<中国雲南省で北上を続ける野生のアジアゾウ15頭が人口700万の大都市昆明に到達。ゾウを保護しながら人口密集地への侵入を防ぐ作戦とは?> 中国南西部・雲南省の省都昆明に、15頭のアジアゾウの群れが近づいている。「北上するアジアゾウの群れ」として、世界中のテレビで放送されている。現地でゾウの動きを監視する地域指令センターは、市当局が6月7日、緊急対応要員と警察関係者400人以上を警戒のために動員したと発表した。 この野生のゾウの群れは、1年以上前に雲南省南部の自然保護区を離れて旅を続けており、8日には昆明市郊外で目撃されたとAP通信は伝えた。周辺の住民は7日までに避難し、一帯には交通管制が敷かれ、何台もの車両と14機のドローンがゾウの監視にあたっている。 2トン分の食料も用意された。政府は。ゾウが近づいた場合は建物内に留まり、ゾウを見に行ったり大きな音で怖がらせたりしないよう市民に指示している。このような対策が取られるのは、中国ではゾウの保護が最優先されているからだ。 以下はAP通信によるリポートだ。 ゾウの話題がトレンド入り 謎の旅を続けるゾウは中国国内だけでなく、国際的なスターになろうとしている。 主な国際メディアは、1年以上前に中国南西部の雲南省の山岳地帯にある野生動物保護区を出発してから昆明の郊外に達するまで500キロのゾウの旅を詳細に報じている。 ツイッターとユーチューブには、ゾウの面白動画、特に灌漑用の側溝にすべり落ち、群れの大人のゾウに助けられる2頭の子ゾウの映像が山ほど投稿されている。 ユーチューブの動画には「私たちはこのゾウのようになるべきだ、もっと家族を大事にし、家族で休暇を取り、助け合い、互いに世話をし、守り合うべきだ」というコメントが寄せられた。 旅するゾウは中国のミニブログサイト新浪微博(シンラン ウェイボー)で、何日もトレンド入りを続けている。7日夜の時点で、家族が身を寄せ合うようにして休むゾウの群れの画像が2万5000点投稿され、閲覧回数は2億回に達した。 夜の街を速足で駆け抜けるゾウの群れの姿を防犯カメラがとらえ、十数機のドローンが上空から撮影している。当局は被害を最小限に抑え、ゾウと人間が共に安全な状態を維持できるように群れを監視している。 ゾウの群れは食べ物と水を求めて畑を荒らし、自動車販売店にも入り込んだ。老人ホームにも姿を現し、一部の部屋に鼻を突っ込んだため、高齢男性が急いでベッドの下に隠れたこともあった。 ===== 今のところ動物や人に危害を加えたという報告はないが、農作物に100万ドル以上の被害が出ているという。 保護区を出発した時点でこの群れには16頭のゾウがいた。中国政府の発表によれば、そのうち2頭が保護区に戻り、旅の途中で新たに1頭が生まれた。公式報告によると、群れは現在、成年に達したメス6頭とオス3頭、そして未成年の3頭と子供のゾウ3頭で構成されている。 ゾウがこの壮大な旅に出た動機は謎のままだ。このゾウたちの出身地は、300頭ほどのゾウが暮らす緑豊かな熱帯の保護区だが、そこと同じようにトウモロコシやトロピカルフルーツなどゾウの好きな食べ物が豊富に手に入る土地を探しているのかもしれない。群れのリーダーが道に迷っただけではないかと推測する人々もいる。 世界自然保護基金(WWF)のアジア種保護担当マネージャー 、ニランガ・ジャヤシンゲによると、アジアゾウは本来の行動圏を守って暮らすものだが、何等かの騒動や資源の喪失、開発などの問題があれば、生息地から離れる可能性はある。 「このゾウの群れが、なぜ本来の縄張りを離れたのかは分からない。だが過去数十年で森林が農場に転換され、生息に適した土地が大幅に減ったことは分かっている」と、ジャヤシンゲは電子メールで答えた。「今回の現象は、新しい生息地を探す群れが道に迷い、そのまま進み続けたということかもしれない」 最高レベルの保護 当局は人とゾウの遭遇による被害の防止に取り組んでいるが「次に取るべき最善の対策を判断し、人間とゾウの間でトラブルが起きないようにしなくてはならない」とジャヤシンゲは指摘する。 昆明ではこの秋、生物の多様性に関する条約(CBS)の締約国会議が開催される予定。そこでは人間と野生動物の対立などのテーマについて議論が行われることになっている。「今回の事件は、野生動物と人間の両方の利益のために、根本原因と取り組む重要性を示すリアルタイムの実例だ」と、ジャヤシンゲは述べた。 中国の野生のゾウは最高レベルの保護を受けており、自然の生息地が縮小してもその数は着実に増加している。そして農民をはじめ人間はゾウに遭遇した場合、最大限の自制を求められ、ゾウを怖がらせて追い払うために爆竹を使用することは禁じられている。 これまでのところ、人口密集地にゾウを近づけない手段として、トラックや建設機械を投入して道路を封鎖し、エサを使って群れを誘導するなど、穏やかな方法がとられている。 だが昆明は人口700万人の大都市だ。最近、オスのゾウが1頭、みずから群れを離れ、近隣の人々を一時、不安に陥れた。 ===== 【動画】家族で結束し500キロも北上してきたアジアゾウの群れ