の収集および分析」を行い、90日以内に報告するよう求めたことを明らかにした。 だがアメリカはそれよりもまず、同ウイルスの起源に関する機密情報を公開すべきだろう。情報機関による評価はその後でいい。アメリカには既に、中国政府に重大な代償を求めることができるだけの十分な証拠があるし、抑止力を確立するためにもそうするべきだ。 バイデンの声明が発表されるわずか数時間前、CNNは、マイク・ポンペオ前国務長官が立ち上げた米国務省軍備管理・検証・遵守局による同様の調査が打ち切られていたと報じていた。国務省はこの報道を否定し、作業の「質」には懸念があったものの、調査は完了したのだと主張した。CNNの報道は、調査は実際には完了していなかったと示唆している。 ワシントン・タイムズ紙は、国務省による調査は「中国の怒りを買うのではという懸念から」打ち切られたと報じた。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙はバイデンが追加調査を命じる数日前(23日)に、中国・湖北省武漢市にある武漢ウイルス研究所の研究者3人が、2019年11月に入院していたと報じていた。3人には、「新型コロナウイルス感染症の症状とも、一般的な季節性の疾患の症状ともみえる」容体だったということだ。 「中国との協力」は可能なのか 武漢ウイルス研究所の袁志明室長は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道は「真っ赤な嘘」だと否定。だが同紙の報道をきっかけに、ウイルスの起源に関する議論が再燃した。新型コロナウイルス危機について、可能な限り中国と協力すべきだと考えているバイデン政権にとって、ウイルスの起源を追跡することはことさら重要な意味を持つ。 新型コロナウイルス感染症が動物原性感染症(つまり動物からヒトに感染した病気)であり、中国政府が国際社会と共にそれを封じ込めるために最大限の努力をしてきたのであれば、中国と協力するのは適切な策だろう。しかしながら、同ウイルスが中国の研究所に保管されていた――もっと言えば生物兵器だった――もので、中国がその起源を隠そうとしたのであれば、彼らとの協力は論外だ。 ウォルター・リード陸軍研究所ウイルス感染症部門の元研究室長で微生物学者のショーン・リンは、本誌に対して、これまで誰も新型コロナウイルスの保有宿主を見つけることができておらず、動物からヒトへの感染経路も特定できていないと説明した。 ===== 「コウモリ、センザンコウ、ミンクやネコをはじめ、これまでどの動物の検体からも、新型コロナウイルスの始祖ウイルス(元凶となったウイルス)は特定されていない」と彼は指摘し、こう続けた。「始祖ウイルスも、ウイルスをヒトにうつした動物も特定されていないということは、新型コロナウイルス感染症が動物原性感染症だとする説には依然、重要な証拠が欠けていることを意味する」 動物からヒトに感染したことを裏づける証拠がないという事実は、新型コロナウイルスが施設で生み出された可能性を示唆しており、その施設として最も考えられるのが武漢ウイルス研究所だ。3人の研究者が体調を崩したという報道のほかにも、ウイルスが同研究所から流出したことを示唆する複数の兆候がある。 たとえば同研究所は、1500株以上のコロナウイルスを保管しており、危険な機能獲得実験(特定の病原体の致死性もしくは感染力を高める実験)を行っていた。安全対策には不備があったし、新型コロナの最初の感染例が報告された場所のすぐ近くにある。ちなみに最初の感染例は、武漢の生鮮市場とは何のつながりもない。同感染症の「動物由来説」を信じる人々が、生鮮市場が感染源だと指摘しがちなだけだ。 中国政府による数々の隠蔽工作 中国政府は、国際社会が同ウイルスの感染拡大を阻止する上で役立ったであろう情報を、なんとかして隠そうとした。たとえば中国の国家衛生健康委員会は2020年1月3日、武漢の複数の当局(および中国国内にある全ての病院や研究施設)に対して、新型コロナウイルスの検体を廃棄するよう指示していた。 さらに中国の当局者たちは、国際社会が同ウイルスの遺伝子情報を入手するのを阻止しようとした。遺伝子配列のデータ公表をできる限り先延ばしにし、また2020年1月に独自にデータを公表した上海の勇敢な研究者たちを処罰した。当局はまた、国際社会に警告を発しようとした者たちを阻止した――陳秋実や張展をはじめとする勇敢な市民ジャーナリストが行方不明になったり収監されたりしたし、「武漢エイト」と呼ばれる8人の医師は当局からきつく口止めされた。 特に2019年12月から2020年2月にかけて、新たな感染症の危険性ついて警告した人々を罰していた間、中国の保健当局者たちはそれが真実であることを知っていたはずだ。 ===== また中国政府は2020年1月下旬、中国軍事科学院軍事医学研究所の陳薇少将を、武漢ウイルス研究所に「病原体レベル4(P4)実験室」の責任者として派遣した。陳薇が派遣されたのは、同研究所からウイルスが流出したという証拠、あるいは同研究所が生物兵器の開発を行っていた証拠を廃棄するためだったとする声も多い。このことも、新型コロナウイルス感染症が、中国当局が主張するような「自然変異の結果」として発生したのではない可能性を示唆している。 中国政府の取った一連の行動によって、武漢で封じ込められたはずの感染症が世界に広まり、この100年で最も多くの死者を出すパンデミックを引き起こした。中国の指導部の行動は、悪意に満ちていた。 リンゼー・グラム米上院議員(共和党)は26日、中国が新型コロナウイルスの起源についての本格調査に同意しなければ、中国に対する制裁案を提出すると述べた。 中国政府は、WHO(世界保健機関)の調査団による武漢での調査を幾度も妨害したり阻止したりしてきた。2021年2月の調査の際には、調査団が感染拡大初期に武漢で確認された174の症例のデータを要求したが、中国政府は提出を拒否した。また中国は、5月24日にオンライン形式で開幕したWHOの年次総会で、もう中国での現地調査を行う必要はないとも主張した。 生き残るの中国だけ? 我々は本当に、まだ中国を信じて待ってみる必要があるのだろうか。グラムが26日にFOXニュースに語ったように、「シャーロック・ホームズではなくても、この謎は解明できる」はずだ。 不吉な兆候が幾つもある。中国国防大学は、人民解放軍が発行している「軍事戦略の科学」2017年版の中で、「特定の遺伝子を使用した攻撃」という新たな種類の生物戦争に言及していた。国際評価戦略センター(バージニア州)のリチャード・フィッシャーは本誌に対して、「未来の戦争においては、中国が(標的を絞って手を加えた)コロナウイルスやその他の病原体を使って、特定の民族グループ、年齢グループや国を攻撃することも予想される」と述べた。 フィッシャーは、2020年に世界の多くの地域がパンデミックで大きな打撃を受けたことは、生物兵器が効果的な兵器だという考え方を裏づけていると指摘する。「超限戦(際限なき戦争)」を信条に掲げる中国軍は、国家を、さらには文明さえをも殺しかねない生物兵器を使用することに、良心の呵責を覚えることはないだろう。次のパンデミックが起きた時、生き残るのは中国だけかもしれない。 だからこそ、追加調査の結果が出るまで(バイデンが提案するように)90日間待つことに意味はない。バイデンは迅速に機密解除を行って、アメリカがこれまでに得ている情報を公開し、すぐにも行動を起こし始めるべきだ。あとどれだけの人が新型コロナウイルス感染症で命を落とせば、国際社会は中国に対して効果的な行動を取るのだろうか? *この記事の内容は、筆者個人の意見です