<30〜40代男性の高収入層では、子ども時代によく本を読んだと回答する人の比率が飛び抜けて高い> 「成功している人は、どういう子ども期を過ごしたか?」。雑誌でこういう特集をよく見かける。子育て中の親は非常に関心があるだろうし、「こういう教育をしたら、こういう人間になる」とは、教育学の観点からしても興味深いテーマだ。 この手の主題に接近する場合、長期にわたる追跡調査をするのが望ましいが、費用や手間の点で現実的でない。そこで、大人の対象者に子どもの頃を振り返ってもらう回顧法がよく用いられる。やや古いが、2012年2月に国立青少年教育振興機構が実施した『読書活動が及ぼす効果に関する調査』では、成人5000人ほどに子ども期を振り返ってもらい、現在の地位や生活状況との関連を探っている。 この調査の個票データを使って、冒頭の問いにアプローチできる。30~40代の男性を年収によって3つのグループに分け(300万未満、300~749万、750万以上)、子ども期がどうだったかを比較してみる。この調査は、子ども期の読書活動が成人後の人生に及ぼす影響を明らかにすることを狙っている。<表1>は、小学校低学年時に7項目の読書活動を「何度もした」と答えた人の割合だ。 赤字は3つの群で最も高い数値だが、項目によって異なる。昔話、マンガは低収入層で最も高く、それ以外は高収入層の経験頻度が最も高い。 4番目の「本を読んだこと(マンガ以外)」は、高収入層の数値が飛び抜けて高い。読書が高い教育達成につながり高給の仕事に就けたのか、能力のある人が好んで本をたくさん読んだのか、因果経路は定かでないが、読書は成人後の成功可能性とつながっているかもしれない。勉強ができるようになるとかいう、せせこましいことではなく、物事の本質が分かるようになる。法律でも、「読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものである」と言われている(子どもの読書活動推進に関する法律第2条)。 ===== 次に、自然体験とお手伝い体験を比べてみる。先ほどと同じく、小学校低学年の頃に「何度もある」と答えた者の割合だ。 どの項目も高収入層の数値が最も高くなっている。「低収入層<中間<高収入層」というように、現在年収と直線的な相関だ。赤字は高収入層の数値が低収入層の倍以上の項目で、一番下の掃除の手伝い経験は、低収入層が12.9%、中間が17.4%、高収入層が26.4%と差が大きい。「体験が人を育てる」とはよく言ったものだ。稼いでいる人の子ども期は勉強三昧だったかと思いきや、データでみるとそうではない。 稼ぐ人の子ども期をデータで垣間見たが、勉強一辺倒ではなく、いろいろなことをしていたことが分かる。「手伝いなどしなくていいから勉強せよ」というのは誤りだろう。他者への共感のない勉強(ガリ勉)は、エゴの増幅にしかならない。そういう子は、高い確率で「高学歴ニート」になる。子どもの生活には「均衡」を持たせることが大切だ。 <資料:国立青少年教育振興機構『読書活動が及ぼす効果に関する調査』(2013年2月)> =====