<宇宙の商業利用に大きな一歩を記す企業家の初飛行。すぐ後にはアマゾンのベゾスが続く予定だ> 欲しいものは何でも持っているような大富豪の気を引くのにぴったりの事業は何かと問われれば、最近の事例を見る限り、宇宙旅行というのが答えのようだ。胸の奥に宇宙に出る夢を抱いている相手ならば、の話だが。 イギリスの実業家リチャード・ブランソンは11日、自らが経営する宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船で「宇宙飛行」を体験した。今月の20日には、アマゾンの創業者で前CEOのジェフ・ベゾスが、やはり自ら創業した宇宙開発会社ブルーオリジンのロケットで宇宙へと飛び立つ予定だ。 ブランソンが乗ったのは、飛行機に似た形の宇宙船「スペースシップ2」の2号機「VSSユニティ」。では今回のミッションがどのように進行したのか説明しよう。 ■宇宙船はどう飛ぶのか 今回のミッションの所要時間は2時間半。ブランソンは3人の関係者と2人の操縦士とともにユニティに乗り込み、上空で無重力を体験、地球の大気圏と宇宙空間の境界に到達してから地球に帰還した。 ユニティは母船である双胴型の航空機「VMSイブ」に吊り下げられる形で、ニューメキシコ州のスペースポート・アメリカを離陸した。 ■ぐんぐん上昇、そして...... 高度2300メートルに達したところでユニティはイブから切り離され、ロケットエンジンに点火。音速のおよそ3.5倍の速度でほぼ垂直に上昇した。 エンジンは約1分後に停止。この時点でユニティの高度は、宇宙空間との境目とも言われる8万メートル(エベレストの山頂の高さの10倍近く)を超えている。窓の外には美しい地球の姿が望める。 ■念願の無重力状態 それから4~5分間にわたって、ブランソンらは無重力状態を体験。その後ユニティは地球の重力に引かれて向きを変える。 ヴァージン・ギャラクティックで宇宙飛行士訓練主任を務めるベス・モーゼスは、以前の試験飛行にも参加した経験を持つ。その際に目にした窓の外の光景は「ただただ素晴らしかった」と述べている。 「写真では(その素晴らしさを)表現できない」と、モーゼスはBBCニュースに語っている。「とにかくすごく輝いていて美しかった。大海原が見え、陸地の緑や、白い雪に覆われた山々も見えた」 「乗っている人は無重力で静止状態、そして宇宙船も動きを止めるから、本当に時間が止まったような感じで没入感がすごい。心を打たれた」 <ユニティ22、無重力へのフライト> ===== ■地球への帰還 それから宇宙船は下降を始める。すると両翼の後方にある「テールブーム」と呼ばれる部分が立ちあがり、「羽根モード」へと変化。これは下降速度を緩め機体を安定させるのが目的だ。 これにより大気圏への再突入がゆっくりになるとは言うものの、搭乗者は通常の6倍の重力を体験することになる。 さて大気圏に再突入すると、テールブームは元の位置に戻り、ユニティは滑空して着陸する。 ■リスクは否定できず もちろん、宇宙旅行にリスクがないわけではない。スペースシップ2の1号機である「VSSエンタープライズ」は2014年の試験飛行で墜落事故を起こした。機長はパラシュートで機外に脱出したが、副操縦士が死亡した。 原因はテールブームを動かすタイミングが早すぎたこととされ、事故後は再発防止のために操縦系統の設計に手直しが行われた。 2019年にも、大惨事につながりかねない「事故」が起きている。新しい金属製の熱保護フィルムがきちんと貼られなかったために過大な圧力が生まれ、宇宙船の部品の一部が破壊されてしまったのだ。 ■ベゾスの宇宙飛行はどんなもの? さて、先を越された形のベゾスのミッションでは、ブルーオリジンの「ニューシェパード」という地上から打ち上げられる従来型のロケットが使われる。ニューシェパードは、アメリカ初の有人宇宙飛行に成功した宇宙飛行士、アラン・シェパードにちなんで名付けられた。 ニューシェパードはヴァージン・ギャラクティックのユニティを上回る高度10万メートルに達する予定。これは、多くの専門家が地球の大気圏と宇宙空間の境目と考える「カーマンライン」よりも上だ。 ===== <ユニティ22、無重力へのフライト>