<中国で41歳の男性が鳥インフルエンザウイルス『H10N3株』に感染したと発表された。このウイルスのヒトへの感染が確認されたのは世界で初めてとなる> 中国国家衛生健康委員会(NHC)は2021年6月1日、「江蘇省鎮江市在住の41歳の男性が鳥インフルエンザウイルス『H10N3株』に感染した」と発表した。このウイルスのヒトへの感染が確認されたのは世界で初めてだ。 男性への感染経路などについては明らかになっていない 男性は、4月23日に発熱などの症状があらわれ、4月28日、地域の医療施設に入院。中国疫病預防控制中心(CCDC)が5月28日、男性の検体について全ゲノム解析を実施した結果、「H10N3株」への感染が確認された。 現在、男性の容体は安定しており、近々退院する見込みだという。また、男性の濃厚接触者を対象に健康観察が行われた結果、いずれも異状はみられなかった。なお、男性の感染経路などについては明らかにされてない。 国家衛生健康委員会では、「H10N3株」は低病原性のウイルス株であり、鳥類からヒトへの偶発的な異種間伝播が起こったものの、「H10N3株」の感染が大規模に拡大するリスクは低いと評価している。 また、専門家は、感染予防策として、病気で弱っていたり、死んだ家禽類との接触を避けること、生きている鳥に直接触れないこと、食品衛生に気をつけること、発熱や呼吸器症状があらわれたらマスクを着用することなどを呼びかけている。 新たに混合していないか明らかにする必要がある 国際連合食糧農業機関(FAO)越境性動物疾病緊急センター(ECTAD)のフィリップ・クラース博士によると、「H10N3株」ウイルスは、1970年代後半から2018年までの約40年間に感染した鳥から分離されたが、サンプル数は約160個にとどまる。また、そのほとんどはアジアの野鳥や水鳥から採取されたもので、これまでにニワトリで「H10N3株」が検出されたことはない。 クラース博士は、ロイターの取材で「男性の検体から見つかったウイルスの遺伝子情報を分析し、これまでに採取されたウイルスと似ているのか、他のウイルスと新たに混合したものではないかを明らかにする必要がある」と指摘している。 ===== ロシアで7人から高病原性鳥インフルが検出されたばかり アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染する症例はまれであるものの、まれに人々の間で大規模な流行を引き起こす可能性があるため、公衆衛生の観点から、継続的なモニタリングは不可欠だ。 たとえば、2013年3月には、高病原性鳥インフルエンザウイルス「H7N9株」のヒトへの感染が確認され、これまでに616名が死亡している。このウイルス株の致死率は約40%という。 1918年のパンデミックの原因となったH1N1亜型インフルエンザも、鳥とヒトのインフルエンザ株の遺伝子が混じり合ったものと言われている。 また、2021年2月には、ロシア南部アストラハン州で7人の検体から高病原性鳥インフルエンザウイルス「H5N8亜型」が検出されたことが世界保健機関(WHO)に報告されたばかりだ。 【参考記事】 ロシアで鳥インフルエンザの鳥からヒトへの感染が確認される......新たなパンデミックの懸念