<米アマゾンは5月27日、従業員が就業中の疲れを癒すための電話ボックス大の「禅ブース」を導入。しかし評判は散々だった...... > 330億円を投じた健康促進プログラムの一環 インターネット通販大手の米アマゾンは5月27日、従業員が就業中の疲れを癒すための電話ボックス大の「禅ブース」を導入したと公式ツイッターで発表した。これを見たツイッター・ユーザーからは、「ディストピアだ」「簡易便所の方がまだ使える」「棺桶みたい」「嘆きのブース」など批判が殺到。この投稿は現在、削除されている。 アマゾンは5月17日、従業員の健康と安全を促進するプログラム「WorkingWell」(健やかに働く)を米国事業で開始すると発表した。「地上でもっとも安全な職場」を目指し、2021年に3億ドル(約330億円)を投じて、従業員の心と体の健康を促進するプログラムを提供する。ストレッチ・スペースの創設や、休憩室で提供される食事に健康的な選択肢を増やすなど、この取り組みを通じて、2025年までに負傷件数を50%削減するとしている。 その目玉の1つに位置付けられているのが、「AmaZen」というブースだ。電話ボックスより一回り大きいサイズの1人用小部屋で、中には観葉植物が飾られ、モニターと椅子が置かれている。配送センターなど職場内に設置され、シフトの合間にここへ来て、ガイド付き瞑想や、ポジティブな言葉を唱える「アファメーション」、静かな動画と音楽など、マインドフルネスを実践できるプログラムが楽しめるという。現在は試験運用中としている。 アマゾンは発表文の中で、このブースを利用した従業員の感想を紹介。配送センターで働くある従業員は、「AmaZenは、自分のために時間を取り、いったん立ち止まって自分を取り戻す機会を与えてくれる。おかげで集中力が高まる」などと話している。 「自殺ブース」「棺桶」「ディストピア」...瞑想ブースを揶揄する声 ところが、アマゾンの公式アカウントがこの禅ブースを紹介する動画をツイッターに投稿したところ、批判が殺到した。英公共放送BBCは、「SNSユーザーから多くの冷笑を買ったため削除した」と報じている。 ライターのアレックス・プレスさんは、アマゾンのツイート(削除前)を引用する形で、「搾取され、監視されまくっているアマゾン労働者にとっては、簡易トイレの方がもっと使えたんじゃないかと思う」とツイートした。また、ジャーナリストのタリア・ラビンさんは、「移動式の絶望クローゼットより、生活できる給料と労働環境の方がマシ」とツイートした。 アマゾンが当初ツイッターに投稿していた動画を使い、米人気テレビ・アニメ『フューチュラマ』で登場した、「自殺ブース」に例えたビデオを作った人もいる。他にも、SNSには「棺桶」「ディストピア」などの声もあった。 ===== 長者番付1位への不満が爆発? こうした反発について米フォーブスは、これまで世間がアマゾンに対してため込んでいた鬱憤(うっぷん)をAmaZenが刺激してしまったと分析している。 アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者は、フォーブスが毎年発表している「世界の長者番付」で今年も1位となり、4年連続で首位をキープした。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に見舞われた2020年、アマゾンは利益を上げ、株価が上昇。ベゾス氏の資産額は2020年のパンデミック中、700億ドル(約7.7兆円)以上増加した(英ガーディアン紙)。 対照的に、アマゾン従業員の待遇や労働環境については、劣悪な様子がうかがえる報道が相次いでいる。今年2月には、午前1時20分~午前11時50分までの「メガサイクル」と呼ばれる「10時間半シフト」をアマゾンが米シカゴの倉庫で導入し、従業員に対し労働契約書にサインするか、職を失うかの選択を迫っていたことが明らかになった。メガサイクルの導入は、米国内の他の配送センターでも密かに進められていたという。 デジタル・メディア「ヴァイス」は当時、労働環境の専門家の話として、長時間のシフトを少ない従業員数で回すという方法は、就労手当などを削減できるため、労働コストを下げる目的で企業が長年使っている手段だと説明していた。 なお、5月に出たヴァイスの続報によると、「メガサイクル」への反発を受けて呼び名は「シングル・サイクル」に変えられたものの、10時間半のシフトには変更がないという。 また3月には、米下院議員がツイッターで、アマゾンのドライバーがペットボトルに排尿せざるを得ない労働環境にいることを指摘。アマゾンの公式ツイッター・アカウントはこれに反論したが、同社は後日、認識が間違っていたことを同社ニュース・ページで正式に謝罪したうえで、「アマゾンだけでなく業界全体の問題」としつつ、下院議員の指摘が事実であると認めた。 さらに英インディペンデント紙によると、アマゾン倉庫内での負傷件数は、米国平均の約2倍になるとの調査結果もあるという。 同紙は、「瞑想ブースを導入しなければならない状態にあるとき、根本的な何かが間違っていることをベゾス氏のような人物は分かっているはずだ」とし、アマゾンの問題の根は、健康的な食生活や瞑想ブースで解決するよりもっと深いところにあると指摘している。