<中国の極端な被害妄想の例として香港紙が報じた。この調子では日中文化交流もできなくなる> 中国におけるナショナリズムが極端な次元に至ったとして6月8日付のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(以下ポスト紙)は、国際交流プログラムで日本を訪ねた中国人の知識人たち数百人が、最近その存在に気づいた反日の徒によって中国のソーシャルメディア上で攻撃の標的にされ、裏切り者の呼ばれていることを報じた。 日本の外務省所管の国際交流基金が費用を負担する訪日旅行は、日本の芸術や文化、日本や日本語を学びたい知識人たちに人気がある。同基金のウェブサイトには、この基金の目的は「日本とほかの国/地域の人々の相互理解を深める」ことにあると書かれている。運営費は、政府の補助金や民間の寄付、投資収益で賄われているという。 だが中国のネット上では今、このプログラムに参加して中国から日本に招かれたと記録が残る200人近い旅行者や研究者が、「裏切り者」として槍玉に挙がっているというのだ。 中国版ツイッターの「ウェイボー(微博)」では、中国人作家の蒋方舟(ジアン・ファンジョウ)が日本へ渡り、日本での経験を綴った本を出版したことが、日本のプロパガンダであるとして批判された。 あるユーザーは、「(蒋方舟は)日本政府から金をもらい、日本をほめそやそうとした裏切り者」と書いている。 中国の孔子学院はどうなる 2017年に出版された蒋方舟の著書『東京一年』(中信出版社)は、日本での経験を綴った回想録だ。「この本は、(日本で)ひとり暮らしをしていたときの経験を記録したもので、ほとんどは、心の動き、旅の体験、文芸批評だ」という蒋方舟の言葉を、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は引用している。 蒋方舟は、前述のウェイボー・ユーザーへの反応として、この旅は「ごく普通の文化交流」だったと述べ、日本の外務省から金を受けとったことを全面的に否定した。 ポスト紙によれば、中国の一部のアナリストは、中国におけるナショナリズムの高まりによって中国の国際交流がダメージを受けている面もあると指摘している。 中国海洋大学の国際関係学教授、中英はポスト紙に対し、中国も独自の国際交流プログラムを運営していることを考えれば、交流プログラムに対する攻撃は、日本との関係だけでなく、中国の外交関係も損なうことになると指摘している。 「これを日本の陰謀と言うことはできない。中国は日本で『孔子学院』を運営している」と、中英は言う。孔子学院とは、中国語や中国文化の教育と宣伝を目的として中国政府が国外に設立している教育機関のこと。「(立場を逆にしたら)なんと言われるだろうか? また、中国国民が日本へ行き、日本で中国のよいところを伝えることは、国として奨励されている」 ===== 中国国営メディアの環球時報は、中国外交部直轄の大学である外交学院(China Foreign Affairs University)の李海東教授の発言として、日本の国際交流基金プログラムは米国務省が始めたものであり、おそらくは中国に潜入して革命を扇動することを目的としていたと伝えている。 報道によれば、中国の米大使館が5月に発表した新たな資金援助プログラムは、中国国営メディアによって、「裏切り者を募集するための活動」と表現されているという。 「裏切り者」として反発を浴びているのは蒋方舟だけではない。新型コロナウイルス感染拡大でロックダウン中の武漢での生活を綴ったオンラインブログを書籍化として2020年9月に出版した(『武漢日記』:河出書房新社)作家の方方(ファンファン)は、「中国政府の危機対応に対する欧米の批判を勢いづけた」との非難にさらされた。 中国政府子飼いの暴徒 ウォールストリート・ジャーナル紙の報道によれば、中国でナショナリズムが著しく台頭している一因は、同紙が過去数十年で中国最強の指導者と呼ぶ習近平国家主席にあると見られる。 習近平が公約として掲げた、中華民族の偉大なる復興という「中国の夢」の実現は、オンライン上の暴徒を生み出している。中国指導部を少しでも批判する者が表れると寄ってたかって吊し上げる輩だ。 方方はウォールストリート・ジャーナル紙に対して、「暴徒たち、とりわけ政府が支援している暴徒のグループには、ひとりで立ち向かおうとしても無駄だ」と話している。 本誌は、日本の国際交流基金にコメントを求めたが、本記事の公開までに返答は得られなかった。 (翻訳:ガリレオ)