<新型コロナウイルスが武漢研究所と無関係であったとしても、政府の失敗を認めるような調査への協力はあり得ない> 新型コロナウイルスの起源調査への協力が中国にとって最も利益になる──バイデン米政権はそう繰り返してきた。そのとおりだろう。純粋な科学的精神の下で、各国が手を携える理想的な世界なら。 だが新型コロナが武漢ウイルス研究所と無関係でも、現場レベルから最高指導部まで、中国の当局者には隠したいことが山ほどある。 中国は研究所からの流出説だけでなく、中国が新型コロナの発生源であること自体を否定している。 2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行後に講じた各種の予防措置を考えれば、新たなウイルスが中国で出現する事態はあってはならなかった。それに、どんな国も世界的大惨事の責任は負いたくない。体面を気にした中国当局は早くも昨年3月には、アメリカが新型コロナの起源だという説を喧伝していた。 中国と欧米の科学者による新たな研究では、当局の主張と裏腹に、武漢で野生動物が大量販売されていたことが判明した。武漢の地方政府が初期の流行の抑え込みに失敗し、適切な対応が遅れた一因がおそらく国家の指導部にあることも、中国が認めたくない問題だ。 中国政府も発生源を把握していない? 中国政府は、新型コロナの発生源を把握していない可能性が高い。研究所で事故があったのなら、関係者は外国だけでなく、国内当局の目からも隠そうとしたはずだ。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)以前、中国政府はウイグル人弾圧や言論統制に注力しており、農村部の保健や野生生物に関する規制は野放し状態だった。 米中関係は過去数十年間で最悪で、 習近平 国家主席の下では政治的弾圧が日常だ。つまり、トップの絶対的な承認がない限り、特にアメリカが加わる国際調査にゴーサインを出す当局者はいない。 新型コロナをめぐる政治的動機に満ちた言説のせいで、そうした承認の可能性はゼロだ。同時に、中国の世論は調査協力を支持していない。研究所からの流出説に基づく非難が、中国の一般市民の目にどう映るか考えてみるといい。 パンデミックにちぐはぐな対応をし、国際社会での説明責任を拒絶する中国は今、うまく対応した国に非難の矛先を向けている From Foreign Policy Magazine