<メディアの前に出るのは慣れっこの選手も多いが、そうでない選手もいる。大坂なおみのように大きなプレッシャーを背負う選手はよほど辛いはずだと、テニス選手から共感の声> テニス界のスター、大坂なおみは5月31日、全仏オープンを棄権すると発表した。この突然の決断はその後、四大大会(グランドスラム)を主催する各協会が選手のメンタルヘルス問題に取り組む動きへと発展している。 四大大会の主催者は6月1日、連名で選手のメンタルヘルス問題を支援する旨の声明を発表した。彼らは2日前の30日、記者会見に出席しなかった大坂に対し、失格、さらには今後の四大大会への出場停止処分もあり得るとの警告を発したのと同じ人々だ。大坂は、自身が不安やうつといった心の問題に苦しんでいたことを明らかにした。 会見前は「大きな不安」 世界ランキング2位の大坂は30日、ローラン・ギャロスで開催されている全仏オープン1回戦で勝利したが、試合後の記者会見を予告どおり拒否したため1万5000ドルの罰金を科された。翌31日、大坂は大会を棄権すると表明。世界の主要なメディアとの会見の前にはいつも「大きな不安の波」に襲われていたし、2018年の全米オープン以降の「長い間、うつ状態に悩まされてきた」と告白した。 日本生まれの23歳で、幼いころに家族とともに米国に渡った大坂は、「今は少しの間、コートから離れるが、適切な時期が来れば、ツアーと共に、選手、メディア、そしてファンのために、状況を改善する方法について話をしたいと心から思っている」と述べた。 以下は、APのリポートだ。 プロテニス選手は、主催者から要請があった場合には記者会見に出席する義務がある。四大大会の規約は、選手が会見に欠席した場合、最高で2万ドルの罰金を科すことができると定めている。 全仏オープン、ウィンブルドン(全英)選手権、全米オープン、全豪オープンの主催者が6月1日に発表した声明には、「四大大会を代表して、我々は大坂なおみが一時的にコートを離れている間、可能であればどんな形でも、サポートと支援を提供したいと考えている。彼女はたぐいまれなアスリートであり、我々は彼女が、彼女自身が適切と判断したうえで、できるだけ早く競技に復帰することを期待している」と書かれている。 「メンタルヘルスは非常に困難な問題であり、我々としても最大限の注意を払う用意がある。これは複雑で人によって異なり、ある人にとって影響のある事柄が、他の人にも影響を与えるとは限らない。プレッシャーや不安を自身の言葉で明かしてくれたことについて、なおみを称賛する。テニス選手が直面するかもしれない特有のプレッシャーについて、我々は共感している」 ===== フランステニス協会(FFT)のジル・モレットン会長、オールイングランド・クラブ(AELTC)のイアン・ヒューレット会長、全米テニス協会(USTA)のマイク・マクナルティ会長、テニス・オーストラリアのジェイン・フルドリチュカ会長は、選手やツアー、メディアと協力し、「我々の大会における選手たちの体験を改善する」取り組みを行うと約束した。さらにトップ4人は、すべてのアスリートが「ランキングや地位に関係なく、公平な条件のもとで競技を行える」よう万全を期すとの意向も示した。 これとは別に、国際テニス連盟(ITF)の広報担当専務理事ヘザー・ボウラーは1日、AP通信にメールで送った声明のなかで、大坂が「メンタルヘルスの問題に光を当てた」ことを受けて、「改善のために必要な点について見直しを行う」と述べた。 「すべてのステークホルダーが、互いに尊重し合う質の高い環境をこれからも提供し続けるようにすることは、我々にとっても大いに利益になる。それぞれが心身の健康状態に影響を受けることなく、持ちうる能力の最良の部分を発揮し、テニスという競技の振興のために自らの務めを果たすことができる環境が必要だ」と、ボウラーは言う。 「僕もとても苦しかった」 セリーナ・ウィリアムズをはじめとするさまざまなテニス選手が、大坂に支援を表明した。大坂が31日にソーシャルメディアに投稿した声明で、率直に心境を打ち明けたことを称えた。 アメリカのテニス選手、アン・リー(23)は1日、全仏オープン1回戦で勝利を収めた後に語った。「これは難しい問題だ。問題をどれだけ表に出すかは人によって違うが、いずれにしても、本当の胸の内は、本人以外には誰にもわからない。彼女(大坂)の思いは私にはまったくわからなかった。それでも、彼女がオープンに語ったことには敬意を表する」 「私たちの世代は、(メディアに対して)どんどんオープンになっている。それはいいこととも言えるが、時には悪い面が出ることもある。彼女の無事を祈っている」とリーは述べた。 また、こちらも全仏オープンで1日の試合に勝利したフランスの男子トップ選手(34)、ガエル・モンフィスは、大坂の不安はある程度理解できると述べた。 「彼女の辛い気持ちはわかる。僕もこれまでとても苦しい思いをしてきたからだ」とモンフィスは語った。「彼女が向き合っているものが何なのか、僕には想像もできない。なぜなら、彼女は他の人と比較にならないぐらい多くの面で非常に大きなプレッシャーにさらされているに違いないからだ。まだとても若いのに、非常にうまく対処していると思う。おそらく僕たちが、彼女からあまりに多くのものを求めすぎていたところもあると思う。だから彼女がときになんらかの間違い犯しても当然だ」 ===== この後にモンフィスは、偽らざる心情を語った。それは、大会やツアーの運営担当者からアスリート、そしてテニスのファンに至るまで、テニス界に関わる人たちの多くがきっと共感を覚えるはずの言葉だ。 「私たちにはなおみが必要だ。もちろん、100%の状態でプレーしてほしい」とモンフィスは語った。「コートに戻り、記者会見にも出席してほしい、それもいい形で」 (翻訳:ガリレオ) ■大坂なおみの「素」が見えたインタビュー集 ■全豪オープンで優勝した後の緊張したような記者会見 ■2018年の全米でセレーナ・ウィリアムスを下して優勝したのに小さくなっている大坂なおみ