<スーパースプレッダーイベントとも呼ばれた4月の宗教行事で、偽のコロナ検査記録が10万件計上されていたことがこのほど発覚した> ガンジス川にヒンズー教の巡礼者が集結するクンブメーラは、世界最大規模の宗教行事だ。ガンジス川流域の複数の候補地でそれぞれ12年ごとに開催されるこの大祭には、数千万人ともいわれる信徒たちが押し寄せる。ガンジス川に沐浴して罪を清めるほか、一部は過密なテント村で寝泊まりを続ける。 パンデミック最中の今年も、例年より規模は控えめになったとはいえ、本年の会場となった北部ウッタラカンド州ハリドワールには700万人を超える信徒たちが集結した。4月1日からの期間中、この聖なる祭典で身を清めれば、1度の沐浴で1000回分に匹敵する効果を得られるとの教えがある。 多くの人々は、信仰心こそがコロナから身を護るのだと信じた。1ヶ月間にわたる祭典が幕を開けると、マスクなしで河岸に密集して沐浴に勤しむ姿が日常風景となった。当初から「スーパースプレッダーイベント(大規模感染を引き起こすイベント)になるのでは」との懸念が示されていたものの、2月に感染者が減少傾向にあった慢心もあり、人々は楽観的であった。政府としてもヒンズー教指導者らの反発を懸念し、特段の規制を敷くことはなかった。 結果としてクンブメーラは、前後して行われた大規模な選挙運動と相まって、インド感染第2波の被害を明らかに拡大した。1日あたりの新規感染者数は最盛期で40万人を超え、世界でも例のない規模に達する。感染爆発による酸素不足と葬儀場不足により、世界でも有数の混乱を引き起こしたのは既報のとおりだ。 Hundreds test positive to coronavirus at 'superspreader' Kumbh Mela festival in India | ABC News 人々の信仰心が皮肉にも惨事を招いたこの沐浴祭に関してこのほど、新たなスキャンダルが発覚した。 見かねた最高裁が予防措置に動いたが...... 大祭が迫るにつれて感染対策に動いたのは、政府ではなく司法機関であった。インドの司法府は、政治的要素が強い問題にも能動的に切り込んでゆく姿勢で知られる。 クンブメーラを控えてインド最高裁は、今年の開催地となるウッタラカンド州に対し、PCR検査および抗原検査を1日あたり合計5万件以上実施するよう命じた。人々が大挙して押し寄せることは阻止できずとも、せめて感染者を早期に隔離して拡散を防ごうというねらいだ。クンブメーラ期間中の累計はこの目標に届かなかったものの、記録上は40万件の検査が実施されたことになっている。 しかし、最高裁が意図したこの防護策は、虚偽の検査報告によって実質的に破綻することになる。発覚の契機になったのは、クンブメーラの祭典開始からほどなくして人々に届きはじめた奇妙なメッセージだ。コロナの検査を受けた覚えがない人々の携帯に、検査結果を告げる不審なSMS(ショートメッセージ)が届きはじめた。 はじめは何らかの迷惑メールの類いだとして無視する人々が多かったが、ある被害者が当局に被害を報告したことで問題が表面化。6月11日になると、現地のタイムズ・オブ・インディア紙などが大きく取り上げる展開となった。 ===== ランダムな携帯番号で検査をねつ造 こうした突然の検査通知は、検査機関による検査数水増しにより発生したと考えられている。検査を実施したのは州政府に加え、州政府と契約を結んだ24の民間検査機関だ。検査機関がインド医療研究協議会(ICMR)のポータルサイトに実績データを登録し、州政府が検査数を把握する運用となっていた。 ICMRのサイトに個人情報と検査結果が登録されると、システムは検査を受けた本人に対して半自動的にSMS通知を送信する。本人がSMSに記載されたURLを開くと、検査結果を確認できる手はずだ。 ところが、検査数を稼ごうとした検査機関が架空のデータとランダムな携帯番号をシステムに登録したことで、無関係の人々に検査完了通知が送信される事態となった。医療当局は疑念の渦中にある検査記録一覧を現地紙に対して開示したが、そのなかにはほかにも不審な事例が数多く確認されている。検査記録に苗字が入力されていないケースや、同じ苗字があまりにも多く繰り返して現れるケースなどがこれに当たる。 本件はインド国外でも問題として報じられるようになった。英BBCは、虚偽記録の件数は10万件以上に上り、架空の氏名や携帯番号に加えて存在しない住所が使われていたと述べている。英インディペンデント紙も「報道によるとこの大規模な祭典中、10万件以上の偽のコロナ検査が実施された」と述べ、大規模な不正疑惑を伝えている。事態を重く見たウッタラカンド州政府は、警察に対し本件の捜査を命じ、警察は2つの民間検査機関に対して調査を進めている。 さらなる不正が明るみに タイムズ・オブ・インディア紙は6月20日、本件の続報を発表した。これまでに不正検査が指摘されている2つの検査機関に加え、さらに多くが不正に関与していた可能性に言及するものだ。新たに疑惑の対象となった民間検査機関の一つは、1つの携帯番号を複数の検査記録に流用するという大胆な手口に出ていた。 インド南部のチェンナイに住むランジット・クマール氏は大祭期間中の4月16日、ニューデリーの南西約30キロに位置するグルグラムの街の検査機関から、5通のSMSを受信した。内容は検査結果の陰性を報せるものだが、同一の携帯番号に届いたにもかかわらず、奇妙なことにそれぞれ異なった名前が宛先に記されていたという。クマール氏は検査を受けていないことから、問題のラボが検査件数を稼ぐため、氏の番号を無断利用して実績をねつ造していたものと見られる。 ニューデリー在住のジャーナリストの元にも、検査結果を告げる偽のメッセージが届いている。ジャーナリストはウッタラカンド州知事に苦情を申し立てたが、知事は技術的なエラーが原因だろうと話しており、当初は不正の存在を認めない構えだったという。 クンブメーラに関してはこれまでにも参加者のうち2600名以上から陽性反応が得られ、感染爆発を招いたとして厳しい批判の対象になっていた。今回の不始末はこれに続き、感染者把握のための検査網が正しく機能していなかったことを示すものとなった。 ===== Kumbh Covid Scam | Govt Probe Reveals How At Least 1 Lakh Covid Tests Were Faked Hundreds test positive to coronavirus at 'superspreader' Kumbh Mela festival in India | ABC News