<白髪が増える他の要因として心理的ストレスも長年指摘されてきたが、米コロンビア大学の研究チームが初めて定量的に示した> 加齢に伴って、毛を産生する「毛包」内の色素細胞が死滅し、これによって髪は自然と色素を失う。白髪が増える他の要因として心理的ストレスも長年指摘されてきたが、これを裏付ける科学的な証拠は示されていなかった。 「心理的ストレスと白髪には相関がある」初めて定量的に示した 米コロンビア大学の研究チームは、2021年6月22日、オープンアクセスジャーナル「イーライフ」で、「心理的ストレスと白髪には相関があり、ストレスが緩和されると髪の色が回復することがある」ことを初めて定量的に示した。 研究チームでは、まず、9〜65歳までの男女それぞれ7名(計14名)を対象に、毛髪を採取させるとともに、毎週、ストレス度を評価して記録してもらった。 次に、研究チームは、被験者の毛髪の薄片を高解像度の画像でとらえ、各薄片の色素喪失の度合いを分析した。それぞれの薄片の幅は、約1時間で伸びる長さに相当する0.05ミリだ。その結果、白髪の一部が元の色に自然と回復していることが定量的に示された。 また、被験者の「ストレス記録」と毛髪とを時系列で重ね合わせたところ、ストレスと白髪には顕著な関連がみられ、ストレスが晴れると白髪が元の色に戻るケースもあった。研究論文の責任著者でコロンビア大学のマーティン・ピカード准教授は「バケーションに出かけると毛髪5本が元の色に戻った人もいた」と補足している。 ストレスがミトコンドリアの変化を誘発し、白髪になる さらに研究チームは、毛髪内の数千ものタンパク質のレベルを測定し、髪の色が変化する際、300種類のタンパク質に変化が起こっていることを示した。数理モデルによれば、ストレスがミトコンドリアの変化を誘発し、これによって白髪になると考えられる。 ピカード准教授は、このメカニズムについて「ミトコンドリアは細胞の動力源として知られているが、心理的ストレスなど、様々な信号に反応する細胞内のアンテナのような役割も果たしている」と解説する。 また、数理モデルによると、白髪になるまでには閾値があるとみられる。ピカード准教授は「生物学的年齢やその他の要因により閾値に近づく中年では、ストレスによって閾値を超え、白髪になる」とし、「すでに白髪になった70歳の高齢者がストレスを軽減させても髪の色が元に戻るわけではないし、10歳の子供がストレスによって閾値を超えて白髪になることも考えにくい」との見解を示している。 一連の研究結果は、米ハーバード大学の研究チームが2020年1月に発表した「マウスに急性ストレスを与えると、毛包のメラトサイト幹細胞(色素を産生するメラニン細胞の前駆体)が不可逆的に消失し、白髪になる」との研究結果とは一致しない。この点について、共同著者で米マイアミ大学のラルフ・パウス教授は「ヒトの白髪は元の色に戻ることがある。マウスの毛包の仕組みはヒトとは異なる」と述べている。