<弁護士を辞めて犬を引き取ったあの日から生活が一変。資金は苦しいが、90頭の動物と一緒に生きる幸せな日々> 子供の頃、犬が嫌いだった。母が相当な犬嫌いで、わが家では汚くて臭い動物と見なされていた。私にとって犬は縁のない存在だった。 やがて私は弁護士になり、大手国際銀行の仕事に携わった。世界を飛び回り、家で待つ幼い子供たちにいつも土産を買って帰った。クアラルンプールのデパートで見つけたおかしな顔つきの縫いぐるみも、その1つだった。 数年後、ガーデニングのイベントに行ったら、その縫いぐるみにそっくりの奇妙な姿の犬を見つけた。私は驚いて、飼い主に犬の品種を訪ねた。シャーペイだった。2週間後、私たちはシャーペイの子犬を飼い、カイティと名付けた。 その後、カイティの遊び仲間にイングリッシュ・ポインターを飼った。しばらくすると今度は、フランス生まれの猟犬2匹の引き取りを頼まれた。そして、私たちの生活は一変することになる。 この頃、私は独立してビジネス書を出版し、世界58カ国を旅した。そんな生活を送るうちに母国イギリスが嫌になり、妻を説得して2006年にカナダのアルバータ州に移住した。当時わが家には犬6匹と猫2匹がいたが、みんな新居に連れて行った。 どんな犬も引き取って面倒を見た 引っ越して数カ月後、家の前に偶然、1匹のシベリアン・ハスキーが捨てられていた。捨て犬を引き取ったことを友人に伝えたところ、その話が広まり、いろんな人が「この犬も救ってくれ」と言ってくるようになった。 依頼は次々と舞い込んだ。多くの犬が心理的、身体的に傷を負っていた。高齢の犬、目や耳が不自由な犬、事故で足を失った犬、病気で死を前にした犬......みんな引き取って、面倒を見た。 アルバータ州の家には4年住んだが、近隣住民の理解を得られなくなり、引っ越すことにした。心おきなく犬を飼える場所を見つけるのに3年かかった。いま住んでいるブリティッシュコロンビア州に移った13年には、26匹の犬を飼っていた。ここはかなり田舎なので土地が安く、敷地の広さは前の家の10倍以上だ。 これまで引き取った犬は70匹になる。しかし他の飼い主に斡旋した分を含めると、100匹以上を助けた。やがて私たちは、犬以外の動物も引き取ることにした。 ===== 今では犬のほかに、豚や鶏、羊、アルパカ、牛、馬などが90頭以上いる。そこで家の一部を開放し、動物との暮らしを体験できる場にする計画も進めている。 以前の生活に戻りたくないかと聞かれることがある。確かに動物に有り金を全て注ぎ込む前は、かなり裕福だった。でも振り返ると、あまり賢くないお金の使い方をしていた。 私は今年、60歳になる。サリドマイド薬害のせいで、右腕が左腕より約15センチ短く、体は普通の人よりもはるかに老化が速い。今の願いは、私の仕事を引き継いでくれる人が現れることだ。 わが家の犬も高齢化している。19年には7匹、20年には4匹が死んだ。 動物は人生を共にできる素晴らしい仲間だ。私たちは本当に恵まれている。今まで約120人の知り合いに影響を与え、肉食をやめるきっかけをつくれたことも誇りに思う。 私たちの目的は動物愛護だ。簡単なことではないし、資金も苦しい。でも何とかやっている。とても充実していて、とても幸せだ。