<新型コロナウイルス感染症を併発したクロストリジウム-ディフィシル感染症患者が糞便移植(腸内細菌叢移植)後、新型コロナから早期に回復したという症例が報告された> 健常者の糞便を患者の腸に移植する「糞便移植(腸内細菌叢移植:FMT)」は、大腸の炎症により下痢の症状を引き起こす「クロストリジウム-ディフィシル感染症(CDI)」などの治療に用いられることがある。 ポーランド・ワルシャワ医科大学の研究チームは、2021年7月6日、胃腸病学および肝臓学に関する査読医学雑誌「ガット」で、「新型コロナウイルス感染症を併発したクロストリジウム-ディフィシル感染症患者が腸内細菌叢移植後、新型コロナウイルス感染症から軽症で早期に回復した」という2症例を発表した。 糞便移植の2日後、熱が下がった 肺炎で入院した80歳の男性患者は、メロペネムの投与後、肺炎の症状が改善したものの、クロストリジウム-ディフィシル感染症を発症した。クロストリジウム-ディフィシル感染症は、抗菌薬治療などによる腸内細菌叢の撹乱に伴って発症することが多い。 そこで、その治療のために腸内細菌叢移植を行った当日、発熱し、新型コロナウイルス感染症のPCR検査で陽性と診断された。患者は新型コロナウイルスにも感染していたとみられる。レムデシベルと回復期血漿による治療を行ったところ、腸内細菌叢移植の2日後には熱が下がり、肺炎が悪化することもなかった。 免疫抑制による潰瘍性大腸炎の19歳男性は、クロストリジウム-ディフィシル感染症の再発で入院した。バンコマイシンによる治療で症状が改善した後、再発予防のため、腸内細菌叢移植を行った。腸内細菌叢移植から15時間後、体温が39度に上昇し、新型コロナウイルス感染症のPCR検査で陽性と診断された。その後は、ほぼ平熱に戻り、自然治癒した。 研究論文では、これら2症例をふまえて「新型コロナウイルス感染症を併発した患者のクロストリジウム-ディフィシル感染症の治療において、腸内細菌叢移植は安全かつ有効だとみられる」と結論している。 新型コロナの新たな治療法として腸内細菌叢移植を提案 また、いずれの患者も新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高いにもかかわらず、軽症のまま経過して治癒し、糞便での新型コロナウイルスの検出期間も平均値である27.9日より短かったことから、腸内細菌叢移植が新型コロナウイルス感染症の臨床経過に影響を及ぼしている可能性についても言及している。 腸内細菌叢移植と新型コロナウイルス感染症との関連については、すでに指摘されている。イランのシャヒドベベシティ医科大学の研究チームでは、2020年12月31日に発表した研究論文で、新型コロナウイルス感染症の新たな治療法として腸内細菌叢移植を提案している。 また、中国・福建医科大学、江蘇大学付属病院らの研究チームは、2021年2月8日に発表した研究論文で「ヒトの腸内細菌叢は免疫系と密接にかかわっており、新型コロナウイルス感染症が胃腸障害を引き起こすおそれがある」と指摘し、「腸内細菌叢移植は、腸内細菌叢を回復させ、胃腸障害を緩和させる可能性があり、新型コロナウイルス感染症の治療法やリハビリテーション介入として活用できるかもしれない」と述べている。 ===== The power of poop: What fecal transplants can and cannot treat