<フランス政府の厳しいコロナ規制に振り回される飲食店。今度は「衛生パス」の提示が義務付けられる可能性> 飲食店を利用する場合、客はワクチン接種証明、陰性証明、治癒証明のいずれかを提示する義務があり、違反した飲食店は5万3250ドル相当の罰金が科される可能性がある──。フランス政府は、こうした内容の法律の可決を目指しているという。AP通信が報じた。 実際にこの法律が施行されれば、パンデミック中の経済的な損失で苦境に立たされてきた小規模ビジネスは、決定的な打撃を被ることになるだろう。 カフェ「ママ・キン」を経営するゴーティエ・マックスは、もはやレストランやバーはくつろぎの場ではなく、制約だらけの窮屈な場となってしまったと話す。「私たちは事実上、警官になってしまった」 レストラン「ル・ブラン・ピュブリック」のマネージャーであるルイ・ルマユーは、「私たちはこれまで、客が店内で最高のひと時を過ごせるよう心を砕くことを仕事にしてきた。それなのにいまでは、客に注意ばかりしている。そんな訓練は受けていないのに」と語った。 ル・ブラン・ピュブリックは、パリ北東部を流れる運河に面した街角に位置している。一帯は若者に人気で、立ち並ぶカフェや運河沿いに多くの人が集まり、お酒を飲んだり音楽を聴いたりする。ストリートアートが目を引く陽気な地区だ。 近くには、パリの夏の風物詩である人工ビーチ「パリ・プラージュ」があり、その横には期間限定のワクチン接種予約センターがある。 経営はますます苦しくなる 繁華街にあるほかのレストランと同様に、ル・ブラン・ピュブリックも、絶え間なく変更されるコロナ関連規制を順守するのに苦労している。 フランスでは2021年5月、約7カ月ぶりにレストランが再開されたが、収容人数の制限を守らなかったことを理由に、閉鎖を余儀なくされた飲食店は数百店に上る。ル・ブラン・ピュブリックもそのひとつで、鮮やかな色の金属製シャッターが下ろされ、食事をする客の姿はない。 カフェやバーの経営者は、この法律によって「衛生パス」の提示が義務づけられるようになったら、ますます商売が難しくなると不安を抱く。この状況に憤るレストラン経営者らと地区の警察署長による会合で、コロナ対策をめぐる課題も話し合われた。 労働組合は、衛生パスの提示義務付けに反発している。また、7月14日にはパリやフランス各地で、コロナ対策の強化に抗議するデモが行われた。観光客たちも、8月の義務化を前に、どうすれば衛生パスを入手できるのかと戸惑いを隠せない。フランス政府はまもなく回答を出すとしている。 ===== エマニュエル・マクロン仏大統領は7月12日にテレビ演説を行い、衛生パスを導入するしか手段はないと訴えた。全土で感染者数が再び増加しているなかで、医療機関が再び逼迫し、再度のロックダウンという、より強硬な措置を回避するためには唯一の方法だというのだ。 コロナを巡るルールが目まぐるしく変わるため、飲食店経営者たちは、その内容を把握するのに四苦八苦している。「ル・ブラン・ピュブリック」のルマユーの話では、街にいる警官に尋ねても、最新ルールを知らないことがあるという。 ルマユーは新しいルールに従うつもりだが、新たなコストが生じたり、利益が削られたりする可能性を危惧している。彼はAP通信に対し、「ルール対応専門の従業員がフルタイムで1人必要になりそうだ。警備員も1人配置して、入店拒否に怒る客に対応させなければならない」と語った。「私たちは板挟みになってしまう」 レストラン経営者の多くは、コロナ対策の必要性に理解を示しており、ロックダウンのような、より強硬な措置は避けたいと考えている。 パリでも最古のレストランのひとつであり、エッフェル塔近くにある「ラ・フォンテーヌ・ド・マルス」のオーナー、クリスティーヌ・ブードンは、「私は積極的なワクチン推進派だ。衛生パスはいい考えだし、完全に合理的な方法だと思う。フランスには(コロナの)ほかにも、義務化されているワクチンがある」と話す。 「とはいえ、人々にルールを守らせる役割を私たちが果たすとなると、重荷かもしれない。来店した客の衛生パスを確認するなんて、まるで警察官のようだ。この仕事ができるのは、うちでもいちばん年長のスタッフだけだろう」 (翻訳:ガリレオ) ===== <「衛生パス」やワクチン義務化に反対するデモ> FRANCE : Big demonstration in Montpellier against the health pass and mandatory vaccination #Covid_19 pic.twitter.com/k3tS6NhWFS— La French ConAction.. (@LFConaction) July 14, 2021